精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

文字の大きさ
上 下
23 / 79
第2章 精霊と学校へ通う元聖女

第18話 カウンセラー?

しおりを挟む
 ロビンさんのアクセサリーを作るにあたり、最も重要な石が持つ力は決まった。
 デザインは私に任せてくれるそうなので、一旦ロビンさんには職務に戻ってもらい、もう一人の騎士隊長――スコットさんの話を聞く事にする。

「はじめまして、リディア様。僕はエスドレア王国第五騎士隊隊長のスコットと言います。どうぞ、宜しくお願いいたします」
「あ、いえいえ。こちらこそ、宜しくお願いいたしますね」

 スコットさんは男性にしては割と小柄で、私と身長があんまり変わらない。
 見た目は大人しそうな感じだけど、話を聞いてみない事には何とも言えないので、早速……と思った所で、

「あ、あの。申し訳ないのですが、場所を変えていただく事って出来ますか?」
「ん? スコット? どうしたんだ?」
「クロード隊長……いえ、その、何と言いますか……」

 スコットさんが場所を変えて欲しいと言いだした。
 察するに、他の騎士隊長――クロードさんに聞かれたくない程の話だという事だろう。
 つまり、何かしらの短所やコンプレックスを精霊石で補いたいって事ね。

「あ、大丈夫ですよ。クロードさん、プライベートな話もあるでしょうし、どこかのお部屋をお借りする事は出来ますか?」
「リディア様……一先ず、部屋はいくらでもあるので大丈夫ですが……」
「では、そちらへ場所を移しましょう」
「……か、畏まりました」

 急遽クロードさんが用意してくれた部屋に、スコットさんと共に移動する。
 十人くらいが入れそうな広い部屋なのに、机が一つと椅子が二つしかないという変わった部屋だったけど、一先ず机を挟んで座り、早速話を聞く。

「えっと、何か他の人に聞かれたくない話なんですよね?」
「はい。あの……僕が話した内容は、他の人に言わないでくださいね?」
「もちろん、大丈夫ですよ。これでも私は口が堅いですから」

 そう言うと、一先ず安心したのか、スコットさんが口を開く。

「実は僕……騎士隊長に抜擢されたんですけど、その隊が上手くいっていなくて」
「あらら。それは大変ですね。原因は何か分かっているんですか?」
「ハッキリとは分かっていないんですが、思い当たる節は幾つか……」

 どうやら、スコットさんは出世したものの、お仕事が上手くいっていないそうで、最年少で隊長になったから妬まれているんじゃないかとか、自分の評価を下げる為にワザと隊員が足を引っ張っているんじゃないかとか。
 だ、大丈夫かな? かなり困っているみたいなんだけど。
 一通り……三十分くらいかな? スコットさんの悩みや愚痴を聞いて、ようやくヒアリングが終わった。

「あの、リディア様! ありがとうございました! リディア様にお話を聞いていただいただけで、心のモヤモヤが晴れたというか、気持ちが軽くなりましたっ!」
「い、いえ。それは良かったですね」
「リディア様、本当にありがとうございます! 貴方は僕にとっての女神です。まるで伝説の聖女様みたいですっ!」
「あ、あはは……そ、そうですか」
「ありがとうございましたっ!」

 スコットさんが何度も私にお礼を言い、晴れやかな表情で部屋を出て行った。

『リディア。なんだか、アクセサリー作りっていうより、カウンセリングみたいだったね』
(あ、エミリーもそう思った? 私も途中から同じ事を思っちゃった)
『ただまぁ、どんな能力を付与すれば良いかは分かったけどね』
(うん、私も。ただ念の為に、裏付けは取っておくけどね)

 エミリーが念の為にと、光の精霊オーちゃんを呼び出し、癒しの光を私に……って、大袈裟だからねっ!?
 ただ話を聞いただけだからっ!
 オーちゃんの力もあって、何事も無かったかのように部屋を出ると、

「リ、リディア様っ! だ、大丈夫ですか!?」

 クロードさんが部屋の前で私を待っていてくれた。

「はい。もちろん大丈夫ですが?」
「そうですか。……すみません。スコットが我が儘を言いまして」
「いえいえ、本当に大丈夫ですから。それより一つ教えて欲しいのですが、スコットさんって優秀な方ですよね?」
「はい。今は十八歳ですが、十七で騎士隊長となったのは最年少記録ですね。あの頃は、最前線で沢山魔物を倒しておりましたから。あの、それが何か……」
「いえ、少し確認したかっただけなんです。ありがとうございます」

 クロードさんは不思議そうにしているけれど、一先ず予想通りだったので、早速アクセサリー作りに取り掛かると言い、家まで送ってもらう事に。
 アクセサリーの材料は全てエスドレア王国持ちなのに、依頼料までもらえてしまうというお仕事……先ずは初仕事をきっちり成功させるんだからっ!
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。 留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。 政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。 家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。 「こんな国、もう知らない!」 そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。 アトリアは弱いながらも治癒の力がある。 子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。 それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。 「ぜひ我が国へ来てほしい」 男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。 「……ん!?」

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

処理中です...