59 / 79
第3章 精霊と新しい暮らしを始める元聖女
第44話 直球勝負
しおりを挟む
クロードさんの家を人を雇って見張らせていた、商人ギルドのカイルっていう人が、レオナさんの仲間ですって!?
(……って、ちょっと待ってよ。エミリー、これって冷静に考えてみたらおかしくない? 仮にレオナさんがカイルって人の仲間だとしたら、どうして自分の家を見張らせるの?)
『あ! 確かに……じゃあ、レオナが何か商人ギルドから疑惑を持たれていて、秘密裏に見張られているとか』
(つまり、この中で談笑している二人は、表向きは仲が良さそうに見えるけど、実は互いに腹の探り合いを……って、レオナさんはそんな人かなー? 何かあればストレートに正面突破していくイメージなんだけど)
『人は見かけによらないし、どんな内面を持っているかなんて分からないからね。現に今の王宮だって、リディアは騎士隊長全員と会話したけど、内通者が居るなんて思わなかったでしょ? つまりはそういう事だよ』
うーん。エミリーの言う通りで、騎士隊長さんたち全員と話したけど、特に怪しいと思える人は居なかった。
だけど、実際は大臣側の内通者が居た訳で。
どうしたものかと考え、
(よし! じゃあ、直接レオナさんに聞こう!)
ややこしいから、一番手っ取り早い方法を取る事にした。
『ちょっとリディア! 何を考えているのさ! ウチは、この目でカイルとレオナが談笑しているのを見たんだよ? そして、前に家を監視していた男が、そのカイルに詰め寄っている所も見てきた。黒……とまでは言わないけど、限りなく黒に近いグレーなんだよっ!?』
(そうだけど、ストレートにこちらの考えをぶつけた時の反応とかで、得られる事もあるでしょ? それに、万が一レオナさんが黒で、私に襲い掛かってくるような事があったとしても、エミリーが居れば大丈夫よね?)
『そ、それはそうだけど……わ、分かったよ。リディアは何があってもウチが守ってみせるから、思った通りにやってみよう』
とはいえ、流石に人が大勢居る冒険者ギルドの中で聞く訳にもいかないし、カイルって人に私の姿を見せるのも良く無いだろう。
なので、一先ずこの場は立ち去り、家でアクセサリーを作りながらレオナさんの帰りを待つ。
今回作るのは、今までとは少し趣向を変えていて、男性向け……それも騎士では無い人が身に付けていてもおかしく無いものだ。
「たっだいまー!」
前にも騎士さん達向けに、剣帯につけるアクセサリーを作ったけれど、あれだと剣を持つ人にしか使われない。
そうではなくて、今作っているこのベルトのバックルだと、たいていの男性がズボンにベルトを……
『ディア。……リディアってば。夢中になって作っているけど、レオナが帰ってきたよ』
突然エミリーが大きな声で話しかけてきた。
(エミリー? 突然どうかしたの?)
『どうかしたよっ! レオナが帰って来たんだってば』
(え? ……そっか。じゃあ、そろそろ夕食の時間だね)
『いや、そうじゃなくて、カイルの事を聞くんでしょ?』
(……あ! そうだったね。アクセサリー作りに夢中で、すっかり忘れてた)
早速レオナさんの所へ行き、私の部屋に来てもらうと、予定通りストレートに疑問をぶつける。
「レオナさん。カイルっていう男の人を知っていますよね?」
「カイル? ……んー、そんな名前の人は冒険者に居たかなー? どんな人?」
「商人ギルドの人で、えっと、金髪で変な髪の人」
「金髪の変な商人? んー、あ! 分かった! リディアちゃん、それってカイルじゃなくて、カインじゃない? あの変な人がどうかしたの? もしかして、口説かれたとか? それなら、一発殴ってくるわよ?」
「え? 殴る……って、知り合いなんですよね?」
「知り合いというか、仕事上仕方なく相手をする感じね。あの人、冒険者ギルドの女性職員全員から嫌われているからね。リディアちゃんも気を付けてね」
……えーっと、知り合いは知り合いみたいだけど、あれ?
もしかして、これって私に全く関係無くて、単にレオナさんのストーカーって事なの!?
(……って、ちょっと待ってよ。エミリー、これって冷静に考えてみたらおかしくない? 仮にレオナさんがカイルって人の仲間だとしたら、どうして自分の家を見張らせるの?)
