手の中の小鳥

藍色綿菓子

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青くて目がない

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 明日の授業の為にこなさなくてはならない予習を、机の上に広げて暫く。どうにもやる気が起きなくて、ペンを持ったまま何を考えるでもなく頬杖をついていた。すると弱く羽音が聞こえてきて、軽い調子の鳴き声と共に左手がつつかれる。手の力を抜けば、いそいそと手の中に潜り込んできた。いつからか定位置にされてしまったようで、よく手の中にいる、青い鳥。
 親指の腹で背の辺りをくりくりと撫でてやり、その温もりを感じながら予習に取り掛かる。窓の外から風の音がする。

 道行く人の半数は何かを連れて歩いているが、それに気付いている様子の人はまだ見ていない。学校へ向かう途中、朝の駅はそれは賑やかで、よく見かけるサラリーマンが今日も巨大な象を電車に乗せていた。綺麗な服を着た女の人の足に、長い尾を持つ白猫がしゃなりと身を寄せているのを見た。
 象がどうやって扉を抜けて中へ乗り込むのか、どのように収まっているのかよくわからないまま電車は出発する。足元の猫に目もくれず歩くお姉さんは、不思議なことに一度も猫を蹴り飛ばしてはいない。学校でも約半数の人は何かを連れていて、その誰もが何も無いように振舞っていた。私は目の前の佐藤の孔雀が邪魔で、黒板が見えない。

 学校帰りに少し寄り道をすることがある。道を少し外れると、ほぼ人のいない寂れた公園がある。中にある自販機の、食べる炭酸チョコレート味が目当てで、よく買って飲んではくつろいでいる。その自販機は公園の入り口から見えない奥の辺りにあるので、今日は人がいるのに気付くのに遅れた。目が合った今としては、逃げるように後戻りするのは失礼な気がして出来ない。自販機横の粗末なベンチに腰掛ける、目つきの悪いお兄さんが、私をやけに見ているようなのが居心地悪い。片手で小鳥を無意識に鷲掴みながら、缶を購入して足早にその場を立ち去った。
 ところが背後に鴉の鳴き声が一つ。ちらと目をやると、彼の手がその鴉の背を撫でるように動いていた。偶然かもしれない。一瞬立ち止まった私は、思い切り不審そうな目を向けられて、心が耐えられなくなり向き直った。
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