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第3章 第三王女直属特別隊
第45話 勇者召喚?
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「凄い。貴方は、こんな事まで出来るのね」
テレポートの魔法で面倒臭――こほん。ロリっ子エルフから逃げるようにしてエリーの家の前へ移動すると、抱きかかえられたままのアタランテが俺から降りる事さえ忘れて、キョロキョロと周囲を見渡す。
「そっか。アタランテと居る時は使っていなかったね。一度行った事のある場所なら、こうして魔法で移動出来るんだよ」
「なるほど。それは良かったよ。またあの馬に乗って帰らないといけないのかと思っていたから」
そんな事を話していると、突然エリーの家の扉が開く。
「あ、ハー君だ! アタランテちゃんも! ジェーンちゃんの言った通り、本当にハー君が居たよ!」
「はい。主様の気配を感じましたので」
「おかえり! ハー君っ! アタランテちゃん!」
エリーがジェーンを従えて駆け寄って来て、突然抱きついてきた。
うん。エリーのこの感触も久しぶりだ。
「ただいま。こっちは特に問題は無かったか?」
「うん。ジェーンちゃんと一緒に街をパトロールしていたんだけど、これと言って特に何も無かったかな」
「そうか。それなら良かった……って、どうしたんだ? その微妙な表情は?」
一応ジェーンを残していったものの、まだ魔族が表立って何かをするとは思っていない――予想通りではあるものの、エリーの表情が少しだけ曇っている。
「あ、あのね……エリーも寂しかったから、アタランテちゃんみたいに抱っこして欲しいなー、なんて」
「あ。まだ抱っこしたままだった。けどな、エリー。これは魔法を使うためであってだな……」
「と、とりあえず私は降りておくね」
いくら約一週間振りに会うとはいえ、用も無いのにお姫様抱っこするのは恥ずかしいので、エリーの頭を撫でる事で妥協してもらって、本題へ。
「さて、これからフローレンス様に魔族の動向を報告しに行くんだが、結論から言うと魔族の動向は分からなかった。しかし、伝説に出てくる魔王……こいつが実在して、今も生きているという事が分かったんだ」
「ふーん。そうなんだー」
エリーは魔王に興味が無いのか、反応が薄い。だが俺も含めて、魔王を神話でしか知らないので、ある意味で当然の反応だとも言える。
一方でジェーンはというと、魔王という言葉をどう思ったのかは分からないが、いつも通り畏まっていた。これは納得しているのか、それとも興味が無いのか、どっちだろう。
「で、その魔王の情報を得る過程で、俺はとても凄い事を思いついたんだ。そのために……エリーまた俺に協力して欲しい」
「エリーが? もちろん! エリーに出来る事なら何でもするよっ!」
「そう言ってくれると助かる。じゃあ皆、ついて来てくれ」
そう言ってワープ・ドアの魔法を使うと、俺はまたもや学校の魔法訓練室へと移動した。
『ヘンリーさん。どうして、またここに?』
(ふっふっふ。さっきエルフの長老サロモンさんから、勇者と魔王の話を聞いただろ? 俺はそこで、凄い情報を得たんだ)
『凄い情報?』
(あぁ、勇者の名前だ。勇者ツバサ=キムラ――変わった名前だから、同姓同名なんて中々居ないはずだし、召喚魔法を使う時に名指しで指名すれば良いんだよ)
『なるほど。というか、私に聞いてくれたら勇者の名前くらいすぐに教えたのに』
……あ、本当だ。アオイは勇者と一緒に魔王討伐の戦いをしていたのだから、知っているに決まっているか。
だけど、最初はアオイが魔王と戦った事を信じて居なかったから、その発想には至らなかったんだけどさ。
(そう言えば、勇者の名前もアオイの名前も珍しいけど、どこか外国から来たのか?)