『あ! 確かに……じゃあ、レオナが何か商人ギルドから疑惑を持たれていて、秘密裏に見張られているとか』
(つまり、この中で談笑している二人は、表向きは仲が良さそうに見えるけど、実は互いに腹の探り合いを……って、レオナさんはそんな人かなー? 何かあればストレートに正面突破していくイメージなんだけど)
『人は見かけによらないし、どんな内面を持っているかなんて分からないからね。現に今の王宮だって、リディアは騎士隊長全員と会話したけど、内通者が居るなんて思わなかったでしょ? つまりはそういう事だよ』
うーん。エミリーの言う通りで、騎士隊長さんたち全員と話したけど、特に怪しいと思える人は居なかった。
だけど、実際は大臣側の内通者が居た訳で。
どうしたものかと考え、
(よし! じゃあ、直接レオナさんに聞こう!)
ややこしいから、一番手っ取り早い方法を取る事にした。
『ちょっとリディア! 何を考えているのさ! ウチは、この目でカイルとレオナが談笑しているのを見たんだよ? そして、前に家を監視していた男が、そのカイルに詰め寄っている所も見てきた。黒……とまでは言わないけど、限りなく黒に近いグレーなんだよっ!?』
(そうだけど、ストレートにこちらの考えをぶつけた時の反応とかで、得られる事もあるでしょ? それに、万が一レオナさんが黒で、私に襲い掛かってくるような事があったとしても、エミリーが居れば大丈夫よね?)
『そ、それはそうだけど……わ、分かったよ。リディアは何があってもウチが守ってみせるから、思った通りにやってみよう』
とはいえ、流石に人が大勢居る冒険者ギルドの中で聞く訳にもいかないし、カイルって人に私の姿を見せるのも良く無いだろう。
なので、一先ずこの場は立ち去り、家でアクセサリーを作りながらレオナさんの帰りを待つ。
今回作るのは、今までとは少し趣向を変えていて、男性向け……それも騎士では無い人が身に付けていてもおかしく無いものだ。
「たっだいまー!」
前にも騎士さん達向けに、剣帯につけるアクセサリーを作ったけれど、あれだと剣を持つ人にしか使われない。
そうではなくて、今作っているこのベルトのバックルだと、たいていの男性がズボンにベルトを……
『ディア。……リディアってば。夢中になって作っているけど、レオナが帰ってきたよ』
突然エミリーが大きな声で話しかけてきた。
(エミリー? 突然どうかしたの?)
『どうかしたよっ! レオナが帰って来たんだってば』
(え? ……そっか。じゃあ、そろそろ夕食の時間だね)
『いや、そうじゃなくて、カイルの事を聞くんでしょ?』
(……あ! そうだったね。アクセサリー作りに夢中で、すっかり忘れてた)
早速レオナさんの所へ行き、私の部屋に来てもらうと、予定通りストレートに疑問をぶつける。
「レオナさん。カイルっていう男の人を知っていますよね?」
「カイル? ……んー、そんな名前の人は冒険者に居たかなー? どんな人?」
「商人ギルドの人で、えっと、金髪で変な髪の人」
「金髪の変な商人? んー、あ! 分かった! リディアちゃん、それってカイルじゃなくて、カインじゃない? あの変な人がどうかしたの? もしかして、口説かれたとか? それなら、一発殴ってくるわよ?」
「え? 殴る……って、知り合いなんですよね?」
「知り合いというか、仕事上仕方なく相手をする感じね。あの人、冒険者ギルドの女性職員全員から嫌われているからね。リディアちゃんも気を付けてね」
……えーっと、知り合いは知り合いみたいだけど、あれ?
もしかして、これって私に全く関係無くて、単にレオナさんのストーカーって事なの!?
29
お気に入りに追加
4,405
あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話
彩伊
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。
しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。
彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。
............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。
招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。
送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。
そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。
『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』
一日一話
14話完結

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……
水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。
相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。
思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。
しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。
それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。
彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。
それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。
私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。
でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。
しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。
一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。
すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。
しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。
彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?
如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。
留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。
政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。
家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。
「こんな国、もう知らない!」
そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。
アトリアは弱いながらも治癒の力がある。
子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。
それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。
「ぜひ我が国へ来てほしい」
男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。
「……ん!?」

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました
サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。
「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」
やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる