精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

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第3章 精霊と新しい暮らしを始める元聖女

挿話17 調子に乗り過ぎた商人ギルドの青年カイン

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「レオナさん。い、痛いですよ。その腕を捻るのは、止めてくれませんか?」
「アンタが正直に話したら、止めてあげるわよ」
「……仕方ありませんねぇ。商品に手を出すのはポリシーに反するのですけど……ねっ!」

 逃げようとするカインの腕を取り、関節技を極めて動けなくしている。
 ……しているはずなのに、カインが強引な力押しで完璧に決まっている腕を押し返してきた。
 はっきり言って、こんなの有り得ない!
 完璧に決まった腕を力押しで解こうと思ったら、いくら私が軽いと言っても、その何倍もの力が無いと不可能だ。
 ギルドマスターみたいなS級パワー馬鹿ならともかく、カインのような剣も振るった事のない商人に、こんな力がある訳ない!

「ふふっ。今起こった事が信じられませんか? ですが、これは現実。もうレオナさんに勝ち目は無いですよ」
「一体、何をしたのっ!?」
「この国が、イーサリム公国と秘密裏に開発している薬ですよ。レオナさんが身につけているアクセサリーと同じ、石に宿る力を使ったね」

 薬? リディアちゃんが作ってくれたアクセサリーと同じ? 石に宿る力?
 カインが何を言っているか分からないけど、マズいのは確かだ。
 何らかの薬を使い、カインの筋力が大幅に向上したのだろう。私はスピードを活かした戦い方だから、単純な力比べだと極めて分が悪い。
 先程までとは打って変わって、逃がさないようにする側から、逃げる側になってしまい、たいして広くない部屋を縦横無尽に逃げ回る。

「レオナさん。形勢逆転って奴ですね。さぁ、あのアクセサリーをどこから仕入れているのか教えてください。そうすれば、酷い事はしませんから」
「アンタ、バカじゃないの!? 酷い事はしない……って、私は仕事上、仕方なくアンタと話しているだけで、凄いストレスなのよっ! つまり、アンタは存在しているだけで、周囲に酷い事をしているの。その自覚を持ちなさいよねっ!」
「なっ! ……今まで、レオナさんの美貌に免じて許してきましたが、僕の後ろを誰が支えてくれているかご存じないみたいですね。こんなギルドなんて片手で吹き飛ばせるくらいの大物が僕にはついているんですよ?」
「へぇ……誰かしら? 知っていると思うけど、私の弟は騎士隊長よ?」
「ふっ……私の弟も騎士隊長ですよ。しかも、最年少で騎士隊長となった優秀な人材です。まぁそれも、私たち兄弟を支える大物――メリア大臣様あってですけどね」

 なるほど。カインの後ろには大臣がついて居ると。
 確かに、この国の情勢を考えれば確かに大物ね。

「で、その大臣から、薬を売れって言われた訳ね」
「さぁ、どうでしょうね。ただ、メリア様に目を掛けていただいている私に何かあればどうなるか。お分かりですよ……ねっ!」

 大ぶりの拳を避けると、カインが勢い余って壁に拳をめり込ませ、壁を半壊させる。
 その壁の向こう側は、私の狙い通り、ギルドマスターの部屋。
 なので、

「レオナ! 何を暴れ……って、何だ!? 何をしているんだ!?」

 すぐさまギルドマスターが飛んできた。

「マスター、気を付けて! 変な薬を使って、力が物凄く強くなって……って、余計な心配だったわね」
「まぁな。いくら引退したとは言っても、戦い方も知らない、力だけの素人に負ける程じゃねぇよ……ってか、それよりマジで何があったんだ?」

 ギルドマスターの一撃でカインがあっさり気を失う。
 どうやら攻撃力は強化されていたけれど、耐久力は変わっていなかったみたい。
 マスターが気を失っているカインを拘束している間に、私の家が監視されていた事や、謎の薬を流通させようとしていた事、黒幕が大臣である可能性が高い事を説明する。

「……なるほど。ちょっと話が大きすぎるな。確かレオナの弟は騎士隊長だっただろ? とりあえず、要請を出して来てもらうか」

 私個人の依頼ではなく、冒険者ギルドとして正式に騎士団へ要請を出してもらい、騎士の格好をした弟――クロードが来た。
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