チルアカ前日譚

藍色綿菓子

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そして本編へ(リョナあり)

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 領主様が力の入らない私の手指を無理矢理支えてぐじゅぐじゅする。触ると自然と体液は分泌される。時々いやだと言うが、聞こえてないのか、無視されている。時々私の体が跳ねる。そして少し痛む。指を奥まで入れられると、やっぱり痛い。
「ぃた……い……」
「あはは、自分の指じゃないからわかりにくいけど。多分この辺り? 膜があるのは」
 こつこつ、と指が触るのが痛い。身悶えして位置を変えようとしたが、追いかけてきてずっとこつこつされる。もう嫌だ。掴まれている腕と逆の腕で、顔を覆う。
「まあせっかくの処女喪失ということなので、今日を特別な日にしてあげよう」
 強い力で掴まれていた腕が放された。力なく膣から指を引き抜く。ずる、と手が落ちる。
 領主様に髪を肘で踏まれた。う、と諦めの吐息が
もれる。
 戻ってきた領主様は私の髪をまるで引き抜くみたいに引っ張り上げて、「痛みは?」と聞いた。
「痛いです……」
「そう。良かった」
 髪を放される。
「苦悩の梨っていう物があってね」
 領主様は私に銀色の器具を見せた。金具を操作すると、梨のように変形する器具。変形する前は小さいが、変形した後の姿は凶悪に膨らんで見える。
「使ってみるのが一番早いか」
「いや、えっ、何」
 領主様は小さくした器具を私の秘所にあてがった。今までタンポンくらいしか受け入れてこなかったのに、金属の冷たい器具が肉を割って入ってくる。うぐ、と苦しい声が漏れる。
「いやだ、いゃだ……」
「まだそんなに痛くはないだろう?」
 今は痛くない。今は。あれが梨のように開いたら、痛いはずだ。それが嫌なんだ。器具は中に収まる。領主様は私の額を掴んで私の顔を見た。目が合う。目が合うと微笑まれる。少し首をかしげている。器具が開かれるのを痛覚が伝えた。
「いっ!? 痛い痛い痛い! 嫌です、やめて! 痛い! 嫌だってばぁ!」
 眉間に皺を寄せて泣き叫んだ。閉じていた目を開いてみると、うっとりしたように領主様が見ていた。少し顔が赤らんでいる。自分が自分じゃないかのような気がする。腰の骨が歪むのでは、と思うほどに膣が痛い。器具が中を無理矢理変形させている。自然と足を大きく開いた。だけど痛みは変わらない。
「……で、そう、こうなる器具なんだけど……流石に開ききったら裂けそうだ」
 まだ開ききってなかったの、それでこんなに痛いの、と驚愕した。領主様は器具の収まった私の体内を覗き込んでいる。
「うん、処女膜見えた。膜に触れるくらいのところで、梨が止まってるから、まだ処女と言えるだろう。膜を傷付けたものが初めての相手なら、君の初めての相手は梨になるのかな」
 もうどうだっていい。ただただ自身が弄ばれている。こんなことをして、神様というやつは正当な罰をきちんと与えてくださるだろうか。それとも私が、罰されるような何かをしたのだろうか。
「で、そう、これ金属だから、熱を伝えやすいんだ。初めての相手は梨か、熱か、どっちになるんだろうね?」
「ちょっと待って、どうでもよくない。熱って? 熱って何? 熱いの? なんで? これが? 待ってやめて怖いから、ほんと怖いからごめんなさいごめんなさい……嫌だ! やめて! 痛い! 痛い!」
 領主様は弱々しく暴れる私を片手で押さえて、もう片方の手はずっと梨に触れていた。梨が熱い。こんなに痛い。体内が壊れる、体内がグズグズに壊される。肉が溶け落ちるように痛い。目を剥きだして私は暴れた。それでも手足は鈍重な動きをする。
「……意外とすぐに焼けたね。おめでとう、君は今処女じゃ無くなった。肉の焼ける匂いは食欲をそそる……」
 涙も鼻水も分泌されてるし、なんなら口からも涎が垂れていた。顔から出る物全部出た。領主様は膨らんだままの梨を強引に引き抜く。ぎゃあ、と声が出た。先端部分が熱されたように赤くなっていた。私は、体の痛みを脳味噌が許容しかねて、いっそ混乱していた。
「まだ遊んでいるだけだ、そんな顔するな。大人の時間はこれからだよ」
 領主様はとても暗い顔で笑っていて、だけど暗いのは私の目の方だったみたいで、上から視界が落ちてきた。もうだめグラグラになって死んでしまいたい。死んではいけない。死んじゃだめだ。死んじゃだめだ、いつか家に帰るんだ。
「…………」
 領主様が何か話しかけている気がしたけど、意識が遠くて聞き取れなかった。目を閉じて少し休憩する。足を抱えられる。何か硬いものが傷口に押し当てられた。ズル、と、焼けた粘膜が剥がれて引きずられる感触がして、また泣き叫んだ。動物のような泣き声だった。
「どうしてこんなことをするのですか」
 というような旨の言葉を吐き出した。
「どうしてそんなに可愛いことを言うの?」
 血の匂いがする。体が痛い。何度も肉を噛みちぎろうとしてくる領主様の口を閉じさせるのに苦心した。生きて帰る。生きて帰ってみせる。

 気付けば私はベッドに寝かされていて、治療されていた。久々のあの部屋からの帰還者として、手厚く何人もの獣人や魔人が私の体のために動いていた。体中が痛くて、不思議な匂いがした。数々の薬草の匂いなのだと思う。
 ちょうど部屋の入り口に、背の高い銀髪が私を見ていた。こちらに笑いかけて手を振っている。
 心の中で中指を立てながら、手を振り返してすぐ力尽きた。死んでたまるか。絶対に生き抜いてみせるからな。
 その気持ちを忘れず大切に持ち続けていたら、いつの間にか領主様と過ごす時間が増えていた。ただの気まぐれだろうと私は祈っていた。
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