2 / 343
第1章 召喚魔法と大賢者
第2話 召喚魔法は不人気スキル
しおりを挟む
週末の休みを挟み、来週から魔法科へ通うように言われ、トボトボと帰路に就く。
これからは使い慣れた剣ではなく、この小さな杖を握るのか。
帰り際に教官から渡された初心者用の杖と入門用の魔導書を手に持つが、とにかく軽い。こんな小枝みたいな杖で一体何が出来るというのか。
「召喚魔法って何だよ。せめて、神聖魔法ならまだ良かったのに」
軽く目を通した魔導書によると、神聖魔法は神に仕える司祭や神官が使う魔法で、身体の傷や疲労を癒したり、肉体を強化して攻撃力や防御力を高める事が出来るらしい。
そのため、神聖魔法で自らを強化し、大きな武器を片手に戦場を駆け巡る神官戦士や修行僧が居る程なのだとか。
その一方で召喚魔法はというと、
――比較的新しい魔法で、遠く離れた場所に居る幻獣や魔獣を召喚し、使役する。召喚する相手によっては非常に強力だが、呼び出すには各々の条件を満たす必要がある。それに加えて、召喚魔法を行使するための準備に手間が掛かるため、実戦で使う事が難しい使い勝手の悪い不人気スキル――
って、入門書にまで不人気スキルとか書かれているじゃねーかっ!
というか、俺だって好きでわざわざ不人気な召喚魔法を使いたい訳じゃないし、運命の悪戯で仕方なく使うんだ。
それなのに、いきなりやる気を削がなくても良いのに。
そんな事を考えていると、俺が寝泊まりしている学生用の第三宿舎に着いてしまった。
宿舎には仲の良い奴からウマの合わない奴を含め、同い年で同学年の学生――つまり、今日俺がクラス判別の儀を行った事を知っている者が少なからず居る。
「……もう少し時間を潰すか」
今宿舎に戻れば、クラス判別の結果がどうだったか絶対に聞かれる。
俺だって仲が良ければ当然で、そうで無い奴の結果でさえ気になるので、聞き耳を立てたり、人づてに聞いたりするだろう。
だが、言えない。ずっと成績上位に居て、騎士団入りが確実視されていた俺が、ハズレと呼ばれる召喚士を引いてしまっただなんて。
言えば憐れみの目で見られ、影で嘲笑されるのは分かっている。
行くあてが有る訳でもなく、フラフラと彷徨っていると、いつの間にか仕官学校の裏にある小さな山の頂きに着いていた。
広さはそれなりにあるものの、これといって特別な何かが有る訳でも無い低い山で、何故か住居や農地にも活用されていない場所だ。
「ここなら、誰も来ない……か」
こんな場所に来る者など誰も居ないだろうと、近くにあった手頃な大きさの石に腰かけると、改めて魔導書に目を通す。
目当ては、神聖魔法の章だ。
「神聖魔法……これを使えれば、魔法系クラスになってしまった俺でも、国を守る力が得られるはずだ」
騎士ではないが、騎士団と密接な繋がりのある教会に入れば、まだ俺の夢は破れない。
そう考えて杖を右手に構えると、魔導書に書かれた呪文を読み上げ、
「ヒール」
神聖魔法の代表的な魔法として紹介されていた、治癒魔法を使ってみた。
だが、何も起こらない。魔導書によると、杖の先端に小さな淡い光が灯るはずなのだが、僅かな光すらも生まれない。
集中力が足りなかったのだろうか。
杖が折れるのではいかと思える程に右手に力を込め、自分の意識を杖に集中させて呪文を口にし、
「ヒールッ!」
大声で叫んでみたものの、何の変化も無かった。
初心者用とはいえ魔法の杖を持ち、魔導書に書かれている通りに行ったにも関わらず何も起こらないのは、魔法の使い方を学んでいないからなのか、俺に魔法の才能が無いからなのか、それともクラスが召喚士だからなのか。
「……とりあえず、原因の切り分けって事で」
自分に言い聞かせるようにして、召喚魔法の章を開く。
召喚魔法を使えるようになったところで、これは自分の力で戦う訳では無く、召喚した相手に戦って貰う訳で、はっきり言って気乗りしない。
一先ず、魔法系クラスを引いたのだから、今まで学んでこなかっただけで、俺に魔法の才能が無いという事は無いだろう。
なので、とりあえず召喚魔法を使ってみて、何も起こらなければ魔法の使い方を学んでいないから神聖魔法が使えなかったという事になるのだ。
「一番簡単な召喚魔法は……これか。比較的近くに居る者を呼び寄せ、使役する魔法か」
今居る場所だと、ウサギやリスだろうか。
……戦闘中にウサギやリスが現れた所で、何の役にも立たねぇっ!
