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第4章 マルチタスク

第52話 現状整理

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 フローレンス様からジェーンを王宮に連れて来て良いと言われたので、一先ずニーナに自主訓練を指示して、一旦城を出る事にした。
 王宮の外へと続く廊下を歩きながら、現状を整理してみる。

 先ず、本来の最優先事項は魔王や魔族に対抗するための聖剣――の材料である、聖銀の採取だ。
 これは、北西にあるフィオンの洞窟という場所で採れる事が分かっていて、エルフであるルミを連れて行く事が必須条件となる。
 だが困った事に、この洞窟は土系統の魔法しか使えないらしい。

 次に、俺個人としての最優先事項は、魔法学校を卒業する事だ。
 フローレンス様直々に王宮への内定を貰っているが、それも魔法学校を卒業する事が大前提となっている。
 残り半年程、俺は未だ魔法学校の授業に出て、定期試験も受けなければならない。

 後は……その内定しているフローレンス様の管轄、第三王女直属特別隊の隊長として、唯一の隊員ニーナの剣の腕前を向上させる事か。
 必須という訳ではないが、残念ながら今のままではニーナは使えない。仕官学校の生徒より劣る騎士とか、どうしろと。
 しかし普通の剣術であれば俺が教えても構わないのだが、ニーナの場合はその大き過ぎる胸が邪魔になって腕が鈍っている。
 これについては俺から何もアドバイスする事が出来ず、同じく大きな胸なのに、剣の腕が優れているジェーンに頼まなければならない。

『ヘンリーさん、大忙しですね』
(あぁ。魔法学校の再開は当然と言えば当然なんだけど、完全に失念していたしな)

 現在召喚している英霊は、この俺の中に居る賢者のアオイを含めて四人だ。
 女騎士であり、聖女とも呼ばれる巨乳のジェーン。
 狩人で弓矢の名手である猫耳少女アタランテ。
 退魔を得意とする聖女マーガレット。……まぁ、マーガレットについては、召喚したばかりで、何が出来るのかまだ良く分かっていないのだが。

 ちなみに召喚した英霊は、錬金術士でありクラスメイトでもあるエリーに協力してもらう事で、実体を得ることが出来る。
 さて、俺が魔法学校の授業に出なければならない訳だが、これから誰に何をしてもらうべきだろうか。

『とりあえず、フィオンの洞窟を攻略しないといけませんよね?』
(あぁ。だが、魔法があまり使えない場所だから、ジェーンかアタランテのどちらかに対応してもらおうと思うんだ)
『そのお二人は魔法ではなく、剣と弓矢が武器ですからね』
(しかし、ジェーンには王宮でニーナの指導に当たって欲しいんだよな。あのままではニーナが使えないし、逆にニーナを使えるようにしておけば、今後第三王女直属特別隊として出来る事が増えそうだしな)
『おぉ、何だか隊長っぽいですね。ヘンリーさん』
(一応、隊長に任命されているからな。……けど、そうなると洞窟の方をアタランテに担当してもらう事になるんだが、アタラントとルミの仲があまり良くなさそうなんだよなー)
『良くなさそうというか、思いっきり争ってますからね』
(そうなのか? しかし、争うって言っても、何を争っているんだ?)

 あ、あれ? 急にアオイが黙り込んでしまったけど、どうしたんだ?

『いえ、ヘンリーさんの自覚の無さに呆れていただけです。気にしないでください』
(アオイは何を言っているんだ?)
『いやいや、本当に気にしなくてよいですから。それよりフィオンの洞窟はどうされるんですか?』
(とりあえず、ニーナに剣を教えるのはジェーンしか出来ないから、一先ずはアタランテにお願いしよう。ルミとは喧嘩しないように、改めてお願いしてみようか)
『上手く行くと良いですね。あと、マーガレットさんはどうされます?』
(そうだ、マーガレットだ。マーガレットもフィオンの洞窟攻略メンバーに含めれば、アタランテとルミだけという状況にはならないだろ)
『まぁヘンリーさんがそうされると決めたらのなら、良いんじゃないですかね』

 何故か投げやりな感じになってしまったアオイとこれからの方針を決めた所で、城の外へと出た。

「ハー君! おかえりー!」
「主様。お疲れ様です」
「貴方、お仕事お疲れ様」
「お、出てきたね。美少女が四人もお兄さんを待っていたんだよ。これはお家に帰ってから、ご褒美を貰わないとね」

 エリーとジェーン、アタランテはいつも通りの言動と共に抱きついて来て、一方でマーガレットは変な事を……って、ある意味いつも通りか。

「先輩……あの人って、確かフローレンス様の……」
「なんか、取り巻きの女の子が増えてないか? しかも、そのうちの一人は猫耳に尻尾って、白昼堂々とマニアックなコスプレなんだが」
「二人とも、何も言うな。俺たちは何も見ていないし、何も知らない。いいな? そうでなければ、俺たちの首が……」

 前回と同様に、城の門の傍に居る兵士たちが小声で色んな事を話しているけれど、一先ず無視して人気の無い場所へ向かう。
 いつもの如くワープ・ドアで俺の部屋へ移動し、四人にこれからの事を話す。
 エリーは授業が再開される事を普通に知っていて、しかも明日から授業が始まると……もっと早く教えてくれよ。
 ジェーンは若手の育成も騎士の務めだと、ニーナへ剣術を教える事を快諾してくれた。
 それから、アタランテにルミと一緒にフィオンの洞窟攻略をして欲しいと伝えると、

「ふふふ。どうやら決着を……じゃなくて、格の違いを教えてあげなきゃいけないみたいね」

 随分とやる気に満ち溢れた答えが返ってきた。

「いやー。お兄さん、これは面白い事になるね。私もフィオンの洞窟に参加して、間近で楽しま――もとい、しっかり頑張って来るよ」

 マーガレットも快諾してくれたし、いろいろと心配していたけれど、どれもただの杞憂だったらしい。

『いえ、違いますからね? ヘンリーさんは勘違いしまくってますから!』

 何故かアオイが一人で騒いでいるけれど、皆にそれぞれのやるべき事を説明し、予定通りに事が進む事になった。
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