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第3章 精霊と新しい暮らしを始める元聖女
第35話 どこかへ運ばれる元聖女
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「ったく。この荷物は一体何なんだよ。国宝だか何だか知らないけど、考えられる最も丁重な方法で運べだなんて……とりあえず、重いんだよ!」
箱の外から、おそらく私が入っている箱を運んでいると思わしき人が、文句を言っている。
国宝だなんてとんでもなくて、中身はただの一般人なんだけど、けど……お、重くないもん! むしろ、平均より少し軽いくらいなんだからっ!
『まぁまぁ。この人は騎士団から依頼された、王宮に出入りしている商会の下請けみたいだしね。普段運んでいる荷物と比べると、重いって事でしょ』
(うぅ……エミリーの言う通りだっていうのは分かってるんだけど、それでも女の子としては、一番言われたくない言葉だもん)
『そうだね。……けど、大きな家が見えてきたから、この狭い箱の中に隠れているのも終わりだよ。だから、元気出して』
箱から顔だけ出して、外の様子を見ているエミリーに励まされながら、ただただジッと箱が開けられるのを待つ。
ちなみに、身体が動かせないのは辛いけれど、温度はエミリーのおかげで快適だったりする。
――ゴロゴロゴロゴロ
暫く台車で運ばれる音だけが外から聞こえた後、静かに止まった。
「失礼します。冒険者ギルドの者です。キッザルド商会の依頼で荷物をお届けに参りましたー!」
元気の良い男性の声が響き、少しすると、
「はーい。えーっと、受領書は……これね」
「え? レオナ……さん!? ここって、レオナさんの家だったんですね」
「こら。言っておくけど、ギルドの仕事で知った個人の情報を悪用したら、除名処分だからね」
「は、はい! わ、分かっています! で、では、失礼致します!」
受け取り側と思われる女性――レオナと呼ばれていた人の声が聞こえてきた。
……って、あれ? 私はクロードさんの家に運ばれたんだよね? それなのに、どうして女性の声が聞こえてきたの!? しかも、結構若そうな声だったんだけど。
エミリーを見てみると、困ったように肩をすくめられる。
「これがクロードの言っていた荷物ね。とりあえず、私には運べそうにないから、自分で歩いてもらっても良いかしら? 開けるわよ?」
クロード……って、呼び捨て!? こ、この声の主は、クロードさんと一体どういう関係なのっ!?
少しすると、箱の天井に真っ白な線が入り、眩しい太陽の光が差し込んでくる。
「大変だったわね。大丈夫? 立てる?」
「え、えーっと、はい。……ありがとうございます」
レオナさんから手を差し伸べられて立ち上がると、そこに居たのは二十代前半といった感じの綺麗な女性だった。
キラキラと光り輝く金髪は首元辺りまでのボブカットで、長身スレンダーなボーイッシュな感じがする女性……そっか。クロードさんの好みは、こういう女性だったのか。
私とは全然違うタイプの女性を前に固まっていると、
「いつもクロードがお世話になっているみたいだね」
レオナさんが声を掛けてきた。
「い、いえ。逆に私がお世話になっています」
「そうなの? クロードは家で仕事の話を滅多にしないんだけど、その滅多に無い話が貴女の事で、命の恩人だって聞いているわよ?」
「そんな、大袈裟ですよ。それより……」
「あっ! そうだ。立ち話もなんだから、お茶でも飲みながら話を聞かせてよ。さっきも言ったけど、クロードってば詳しい事は何にも教えてくれなくてねー。貴女の事も、大事な人を家で預かる事になったから、色々と頼む……って、それだけなのよ!? まぁ仕事中で忙しかったのかもしれないけどさ」
クロードさんもロビンさんも、かなりバタバタしていたし、私を匿う事は秘密だって言っていたから、詳しい事を伝えられなかったんだろうな。
レオナさんにリビングへ案内されると、柑橘類の香りがする紅茶が出され、
「で、お嬢さん。あのクロードが大事な人って言っていたけど、どういう関係なの?」
何とも困る質問が飛んできた。
この人がクロードさんの恋人なんだとしたら、そんな言い方されると気になるよね。
うぅ……クロードさん。これくらいは説明しておいて欲しかったかも。
私が何て説明しようかと困っていると、レオナさんが先に口を開く。
「……もしかして、あの異性に免疫の無いクロードの恋人なのかしら? もうキスくらいはした? それとも……」
「えっ!? ま、待ってください。私は……というか、貴方がクロードさんの恋人なのでは?」
「へ? ……あははっ! 無い無い! 流石に実の弟に手を出したりしないわよー!」
「弟……って、クロードさんのお姉さんですかっ!?」
「あ! ごめん、ごめん。自己紹介してなかったね。クロードの姉のレオナよ。よろしくね」
あ、クロードさんのお姉さんなんだ。
良かった……って、まさかここは、クロードさんの実家なのっ!?