『え? ……ま、まぁそんな所ですよ。そんな事より、私は召喚魔法に詳しく無いんですけど、名指しで呼ぶ相手を指名なんて出来るんですね』
(いや、やった事はないけど、出来るんじゃないか? ……たぶん)
『随分と適当ですね。まぁやってみれば分かる事ですが』
(そうそう、そういう事。というわけで、やってみるか)
「エリー。この数日でそこそこ魔物を倒してきたから、悪いけどまたホムンクルスを作ってくれないか?」
「ハー君との子供? うん、喜んでっ!」
大量の素材の中からホムンクルスの製造に使える物を選びだして、以前と同じように精製し、
「クリエイト・ホムンクルス」
「グロウ・ホムンクルス」
エリーが作ったホムンクルスの核を、俺の魔法で成長させた。
これでホムンクルスの準備は整ったので、四度目となる魔法陣を描き、
「サモン!」
強く「勇者ツバサ=キムラよ、来てくれ!」と念じながら召喚魔法を発動させる。
すると、
「いっぇーい! 現世だ! ひっさしぶりの現世だー! おぉー、空気が美味しぃー!」
随分とはっちゃけたゴーストが現れた。
(アオイ。これが勇者ツバサ=キムラなのか? 随分と俺のイメージと違うんだが)
『いいえ。全然ツバサと違いますね』
(なるほど。名指しで念じても、俺が思っている英雄が来てくれる訳ではないのか)
「やぁやぁ、今回は呼んでくれてありがとう。久しぶりの現世を堪能させてもらうよ。ホント、ウルトラハッピーだよー」
「……チェンジで」
「えぇぇぇっ! ちょっと、どうして!? これでも私はれっきとした聖女だよ? というか、来たからには帰らないからね?」
「聖女ねぇ。俺の知っている聖女と全く違うんだけど」
「や、ホント。ホントに聖女なの。信じて、お願い! 私、こう見えて退魔とか得意なの! ……今はゴースト状態だから、退魔スキルで自分自身が滅びちゃうけどねっ!」
(アオイ。こいつ、本当に大丈夫か?)
『私には何とも。とりあえず、退魔が得意って言っているので、今の状況には良いんじゃないですか?』
(まぁ確かに、これから魔族と戦ったりするんだろうし)
「じゃあ、とりあえず名前を教えてくれ。話はそれからだ」
「私? 私はマーガレット。退魔だけじゃなくて、妊娠や出産の加護もあるから、子供が欲しくなったら声を掛けてね」
「……まぁそれはさておき、俺たちは魔王や魔族と戦わなければならないんだが、退魔が得意だっていうマーガレットの意見を聞かせてくれないか?」
「気合で頑張る?」
「よし、チェンジ……」
「えっと、アレよ! 聖剣。魔王や魔族は聖剣に弱いでしょ? 聖剣を手に入れれば良いのよ」
マーガレットが妊娠の加護を持つと言った時、何故かエリーがもっと詳しく話を聞きたそうだったのだが、それはさておき聖剣の話だ。
言っている事はまともだし、的を得ているのだが、その案は一つ決定的な問題がある。
「うん。聖剣があれば話は早いよな。でも、その聖剣がどこにあるかなんて、誰も知らないだろ?」
「え? 私知ってるよ? というより、正しく言うと聖剣の材料がどこにあるか知ってる」
「何!? どういう事だ!?」
「……ふっふっふー。教えて欲しかったら、ゴーストじゃなくて私の姿を何とかしてよー。お兄さんは召喚士なんだから、何とか出来るんでしょー?」
こ、こいつ。優位に立てたと分かった途端に、態度が戻りやがった。
だが、仕方が無い。オリバーレベルの魔族なら、聖剣が無くても勝てるだろうが、それより強い魔族や魔王には有効な武器があった方が良いだろう。
「仕方が無い。エリー、マーガレットをホムンクルスとして呼び出してくれ」
「うん、わかったー。コール・ホムンクルス! 貴方の名は『マーガレット』」
エリーの言葉に応じてホムンクルスとマーガレットの霊魂が混ざり合い、赤毛の綺麗なお姉さんが現れた。
「やったぁー! 身体だぁーっ! これで私は、何でも出来る! 何でもなれる!」
何でもなれる……って、一体何をする気なのだろうか。というか、マーガレットは聖女なんだよな?
