精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

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第1章 精霊と共に追放された元聖女

第7話 シャルロット様

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 クロードさんに詳しい話を聞くと、どうやら二人の住むエスドレア王国には、ドワーフ族という鉱山に住む種族が多く居るらしい。
 以前はドワーフ族が掘り出した力の石を適正価格で買い取り、ドワーフ族も文句なんて無かったそうなんだけど、今は石の力を鑑定出来る人が一人しか居ないそうだ。

「その人物が信頼出来る人なら良かったのですが、ちょっと色々と問題のある人でして……」
「そうなんですか?」
「はい。大半の石を、精霊の力だが宿った物ではなく、ただの綺麗な石だとして安く買い叩いておりまして」
「あー、それでドワーフ族が怒っていると?」
「そういう事です。リディア様には、是非シャルロット様仕えの鑑定士として、石を見ていただけないかと」

 えっと、つまり貴族令嬢であるシャルロットちゃんのお家で働くって事かな?
 別に目的がある訳ではなくて、とりあえずエミリーに教えてもらった商売に向いているという西の国へ行こう……っていうくらいだから、まぁその目的地が変わるくらいなので、別に行くのは問題ない。
 だけど、せっかくなので、聖女みたいな扱いではなくて、普通の女の子みたいな暮らしがしてみたいんだけど、ダメだろうか。

「あの、困っているみたいですし、行くのは構わないのですが、鑑定以外にも何かお仕事があったりするんですか?」
「いえ、特にはありませんよ。お住まいや食事は、用意されるはずですので、普段はお好きな事――例えば、そのアクセサリーを作って、売ったりするのも良いかと」
「本当ですかっ!? それは凄く助かります!」
「おぉっ! 来ていただけるのですね!? リディア様が来ていただけるのであれば、これは王もさぞかしお喜びになる事でしょう!」

 シャルロットちゃんからも改めてお願いされ、一先ず街へと戻り、エスドレア王国行きの馬車を調達する事になった。
 ちなみに、昨晩二人が野盗に襲われたのは、事情があって人目に付かない内に国へ帰りたかったからだとか。
 この辺りに野盗が出る事を知らず(私も知らなかったけど)、護衛も雇っていなかった為に、逃げる羽目になってしまったそうだ。

「ですが、昨晩とは事情が一変いたしました。今日は護衛をしっかりつけ、明るい内に移動いたしましょう」
「あの、事情が変わったって、昨日から今日にかけて何かあったんですか?」
「えぇ、凄い事がありました。リディア様という素晴らしい魔道士に会えた事です」
「え? 私、そんなに大した事は……」
「こちらの魔導具が我が国よりも進んでいる。確かにそれだけの事なのかもしれませんが、それでも我々が昨日一日掛けて出来なかった事をリディア様がやってくれた。これが我々にとっての事実なのですよ」

 何だろう。ものすごく持ち上げられているけど、本当に何もしていないよ?
 ディーネちゃんの力で怪我を治したくらいなんだけどな。

「では、昨晩の事や、我が国の詳しい事については馬車の中でお話いたしますね。一先ず今は、優れた馬車と信頼出来る護衛を探しましょう」

 一先ず馬車は御者付きでレンタル……と思ったら、お買い上げ!?
 流石に御者は購入ではないけれど、クロードさんが十人くらい乗れそうな大きな馬車と馬を購入していた。
 それから冒険者ギルドへ行き、Aランクの冒険者パーティを護衛として雇った……って、Aランクの冒険者をパーティ丸ごと!? 詳しい事は知らないけれど、それって凄く高いんじゃないのかな!?
 Aランク冒険者は、一人雇うだけでも、一日に金貨数枚が要るとか要らないとかって話を聞いたんだけど。

「では、エスドレア王国へ向けて出発いたしましょう」

 ここからエスドレア王国までは、何も起こらなければ、夜には到着出来るそうだ。
 御者のオジサンが二頭の馬を歩かせ、私たちが乗る馬車の周りを六人の冒険者たちが囲みながら進んで行く。
 流石にこんな馬車を襲う人なんて居ないだろうと思っていると、

「リディア様。先ほどのご質問についてお答えいたします」

 クロードさんが声を落として話しだす。

「すみません。実は事情があり、現在エスドレア王国では二つの派閥が争っております」
「派閥?」
「はい。一つは、先ほど申し上げた、国内唯一の石の鑑定士――大臣のメリアをトップとする派閥。もう一つが、シャルロット王女様をトップとする派閥なのです」
「そうなんですね……って、シャルロット王女?」
「すみません。身分を偽っておりましたが、こちらのシャルロット様はエスドレア王国現国王の実の娘であり、私はエスドレア王国騎士団の第二隊隊長なのです」
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