箱の外から、おそらく私が入っている箱を運んでいると思わしき人が、文句を言っている。
国宝だなんてとんでもなくて、中身はただの一般人なんだけど、けど……お、重くないもん! むしろ、平均より少し軽いくらいなんだからっ!
『まぁまぁ。この人は騎士団から依頼された、王宮に出入りしている商会の下請けみたいだしね。普段運んでいる荷物と比べると、重いって事でしょ』
(うぅ……エミリーの言う通りだっていうのは分かってるんだけど、それでも女の子としては、一番言われたくない言葉だもん)
『そうだね。……けど、大きな家が見えてきたから、この狭い箱の中に隠れているのも終わりだよ。だから、元気出して』
箱から顔だけ出して、外の様子を見ているエミリーに励まされながら、ただただジッと箱が開けられるのを待つ。
ちなみに、身体が動かせないのは辛いけれど、温度はエミリーのおかげで快適だったりする。
――ゴロゴロゴロゴロ
暫く台車で運ばれる音だけが外から聞こえた後、静かに止まった。
「失礼します。冒険者ギルドの者です。キッザルド商会の依頼で荷物をお届けに参りましたー!」
元気の良い男性の声が響き、少しすると、
「はーい。えーっと、受領書は……これね」
「え? レオナ……さん!? ここって、レオナさんの家だったんですね」
「こら。言っておくけど、ギルドの仕事で知った個人の情報を悪用したら、除名処分だからね」
「は、はい! わ、分かっています! で、では、失礼致します!」
受け取り側と思われる女性――レオナと呼ばれていた人の声が聞こえてきた。
……って、あれ? 私はクロードさんの家に運ばれたんだよね? それなのに、どうして女性の声が聞こえてきたの!? しかも、結構若そうな声だったんだけど。
エミリーを見てみると、困ったように肩をすくめられる。
「これがクロードの言っていた荷物ね。とりあえず、私には運べそうにないから、自分で歩いてもらっても良いかしら? 開けるわよ?」
クロード……って、呼び捨て!? こ、この声の主は、クロードさんと一体どういう関係なのっ!?
少しすると、箱の天井に真っ白な線が入り、眩しい太陽の光が差し込んでくる。
「大変だったわね。大丈夫? 立てる?」
「え、えーっと、はい。……ありがとうございます」
レオナさんから手を差し伸べられて立ち上がると、そこに居たのは二十代前半といった感じの綺麗な女性だった。
キラキラと光り輝く金髪は首元辺りまでのボブカットで、長身スレンダーなボーイッシュな感じがする女性……そっか。クロードさんの好みは、こういう女性だったのか。
私とは全然違うタイプの女性を前に固まっていると、
「いつもクロードがお世話になっているみたいだね」
レオナさんが声を掛けてきた。
「い、いえ。逆に私がお世話になっています」
「そうなの? クロードは家で仕事の話を滅多にしないんだけど、その滅多に無い話が貴女の事で、命の恩人だって聞いているわよ?」
「そんな、大袈裟ですよ。それより……」
「あっ! そうだ。立ち話もなんだから、お茶でも飲みながら話を聞かせてよ。さっきも言ったけど、クロードってば詳しい事は何にも教えてくれなくてねー。貴女の事も、大事な人を家で預かる事になったから、色々と頼む……って、それだけなのよ!? まぁ仕事中で忙しかったのかもしれないけどさ」
クロードさんもロビンさんも、かなりバタバタしていたし、私を匿う事は秘密だって言っていたから、詳しい事を伝えられなかったんだろうな。
レオナさんにリビングへ案内されると、柑橘類の香りがする紅茶が出され、
「で、お嬢さん。あのクロードが大事な人って言っていたけど、どういう関係なの?」
何とも困る質問が飛んできた。
この人がクロードさんの恋人なんだとしたら、そんな言い方されると気になるよね。
うぅ……クロードさん。これくらいは説明しておいて欲しかったかも。
私が何て説明しようかと困っていると、レオナさんが先に口を開く。
「……もしかして、あの異性に免疫の無いクロードの恋人なのかしら? もうキスくらいはした? それとも……」
「えっ!? ま、待ってください。私は……というか、貴方がクロードさんの恋人なのでは?」
「へ? ……あははっ! 無い無い! 流石に実の弟に手を出したりしないわよー!」
「弟……って、クロードさんのお姉さんですかっ!?」
「あ! ごめん、ごめん。自己紹介してなかったね。クロードの姉のレオナよ。よろしくね」
あ、クロードさんのお姉さんなんだ。
良かった……って、まさかここは、クロードさんの実家なのっ!?
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