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第3章 精霊と新しい暮らしを始める元聖女
第44話 直球勝負
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クロードさんの家を人を雇って見張らせていた、商人ギルドのカイルっていう人が、レオナさんの仲間ですって!?
(……って、ちょっと待ってよ。エミリー、これって冷静に考えてみたらおかしくない? 仮にレオナさんがカイルって人の仲間だとしたら、どうして自分の家を見張らせるの?)
『あ! 確かに……じゃあ、レオナが何か商人ギルドから疑惑を持たれていて、秘密裏に見張られているとか』
(つまり、この中で談笑している二人は、表向きは仲が良さそうに見えるけど、実は互いに腹の探り合いを……って、レオナさんはそんな人かなー? 何かあればストレートに正面突破していくイメージなんだけど)
『人は見かけによらないし、どんな内面を持っているかなんて分からないからね。現に今の王宮だって、リディアは騎士隊長全員と会話したけど、内通者が居るなんて思わなかったでしょ? つまりはそういう事だよ』
うーん。エミリーの言う通りで、騎士隊長さんたち全員と話したけど、特に怪しいと思える人は居なかった。
だけど、実際は大臣側の内通者が居た訳で。
どうしたものかと考え、
(よし! じゃあ、直接レオナさんに聞こう!)
ややこしいから、一番手っ取り早い方法を取る事にした。
『ちょっとリディア! 何を考えているのさ! ウチは、この目でカイルとレオナが談笑しているのを見たんだよ? そして、前に家を監視していた男が、そのカイルに詰め寄っている所も見てきた。黒……とまでは言わないけど、限りなく黒に近いグレーなんだよっ!?』
(そうだけど、ストレートにこちらの考えをぶつけた時の反応とかで、得られる事もあるでしょ? それに、万が一レオナさんが黒で、私に襲い掛かってくるような事があったとしても、エミリーが居れば大丈夫よね?)
『そ、それはそうだけど……わ、分かったよ。リディアは何があってもウチが守ってみせるから、思った通りにやってみよう』
とはいえ、流石に人が大勢居る冒険者ギルドの中で聞く訳にもいかないし、カイルって人に私の姿を見せるのも良く無いだろう。
なので、一先ずこの場は立ち去り、家でアクセサリーを作りながらレオナさんの帰りを待つ。
今回作るのは、今までとは少し趣向を変えていて、男性向け……それも騎士では無い人が身に付けていてもおかしく無いものだ。
「たっだいまー!」
前にも騎士さん達向けに、剣帯につけるアクセサリーを作ったけれど、あれだと剣を持つ人にしか使われない。
そうではなくて、今作っているこのベルトのバックルだと、たいていの男性がズボンにベルトを……
『ディア。……リディアってば。夢中になって作っているけど、レオナが帰ってきたよ』
突然エミリーが大きな声で話しかけてきた。
(エミリー? 突然どうかしたの?)
『どうかしたよっ! レオナが帰って来たんだってば』
(え? ……そっか。じゃあ、そろそろ夕食の時間だね)
『いや、そうじゃなくて、カイルの事を聞くんでしょ?』
(……あ! そうだったね。アクセサリー作りに夢中で、すっかり忘れてた)
早速レオナさんの所へ行き、私の部屋に来てもらうと、予定通りストレートに疑問をぶつける。
「レオナさん。カイルっていう男の人を知っていますよね?」
「カイル? ……んー、そんな名前の人は冒険者に居たかなー? どんな人?」
「商人ギルドの人で、えっと、金髪で変な髪の人」
「金髪の変な商人? んー、あ! 分かった! リディアちゃん、それってカイルじゃなくて、カインじゃない? あの変な人がどうかしたの? もしかして、口説かれたとか? それなら、一発殴ってくるわよ?」
「え? 殴る……って、知り合いなんですよね?」
「知り合いというか、仕事上仕方なく相手をする感じね。あの人、冒険者ギルドの女性職員全員から嫌われているからね。リディアちゃんも気を付けてね」
……えーっと、知り合いは知り合いみたいだけど、あれ?