同じ入門書に載っている魔法なのに、神聖魔法と召喚魔法で差が激し過ぎるのではないだろうか。
溜息混じりに魔導書へ目を戻し、そこに書かれている通りに魔法陣? とやらを杖で地面に描いていく。
治癒魔法は何の準備も無しに呪文を読み上げるだけで良かったのに、面倒臭い上に使えないだなんて、ハズレって言われる訳だ。
召喚魔法が不人気な理由を十分に理解した後、魔導書に書かれた呪文を読み上げる。
そして、
「サモン」
とりあえず、やるだけやってみようと召喚魔法を使った。
だが、魔法陣にも杖にも変化は無い。
どうやら、ちゃんと魔法の使い方を学んでからでないと、魔法は使えないようだ。
時間も潰せたし、そろそろ日も落ちてきたので宿舎へ帰ろうかと思った所で、
『あの、私は何をしたら良いのでしょうか』
突然、聞き覚えの無い声で話しかけられた。
これからは使い慣れた剣ではなく、この小さな杖を握るのか。
帰り際に教官から渡された初心者用の杖と入門用の魔導書を手に持つが、とにかく軽い。こんな小枝みたいな杖で一体何が出来るというのか。
「召喚魔法って何だよ。せめて、神聖魔法ならまだ良かったのに」
軽く目を通した魔導書によると、神聖魔法は神に仕える司祭や神官が使う魔法で、身体の傷や疲労を癒したり、肉体を強化して攻撃力や防御力を高める事が出来るらしい。
そのため、神聖魔法で自らを強化し、大きな武器を片手に戦場を駆け巡る神官戦士や修行僧が居る程なのだとか。
その一方で召喚魔法はというと、
――比較的新しい魔法で、遠く離れた場所に居る幻獣や魔獣を召喚し、使役する。召喚する相手によっては非常に強力だが、呼び出すには各々の条件を満たす必要がある。それに加えて、召喚魔法を行使するための準備に手間が掛かるため、実戦で使う事が難しい使い勝手の悪い不人気スキル――
って、入門書にまで不人気スキルとか書かれているじゃねーかっ!
というか、俺だって好きでわざわざ不人気な召喚魔法を使いたい訳じゃないし、運命の悪戯で仕方なく使うんだ。
それなのに、いきなりやる気を削がなくても良いのに。
そんな事を考えていると、俺が寝泊まりしている学生用の第三宿舎に着いてしまった。
宿舎には仲の良い奴からウマの合わない奴を含め、同い年で同学年の学生――つまり、今日俺がクラス判別の儀を行った事を知っている者が少なからず居る。
「……もう少し時間を潰すか」
今宿舎に戻れば、クラス判別の結果がどうだったか絶対に聞かれる。
俺だって仲が良ければ当然で、そうで無い奴の結果でさえ気になるので、聞き耳を立てたり、人づてに聞いたりするだろう。
だが、言えない。ずっと成績上位に居て、騎士団入りが確実視されていた俺が、ハズレと呼ばれる召喚士を引いてしまっただなんて。
言えば憐れみの目で見られ、影で嘲笑されるのは分かっている。
行くあてが有る訳でもなく、フラフラと彷徨っていると、いつの間にか仕官学校の裏にある小さな山の頂きに着いていた。
広さはそれなりにあるものの、これといって特別な何かが有る訳でも無い低い山で、何故か住居や農地にも活用されていない場所だ。
「ここなら、誰も来ない……か」
こんな場所に来る者など誰も居ないだろうと、近くにあった手頃な大きさの石に腰かけると、改めて魔導書に目を通す。
目当ては、神聖魔法の章だ。
「神聖魔法……これを使えれば、魔法系クラスになってしまった俺でも、国を守る力が得られるはずだ」
騎士ではないが、騎士団と密接な繋がりのある教会に入れば、まだ俺の夢は破れない。
そう考えて杖を右手に構えると、魔導書に書かれた呪文を読み上げ、
「ヒール」
神聖魔法の代表的な魔法として紹介されていた、治癒魔法を使ってみた。
だが、何も起こらない。魔導書によると、杖の先端に小さな淡い光が灯るはずなのだが、僅かな光すらも生まれない。
集中力が足りなかったのだろうか。
杖が折れるのではいかと思える程に右手に力を込め、自分の意識を杖に集中させて呪文を口にし、
「ヒールッ!」
大声で叫んでみたものの、何の変化も無かった。
初心者用とはいえ魔法の杖を持ち、魔導書に書かれている通りに行ったにも関わらず何も起こらないのは、魔法の使い方を学んでいないからなのか、俺に魔法の才能が無いからなのか、それともクラスが召喚士だからなのか。
「……とりあえず、原因の切り分けって事で」
自分に言い聞かせるようにして、召喚魔法の章を開く。
召喚魔法を使えるようになったところで、これは自分の力で戦う訳では無く、召喚した相手に戦って貰う訳で、はっきり言って気乗りしない。
一先ず、魔法系クラスを引いたのだから、今まで学んでこなかっただけで、俺に魔法の才能が無いという事は無いだろう。
なので、とりあえず召喚魔法を使ってみて、何も起こらなければ魔法の使い方を学んでいないから神聖魔法が使えなかったという事になるのだ。
「一番簡単な召喚魔法は……これか。比較的近くに居る者を呼び寄せ、使役する魔法か」
今居る場所だと、ウサギやリスだろうか。
……戦闘中にウサギやリスが現れた所で、何の役にも立たねぇっ!
同じ入門書に載っている魔法なのに、神聖魔法と召喚魔法で差が激し過ぎるのではないだろうか。
溜息混じりに魔導書へ目を戻し、そこに書かれている通りに魔法陣? とやらを杖で地面に描いていく。
治癒魔法は何の準備も無しに呪文を読み上げるだけで良かったのに、面倒臭い上に使えないだなんて、ハズレって言われる訳だ。
召喚魔法が不人気な理由を十分に理解した後、魔導書に書かれた呪文を読み上げる。
そして、
「サモン」
とりあえず、やるだけやってみようと召喚魔法を使った。
だが、魔法陣にも杖にも変化は無い。
どうやら、ちゃんと魔法の使い方を学んでからでないと、魔法は使えないようだ。
時間も潰せたし、そろそろ日も落ちてきたので宿舎へ帰ろうかと思った所で、
『あの、私は何をしたら良いのでしょうか』
突然、聞き覚えの無い声で話しかけられた。
3
お気に入りに追加
1,338
あなたにおすすめの小説
無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです
やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」
ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。
あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。
元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……
更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。
追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に!
「――わたし、あなたに運命を感じました!」
ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません
※他サイトでも投稿しています
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる