精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

文字の大きさ
上 下
25 / 79
第2章 精霊と学校へ通う元聖女

第20話 密着する乙女と騎士

しおりを挟む
「では、宜しくお願いいたします」

 第四騎士隊隊長っていう人の話を聞き終え、後はスコットさんに完成したアクセサリーを渡すだけなんだけど、戻って来ない。

「スコットさんはお忙しいんですね」
「そうですね。ですが、今日の予定ですと、もう戻って来て居てもおかしくないはずなんですが」

 クロードさんと雑談しながら待っていると、

「大変です! スタンピードが発生! 街の南部から魔物の群れが迫ってきており、近くを警備中だった第五騎士隊が街を守るべく準備中との事ですっ!」

 突然大きな声が響き渡る。
 声がした方を見てみると、大きな声で叫んでいたと思われる兵士さん――おそらく、ここまで走ってきたであるろう伝令の人が、ハァハァと肩で息をしていた。

「クロード。行くわよ」
「はい。リディア様……本日は危険ですので、家に帰らず王宮にお泊りになってください」

 ロビンさんに呼ばれたクロードさんが、慌てて駆け出そうとする。
 だけど、ちょっと待って。魔物の群れ? そんなの何度も退けてきたんだから!

「待ってください。クロードさん、私も連れて行ってください」
「いけません、リディア様。貴方にもしもの事があれば、大臣に蝕まれつつあるこの国を立て直す事が出来なくなります。魔物は我々騎士が倒す事が出来ますが、大臣を倒せるのはリディア様だけなのです」
「騎士さんたちだって、その『国』を担う重要な人です。国を立て直すのであれば、その『人』だって守らなければなりません! 私の力は初めてお会いした時にお見せしたはずです。その場で傷を癒す事が出来る者が居ると、負傷者を大幅に減らす事が出来ます」
「それは……ですが、万が一の事を考えると……」
「クロード様! クロード様は私の事を絶対に護ると仰ってくださいました。私はクロード様の傍から離れませんから、ご同行させてください」

 私の言葉でクロードさんが完全に足を止め、少し何かを考えた末、

「……そうですね。確かに、私はリディア様をお護りするとお約束いたしました」
「ん? クロード、何をしているんだ?」
「リディア様。決して、私の傍から離れないでくださいね?」
「おい、クロード。お前、リディア様をお連れする気なのか!?」
「はい、ロビンさん。リディア様は何があっても私が必ずお護り致します。ですから……」
「……いや、お前がそうまで言うなら、何か意味があるんだろ。それより急ぐぞ!」

 ロビンさんを含め、私が同行する事が承諾された。
 騎士さんたちも、街の人たちも、誰一人として怪我人を出させないんだからっ!
 走るロビンさんと、私に合わせて少しだけ遅く走ってくれているクロードさんについて行き、

「リディア様。申し訳ありませんが、急を要するため馬車ではなく、こちらで」
「はい。構いません」

 軍馬に乗せてもらう。
 馬車には何度も乗ってきたけど、馬に直接乗るのは流石に初めて。
 上手く馬を走らせる事が出来るのかと思っていたら、突然誰かが私の背後に乗る。

「では、参ります。リディア様、馬から落ちないように気を付けてください」
「えっ!? クロードさん!?」
「第二騎士隊出撃! 第一騎士隊の後に続き、先行している第五騎士隊と共に街を防衛する!」

 クロードさんの言葉に応じて、後ろの方から地鳴りみたいに大きな掛け声が聞こえてきた。
 いよいよ出発だけど、私は精霊石を用意しておかなきゃ。
 エミリーの力で魔物を退けた後に、魔道士の振りをするために……って、馬……馬の揺れが激しいっ!
 私が馬具から手を放して鞄を漁っていたから悪いんだけど、思いっきり落馬しそうになってしまった。

「リディア様っ! ……失礼。暫しお許しください」

 咄嗟にクロードさんが左腕で支えてくれたから大丈夫だったんだけど、私が危ないと判断したのだろう。
 小手を着けた腕で、思いっきり抱きしめられている。
 手が……クロードさんの手が私の胸にぃぃぃっ!

『いや、クロードは手を鉄製の小手で覆っているし、鎧も身に着けているから、リディアの身体については何にも感じてないと思うよ』
(そ、そうかもしれないけど、鉄板越しでも、お、乙女の胸に触れているし、私の身体と密着しているんだもん)
『……じゃあ、リディアはクロードの手や胸の温もりを感じるの?』
(た、体温は感じないけど、男らしいゴツゴツとした感じは……)
『いや、だからそのゴツゴツは鉄の小手と鎧だってば』

 エミリーに呆れられつつも、クロードさんに支えられ、落馬することなく目的地へと到着した。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。 そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。 ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。 言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。 この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。 3/4 タイトルを変更しました。 旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」 3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です ※小説家になろう様にも掲載しています。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。 そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。 そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。 「エレノア殿、迎えに来ました」 「はあ?」 それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。 果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?! これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。

処理中です...