精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

文字の大きさ
上 下
65 / 79
第3章 精霊と新しい暮らしを始める元聖女

第48話 精霊救出の旅へ

しおりを挟む
『あのさ、リディア。舞い上がっているから気付いてないかもしれないけど、あの銀の筒が他にもあると思うから、探して欲しいんだけど』
(――っ! そ、そうよね。ご、ごめん)

 ジト目のエミリーに指摘され、一旦クロードさんから離れると、

「え、えっと、クロードさん。さっきの薬が他にもあると思うので、壊してもらえませんか?」
「は、はい。喜んで」

 クロードさんに精霊を助けるようにお願いしてみたんだけど……目、目が合っちゃったー!
 どうしよう。優しい瞳を向けられてる。
 さっきは胸の中に顔を埋める形になっていたから気付かなかったけど、見つめ合うなんて恥ずかし過ぎるよ……。

『げふんげふん!』
(……ごめんね。急いで探すから)

 私とクロードさんだけ時間が止まったかのように見つめ合っていたけれど、エミリーに怒られ、先程お頭さんが銀の筒を取り出した棚を調べてみる。
 すると、銀色の筒が二十本くらい出てきた。
 それを持って、部屋に倒れている人たちをロープで縛っていたクロードさんの所へ行き、

「あの、これを全て壊してもらえますか?」
「お任せを。リディア様、少しお下がりください」

 銀の筒を床に並べる。
 それから、少し離れてクロードさんが鞘から剣を抜くと、床に並べた全ての筒が半分に割れていた。
 ……相変わらず、クロードさんの剣が速過ぎて全く見えなかったんだけど、

『助けてくれて、ありがとう』

 精霊さんたちが銀の筒から、どんどん出て行く。

(一先ず、この場所にあるのはこれが全部かな?)
『多分ね。でも、さっき出て行った精霊たちが、銀色の筒がもっと沢山あって、多くの精霊が捕まっていたって言っていたから、他の場所にあるのかも』
(じゃあ、他の場所の精霊さんたちも助けてあげないとね!)
『ちょっと待ってね。聞いてみるから……分かった。リディア、ここから東に行った別の国に居るみたい』
(別の国? 東っていうと……イーサリム公国かしら)

 エミリーから聞いた話を、クロードさんに伝えてみると、

「なるほど。薬の大半がイーサリム公国に運ばれたと。元大臣のメリアはイーサリム公国と手を組んでいましたし、そこにあるのが自然と言えますね」
「では……すみませんが、クロードさん。一緒に来ていただけませんか? 私では、あの銀の筒を壊せなくて」
「もちろんです。私は、リディア様のお傍に居りますので」

 すぐさま同意してくれた。

「とはいえ、準備も必要ですし、この者たちを捕らえなければなりません。リディア様、私はここで見張っておりますので、兵士たちを呼んで来ていただけませんか?」
「は、はい。すぐに呼んで来ますね」

 そこからは、全速力で(シルフちゃんの力を借りて)兵士さんの居る詰所へ行き、事情を説明して来てもらった。
 兵士さんたちがクロードさんの元へ着いてからは、後は任せる事にして、私たちは一度王宮へ報告に戻る。

「え? もう捕まえたの!? 流石リディアちゃん。凄いじゃない!」
「クロードさんが居てくれたからです。私一人では何も出来ませんでした」
「いえ、それを言うなら私の方です。リディア様が居なければ、私はどこを探して良いかも分かりませんでしたから」

 クロードさんを立てると、何故かクロードさんが私のおかげだと言ってきて、シャルロットちゃんやロビンさんの前で互いに譲り合っていると、

「……もしかして、貴方たち。何か進展があったの? 随分と親しくなったわよね」
「そ、そ、そんな事より、ロビンさん。さっきの場所に全ての薬があった訳じゃなくて、まだ残りがあるんです」
「ふぅん。なんだか、はぐらかされた感じがするけど……」

 ロビンさんが何故かニヤニヤしながら、私とクロードさんを見てくる。

「た、ただ事実を伝えただけですってば。それより、東のイーサリム国へ既に運ばれている薬があるみたいで」
「そうね。メリアが運ぶとしたら、そこでしょうね。他国だから、騎士団として行くと大事になっちゃうわね」
「だったら、私が行きます! あの薬は放っておけないし」

 まだ銀の筒の中に囚われて、出られない精霊さんたちが居るんだもん。助けてあげなきゃ。

「けど、そんな危険な場所へリディアちゃん一人で行かせられないわよ」
「でしたら、私がリディア様をお守り致します」
「クロードさんもこう言ってくれていますし……というか、私は一人でも行きますけどね」

 精霊を助ける意気込みを皆に伝えると、

「……分かったわよ。シャルロット様、この二人をイーサリム国へ派遣してよろしいでしょうか。クロード不在の間は、第二騎士隊を私が指揮しますので」
「そうですね。リディアさんは、止めても行ってしまいそうですし、でしたらクロードさんが一緒の方が安全かと」
「という訳で、クロードちゃん。リディアちゃんをしっかり守るのよ? ……あ、合意の上ならクロードちゃんが襲うのは有りだと思うけど」

 ロビンさんに物凄い事を言われつつも、精霊救出の為に東の国イーサリムへ行く事になった。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。 留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。 政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。 家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。 「こんな国、もう知らない!」 そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。 アトリアは弱いながらも治癒の力がある。 子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。 それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。 「ぜひ我が国へ来てほしい」 男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。 「……ん!?」

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

処理中です...