精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

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第2章 精霊と学校へ通う元聖女

挿話9 食あたりに苦しむ新米メイドユフィ

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――ッ!?

 異変を感じ、目が覚める。

「……痛っ! どうして!? お腹が……」

 何故かは分からないけれど、物凄くお腹が痛い。
 昨日はあのバカ女の部屋に入る為に慣れない料理をして、普段よりもかなり寝る時間が遅くなってしまった。
 なので、夕方まで寝て過ごそうと思ったのに、昼前くらいに目が覚めてしまったようだ。
 とりあえず、寝室として使っていた部屋の近くにあるトイレまで何とか移動し、一体何が原因なのかを考える。

「昨日食べたパンや肉が腐っていたのかしら? それとも野菜? まさかフルーツが原因って事はないわよね?」

 おそらく、キッチンにあった食料は、あのバカ女も食べているはず。
 ……まさか、私に毒を盛る為、予め手に取り易そうな食材に毒を仕込んでいたとか!? だから、昨日は私が作った料理を後で食べると言い、そして自分は予め部屋に用意しておいた、毒を盛っていない食べ物を食したって事!?
 あのバカ女……もしかして、私がアメーニア王国の第四王女だと気付いたとか?
 いえ、あのバカ女が私の変装に気付く訳がない。
 とはいえ、この辺りの真偽も、バカ女の部屋を調べれば分かるはず。
 今は学校で居ないはずだから、今すぐバカ女の部屋へ移動……

「って、どういう事!? トイレから離れられない!? しかも、お腹だけじゃなくて頭も痛い。……やっぱり、これは毒!?」

 出来ない。
 悔しいけれどトイレから離れられず、頭痛もして……もうっ! どうして私がこんな目にっ!?
 一先ず、お腹の具合がマシになったので、ベッドに戻って横になり……

「と、トイレーッ!」

 再びトイレへ。
 それから、またベッドへ行って、トイレに戻ってきて……を繰り返す。
 トイレへ駆け込む頻度が多すぎて、もうパンツとスカートを脱ぎ捨て、下半身を露出させたままベッドとトイレを行き来している。
 ……どうせ、あのバカ女の家だし、このままで良いわ。誰か客が来る訳でも無いだろうし。
 そのまま暫く横になっていると、少しマシになってきた気がするので、何とか一階へ降り、何か薬が置いてないかとリビングを探し回る。
 正直、薬を探すのも辛いのだけど、何かしらの体調を治す手段が無いと、ずっと寝込む事になってしまう。
 大きめの棚を開け、上から順に漁っていると、

「あ、リディア様の所に来られたメイドさんですか? 王宮からのご依頼で、キッチンの食材を補充しておきまし……でぇぇぇっ!?

 背後から商人風の男性の声が聞こえてきた。
 なるほど。食材はバカ女が買いに行っている訳ではなく、王宮御用達の商人が定期的に補充しているのね。
 だったら尚更食材が痛んでいたという可能性が低くなり、バカ女に毒を盛られた可能性が高くなる。

「で、では、私はこれで! あ、あの、私は何も見ておりませんのでっ!」

 しかし、それにしても商人が何故かやけに焦っていたけれど、どうしたのだろうか。
 とりあえず、バカ女に毒を仕込まれる前に、今補充されたばかりの食材を幾つか頂いて……

「って私、下に何も履いていないじゃないっ! ……お尻。あんな男に、私のお尻が見られたぁぁぁっ!」

 自分の姿に絶望し、何も取らずに二階へ逃げ込む。
 結局、ベッドとトイレを往復し、時々気合でキッチンから水とフルーツを手にする生活を五日間近く過ごす事になってしまった。
 私の体調が悪いのも、見知らぬ男にお尻を見られたのも、全部全部ぜーんぶバカ女が悪いんだからっ!
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