『調べてみましたが、一応聖女ですね。しかも、そこそこ位が高いです』
マジかよ。生前は素の性格を隠していたのか? と考えていると、
「そのお姿は……あぁ、十二歳の時に私を導いてくださった聖女そのもの。まさか貴方様だったとは」
ジェーンがマーガレットに畏まる。
詳しく話を聞くと、生前のジェーンが聖女らしい振る舞いのマーガレットに導かれたのだとか。
「え? えぇ? えっと……コホン。まさかこの時代で信徒に会う事が出来るとは。私はこの奇跡を嬉しく思います」
「いや、今更手遅れだから! もう、どうやっても挽回出来ないから!」
以前の自分を知るジェーンを前に、何とかマーガレットが取り繕うとしていたが、もうどうにもならないくらいに素が出ていたのだった。
テレポートの魔法で面倒臭――こほん。ロリっ子エルフから逃げるようにしてエリーの家の前へ移動すると、抱きかかえられたままのアタランテが俺から降りる事さえ忘れて、キョロキョロと周囲を見渡す。
「そっか。アタランテと居る時は使っていなかったね。一度行った事のある場所なら、こうして魔法で移動出来るんだよ」
「なるほど。それは良かったよ。またあの馬に乗って帰らないといけないのかと思っていたから」
そんな事を話していると、突然エリーの家の扉が開く。
「あ、ハー君だ! アタランテちゃんも! ジェーンちゃんの言った通り、本当にハー君が居たよ!」
「はい。主様の気配を感じましたので」
「おかえり! ハー君っ! アタランテちゃん!」
エリーがジェーンを従えて駆け寄って来て、突然抱きついてきた。
うん。エリーのこの感触も久しぶりだ。
「ただいま。こっちは特に問題は無かったか?」
「うん。ジェーンちゃんと一緒に街をパトロールしていたんだけど、これと言って特に何も無かったかな」
「そうか。それなら良かった……って、どうしたんだ? その微妙な表情は?」
一応ジェーンを残していったものの、まだ魔族が表立って何かをするとは思っていない――予想通りではあるものの、エリーの表情が少しだけ曇っている。
「あ、あのね……エリーも寂しかったから、アタランテちゃんみたいに抱っこして欲しいなー、なんて」
「あ。まだ抱っこしたままだった。けどな、エリー。これは魔法を使うためであってだな……」
「と、とりあえず私は降りておくね」
いくら約一週間振りに会うとはいえ、用も無いのにお姫様抱っこするのは恥ずかしいので、エリーの頭を撫でる事で妥協してもらって、本題へ。
「さて、これからフローレンス様に魔族の動向を報告しに行くんだが、結論から言うと魔族の動向は分からなかった。しかし、伝説に出てくる魔王……こいつが実在して、今も生きているという事が分かったんだ」
「ふーん。そうなんだー」
エリーは魔王に興味が無いのか、反応が薄い。だが俺も含めて、魔王を神話でしか知らないので、ある意味で当然の反応だとも言える。
一方でジェーンはというと、魔王という言葉をどう思ったのかは分からないが、いつも通り畏まっていた。これは納得しているのか、それとも興味が無いのか、どっちだろう。
「で、その魔王の情報を得る過程で、俺はとても凄い事を思いついたんだ。そのために……エリーまた俺に協力して欲しい」
「エリーが? もちろん! エリーに出来る事なら何でもするよっ!」
「そう言ってくれると助かる。じゃあ皆、ついて来てくれ」
そう言ってワープ・ドアの魔法を使うと、俺はまたもや学校の魔法訓練室へと移動した。
『ヘンリーさん。どうして、またここに?』
(ふっふっふ。さっきエルフの長老サロモンさんから、勇者と魔王の話を聞いただろ? 俺はそこで、凄い情報を得たんだ)
『凄い情報?』
(あぁ、勇者の名前だ。勇者ツバサ=キムラ――変わった名前だから、同姓同名なんて中々居ないはずだし、召喚魔法を使う時に名指しで指名すれば良いんだよ)
『なるほど。というか、私に聞いてくれたら勇者の名前くらいすぐに教えたのに』
……あ、本当だ。アオイは勇者と一緒に魔王討伐の戦いをしていたのだから、知っているに決まっているか。
だけど、最初はアオイが魔王と戦った事を信じて居なかったから、その発想には至らなかったんだけどさ。
(そう言えば、勇者の名前もアオイの名前も珍しいけど、どこか外国から来たのか?)
『え? ……ま、まぁそんな所ですよ。そんな事より、私は召喚魔法に詳しく無いんですけど、名指しで呼ぶ相手を指名なんて出来るんですね』
(いや、やった事はないけど、出来るんじゃないか? ……たぶん)
『随分と適当ですね。まぁやってみれば分かる事ですが』
(そうそう、そういう事。というわけで、やってみるか)
「エリー。この数日でそこそこ魔物を倒してきたから、悪いけどまたホムンクルスを作ってくれないか?」
「ハー君との子供? うん、喜んでっ!」
大量の素材の中からホムンクルスの製造に使える物を選びだして、以前と同じように精製し、
「クリエイト・ホムンクルス」
「グロウ・ホムンクルス」
エリーが作ったホムンクルスの核を、俺の魔法で成長させた。
これでホムンクルスの準備は整ったので、四度目となる魔法陣を描き、
「サモン!」
強く「勇者ツバサ=キムラよ、来てくれ!」と念じながら召喚魔法を発動させる。
すると、
「いっぇーい! 現世だ! ひっさしぶりの現世だー! おぉー、空気が美味しぃー!」
随分とはっちゃけたゴーストが現れた。
(アオイ。これが勇者ツバサ=キムラなのか? 随分と俺のイメージと違うんだが)
『いいえ。全然ツバサと違いますね』
(なるほど。名指しで念じても、俺が思っている英雄が来てくれる訳ではないのか)
「やぁやぁ、今回は呼んでくれてありがとう。久しぶりの現世を堪能させてもらうよ。ホント、ウルトラハッピーだよー」
「……チェンジで」
「えぇぇぇっ! ちょっと、どうして!? これでも私はれっきとした聖女だよ? というか、来たからには帰らないからね?」
「聖女ねぇ。俺の知っている聖女と全く違うんだけど」
「や、ホント。ホントに聖女なの。信じて、お願い! 私、こう見えて退魔とか得意なの! ……今はゴースト状態だから、退魔スキルで自分自身が滅びちゃうけどねっ!」
(アオイ。こいつ、本当に大丈夫か?)
『私には何とも。とりあえず、退魔が得意って言っているので、今の状況には良いんじゃないですか?』
(まぁ確かに、これから魔族と戦ったりするんだろうし)
「じゃあ、とりあえず名前を教えてくれ。話はそれからだ」
「私? 私はマーガレット。退魔だけじゃなくて、妊娠や出産の加護もあるから、子供が欲しくなったら声を掛けてね」
「……まぁそれはさておき、俺たちは魔王や魔族と戦わなければならないんだが、退魔が得意だっていうマーガレットの意見を聞かせてくれないか?」
「気合で頑張る?」
「よし、チェンジ……」
「えっと、アレよ! 聖剣。魔王や魔族は聖剣に弱いでしょ? 聖剣を手に入れれば良いのよ」
マーガレットが妊娠の加護を持つと言った時、何故かエリーがもっと詳しく話を聞きたそうだったのだが、それはさておき聖剣の話だ。
言っている事はまともだし、的を得ているのだが、その案は一つ決定的な問題がある。
「うん。聖剣があれば話は早いよな。でも、その聖剣がどこにあるかなんて、誰も知らないだろ?」
「え? 私知ってるよ? というより、正しく言うと聖剣の材料がどこにあるか知ってる」
「何!? どういう事だ!?」
「……ふっふっふー。教えて欲しかったら、ゴーストじゃなくて私の姿を何とかしてよー。お兄さんは召喚士なんだから、何とか出来るんでしょー?」
こ、こいつ。優位に立てたと分かった途端に、態度が戻りやがった。
だが、仕方が無い。オリバーレベルの魔族なら、聖剣が無くても勝てるだろうが、それより強い魔族や魔王には有効な武器があった方が良いだろう。
「仕方が無い。エリー、マーガレットをホムンクルスとして呼び出してくれ」
「うん、わかったー。コール・ホムンクルス! 貴方の名は『マーガレット』」
エリーの言葉に応じてホムンクルスとマーガレットの霊魂が混ざり合い、赤毛の綺麗なお姉さんが現れた。
「やったぁー! 身体だぁーっ! これで私は、何でも出来る! 何でもなれる!」
何でもなれる……って、一体何をする気なのだろうか。というか、マーガレットは聖女なんだよな?
『調べてみましたが、一応聖女ですね。しかも、そこそこ位が高いです』
マジかよ。生前は素の性格を隠していたのか? と考えていると、
「そのお姿は……あぁ、十二歳の時に私を導いてくださった聖女そのもの。まさか貴方様だったとは」
ジェーンがマーガレットに畏まる。
詳しく話を聞くと、生前のジェーンが聖女らしい振る舞いのマーガレットに導かれたのだとか。
「え? えぇ? えっと……コホン。まさかこの時代で信徒に会う事が出来るとは。私はこの奇跡を嬉しく思います」
「いや、今更手遅れだから! もう、どうやっても挽回出来ないから!」
以前の自分を知るジェーンを前に、何とかマーガレットが取り繕うとしていたが、もうどうにもならないくらいに素が出ていたのだった。
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