もしかして、これって私に全く関係無くて、単にレオナさんのストーカーって事なの!?
(……って、ちょっと待ってよ。エミリー、これって冷静に考えてみたらおかしくない? 仮にレオナさんがカイルって人の仲間だとしたら、どうして自分の家を見張らせるの?)
『あ! 確かに……じゃあ、レオナが何か商人ギルドから疑惑を持たれていて、秘密裏に見張られているとか』
(つまり、この中で談笑している二人は、表向きは仲が良さそうに見えるけど、実は互いに腹の探り合いを……って、レオナさんはそんな人かなー? 何かあればストレートに正面突破していくイメージなんだけど)
『人は見かけによらないし、どんな内面を持っているかなんて分からないからね。現に今の王宮だって、リディアは騎士隊長全員と会話したけど、内通者が居るなんて思わなかったでしょ? つまりはそういう事だよ』
うーん。エミリーの言う通りで、騎士隊長さんたち全員と話したけど、特に怪しいと思える人は居なかった。
だけど、実際は大臣側の内通者が居た訳で。
どうしたものかと考え、
(よし! じゃあ、直接レオナさんに聞こう!)
ややこしいから、一番手っ取り早い方法を取る事にした。
『ちょっとリディア! 何を考えているのさ! ウチは、この目でカイルとレオナが談笑しているのを見たんだよ? そして、前に家を監視していた男が、そのカイルに詰め寄っている所も見てきた。黒……とまでは言わないけど、限りなく黒に近いグレーなんだよっ!?』
(そうだけど、ストレートにこちらの考えをぶつけた時の反応とかで、得られる事もあるでしょ? それに、万が一レオナさんが黒で、私に襲い掛かってくるような事があったとしても、エミリーが居れば大丈夫よね?)
『そ、それはそうだけど……わ、分かったよ。リディアは何があってもウチが守ってみせるから、思った通りにやってみよう』
とはいえ、流石に人が大勢居る冒険者ギルドの中で聞く訳にもいかないし、カイルって人に私の姿を見せるのも良く無いだろう。
なので、一先ずこの場は立ち去り、家でアクセサリーを作りながらレオナさんの帰りを待つ。
今回作るのは、今までとは少し趣向を変えていて、男性向け……それも騎士では無い人が身に付けていてもおかしく無いものだ。
「たっだいまー!」
前にも騎士さん達向けに、剣帯につけるアクセサリーを作ったけれど、あれだと剣を持つ人にしか使われない。
そうではなくて、今作っているこのベルトのバックルだと、たいていの男性がズボンにベルトを……
『ディア。……リディアってば。夢中になって作っているけど、レオナが帰ってきたよ』
突然エミリーが大きな声で話しかけてきた。
(エミリー? 突然どうかしたの?)
『どうかしたよっ! レオナが帰って来たんだってば』
(え? ……そっか。じゃあ、そろそろ夕食の時間だね)
『いや、そうじゃなくて、カイルの事を聞くんでしょ?』
(……あ! そうだったね。アクセサリー作りに夢中で、すっかり忘れてた)
早速レオナさんの所へ行き、私の部屋に来てもらうと、予定通りストレートに疑問をぶつける。
「レオナさん。カイルっていう男の人を知っていますよね?」
「カイル? ……んー、そんな名前の人は冒険者に居たかなー? どんな人?」
「商人ギルドの人で、えっと、金髪で変な髪の人」
「金髪の変な商人? んー、あ! 分かった! リディアちゃん、それってカイルじゃなくて、カインじゃない? あの変な人がどうかしたの? もしかして、口説かれたとか? それなら、一発殴ってくるわよ?」
「え? 殴る……って、知り合いなんですよね?」
「知り合いというか、仕事上仕方なく相手をする感じね。あの人、冒険者ギルドの女性職員全員から嫌われているからね。リディアちゃんも気を付けてね」
……えーっと、知り合いは知り合いみたいだけど、あれ?
もしかして、これって私に全く関係無くて、単にレオナさんのストーカーって事なの!?
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