精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人

文字の大きさ
上 下
6 / 79
第1章 精霊と共に追放された元聖女

挿話2 聖女を追い出した第四王女ユフィ

しおりを挟む
 あの精霊が見えるかどうかと変な事を聞いてくるお父様の妾を追い出し、この広い離宮を手に入れたものの、ここに仕えているはずのメイドが誰も挨拶に来ない。
 これだけ広い離宮なのだから、最低でも四人はメイドが居るはずだ。
 それなのに、

「誰か出てきなさいよっ! 居るんでしょっ! 今日からこの私、第四王女ユフィ=アメーニアが聖女になったの! 投獄されたくなければ、今すぐ出て来なさいっ!」

 私はこの国の王女なのよ!? これ以上待たせるようなら、ここのメイドも全員クビにして、総入れ替えにしてやろうかしら。
 しかし、これだけ言っているのに誰も出てこない。
 もしかして、私の言葉をハッタリだと思っているのかしら。
 だけど、メイドの一人や二人、いえ一束くらい私の一声でクビに出来るし、投獄する理由なんていくらでも作れる。
 私はこの国の王女であり、生まれながらにして平民とは身分が違うの。
 私が黒だと言えば、白でも黒になるんだから!

「……本当に誰も出て来ないのね!? 分かったわ。お望み通り、ここに仕えるメイドは、全員国家反逆罪として投獄よっ! 後悔なら檻の中でするのねっ!」

 流石にメイドが誰も居なければ、私の荷物を王宮からここへ運べないし、あの妾とお父様が寝ていたベッドで寝るなんて、死んでも嫌!
 今日は大人しく元の部屋に戻ってあげるけど、覚えてなさい! 明日の朝一でお父様に言って……いえ、お父様の妾を追放した事は、まだ言わない方が良いわね。
 誰か適当に騎士か兵士を見繕って、ここのメイドたちを牢へぶち込んでやるんだからっ!

 イライラしながら王宮の自分の部屋へ戻り、

「バカメイドッ! 私の荷物を纏めなさい! バカメイドッ!」

 バカメイドを呼びつけるが現れない。
 またサボっているのね!? まったく、ホント使えないんだからっ!
 せっかく聖女という肩書を手に入れたのに、どうしてこうも上手く行かないのかしら。

「あ! そこのアンタ! 私の所のバカメイドを見てない!?」
「……あ、あのユフィ様。彼女は、先ほどお暇を出されたのでは……」

 そうだった。さっきクビにしたわね。
 という事は、明日まで待ってなんて居られないわ! 今すぐメイドが必要だもの。

「じゃあ、アンタで良いわ。あのバカメイドの代わりに来なさい。私の荷物を片付けて」
「ユフィ様。ですが、私は第三王女セリス様付きのメイドです。勝手に別の仕事をする訳には……」
「セリス姉様には私から言っておくわよっ! だから、アンタはさっさと荷物を片付けるのよ」
「は、はい……」

 どいつもこいつも仕事が遅いんだから。
 セリスの仕事? 知らないわよ、そんなの。
 適当に見つけたメイドを部屋に連れて行くと、

「この部屋の荷物を纏めておいて。明日、別の部屋に移るから」
「はぁ……わかりました」
「じゃ、頼んだわよ。私は食事をして、そのままお風呂へ行くから。それまでに終わらせておいてね」
「は!? ユフィ様!? いくらなんでもそれは、時間が足りません」
「知らないわよ。とにかくやっといてね。貴方も、クビにはなりたくないでしょう?」
「……」

 メイドに仕事を指示して食堂へ移動すると、珍しく第三王子のケヴィンお兄様が居た。
 今は騎士団の隊長を任されているし、格好良いし、人望もあってメイドからも人気なので、新しい聖女になったとアピールしておこう。
 ケヴィンお兄様から見て、もう一人の妹となるセリスよりも、私の方が優秀で可愛いと。

「ケヴィンお兄様。お久しぶりです」
「おぉ、ユフィじゃないか。最近は騎士団が忙しくてあまり話せなかったが、元気か?」
「はい! ところで、ケヴィンお兄様。聖女ってご存じですか? 実は私、今日……」
「お! 勉強嫌いユフィも王国史の授業で聖女について習ったのか。彼女は凄いよな。たった一人で魔物から国を守っているんだから」
「え? ケヴィンお兄様? 一体何を……」
「だから、聖女リディア様の話だろ? 数年前に精霊の加護を受けてから、国内を巡って魔物を封印していて、しかも護衛やメイドを付けると言うと、その費用を貧しい人々の為に使って欲しいって断る……いや、まさに聖女に相応しい女性だよな」

 あ、あれ? ケヴィンお兄様ともあろう聡明な方が、一体何を仰っているの!?
 精霊の加護!? 何を言っているの!? それに魔物!? 魔物って何なの!?

「で、でも、聖女には凄い費用が掛かっているのでは!?」
「あぁ、魔物を封印するための大きな精霊石が高額だからな。小さい物なら大した事は無いんだが、大きな物は中々採掘されないし、どうしても高くなってしまうみたいだ。これにはリディア様も悩んでいて、少しでも費用を抑えるために、街にある貸家に住むとか言い出した事もあるらしいぞ。大臣たちが説得して、離れに住んでもらう事にはなったらしいけどな」
「……で、でも、精霊の力だなんて……」
「あー、そうか。ユフィは見た事がないんだよな。前はそこら中に魔物が居たんだけど、リディア様の力で街の近くへ来れなくしてくれたんだ。魔物を追い払う所を目の当たりにしたけど、今あの力がなくなったら、国がひっくり返る程の大パニックになるね」

 あ、あれ? え、えっと……もしかして、あの女……本物なのっ!?
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

王子からの縁談の話が来たのですが、双子の妹が私に成りすまして王子に会いに行きました。しかしその結果……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、エマ・ローリンズは、縁談の話を聞いて喜んでいた。 相手はなんと、この国の第三王子であるウィリアム・ガーヴィー様である。 思わぬ縁談だったけれど、本当に嬉しかった。 しかし、その喜びは、すぐに消え失せた。 それは、私の双子の妹であるヘレン・ローリンズのせいだ。 彼女と、彼女を溺愛している両親は、ヘレンこそが、ウィリアム王子にふさわしいと言い出し、とんでもない手段に出るのだった。 それは、妹のヘレンが私に成りすまして、王子に近づくというものだった。 私たちはそっくりの双子だから、確かに見た目で判断するのは難しい。 でも、そんなバカなこと、成功するはずがないがないと思っていた。 しかし、ヘレンは王宮に招かれ、幸せな生活を送り始めた。 一方、私は王子を騙そうとした罪で捕らえられてしまう。 すべて、ヘレンと両親の思惑通りに事が進んでいた。 しかし、そんなヘレンの幸せは、いつまでも続くことはなかった。 彼女は幸せの始まりだと思っていたようだけれど、それは地獄の始まりなのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。 留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。 政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。 家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。 「こんな国、もう知らない!」 そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。 アトリアは弱いながらも治癒の力がある。 子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。 それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。 「ぜひ我が国へ来てほしい」 男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。 「……ん!?」

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました

サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。 「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」 やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――

処理中です...