ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,431 / 2,518

第2432話 世知辛い

しおりを挟む
 冒険者の1人が、夜に急に動き出したこと以外、特に問題もなく朝を迎えた。途中で、俺と綾乃が入れ替わったが、それだけだな。

 朝食もしっかりと食べてから街を出発し、俺たちの上を通って門を抜けていった。ダンジョンのある方へ進むかと思ったが、先に襲われた街を見てから、ダンジョンに向かうとのことだ。

 街を襲った人間たちは大半を捕まえたが、街には何かしらの情報が残っているかもしれないということらしい。

 今回対応したのが俺たちでなければ、その判断は正しいんだけど、今回は根こそぎ捕まえて情報を引き出して、重要なことは大体伝えたから、既知の情報以外残っていないと思うぞ。

 1つあるとすれば、連れていかなかった人間たちの虐殺現場を見ることになるだけだろうな。あれだけは情報だけでは、どういったものか伝わらないからな。

「街に寄ってからってことは、俺たちがゆっくり休める時間が遅くなるってことだな。だからと言って、レイリーに行っても何もないですよ、と言わせても何の信憑性もないからな。本を読みながらのんびり監視しますかね」

「今日中にダンジョンの前には辿り着くでしょうから、誤差の範囲でしょ。どうせなら、あの虐殺現場を目の当たりにして、一気に突っ込んでいって勇者とダンジョンマスターを倒してくれればいいんだけどね」

 綾乃にしては、少し過激な発言な気がするが、何かあったのかね。あの現場は確かに何とも言い難いけど、地球の歴史を振り返れば、もっとひどい事がゴロゴロ転がっているからな……綾乃も直接は見ていないけど、実際に起きたことを聞くのと、過去の事を知るのでは、話が違うのかもな。

 冒険者たちは、相変わらずハイペースな移動だな。下手に馬なんかを使うより、よっぽど早く移動している気がするわ。

「そういえば、街の方のカメラって全部回収したっけ?」

「一応したと思うでござるが……あれ? してないでござるね。早めに回収した方がいいでござるか?」

「回収はしたいけど、別に急ぐ必要もないんだよな。どうせ俺たち以外に使えないし、盗まれたところで俺の懐以外が痛まないからな。どうせなら、そのカメラを使って、冒険者たちの様子でも見て見よう」

 10分もすれば到着するかな? と思っている位置から、みんなで注目を始めた。

「もう少ししたら、カメラであいつらの移動が見れるかな? 望遠カメラも設置しといてよかったわ。多分だけど、5キロメートルくらい先までなら、かなりくっくり見えるよな。天文台とかに使われている望遠鏡ならもっと綺麗に見えるのかね?」

「あれって、そもそも大きすぎるから、地上見るのには適してないんじゃない? それに、空気が綺麗な所に作られるって言うから、街中なんかには作らないでしょ」

「遠くまで見えているでござるから、それでいいでござるよ。地球のカメラも、その内このくらいまで性能が上がるのでござろうな。ここまで望遠できて喜ぶのは、近付いて写真をとれない被写体を撮る人か、盗撮するクソ野郎でござるよ」

「写真家と犯罪者を同列にするな。写真家に失礼だろ」

 後いえば、軍事関係なら……

「あれ? カメラで思い出したけど、軍事衛星って地上にいる人間が上を向いていれば、表情まで分かるんじゃなかったっけ?」

「まだカメラの話をつづけるでござるか? そんなこと話している内に、到着してしまうでござるよ」

 適当なことを話していたら、いつの間にかカメラに映る位置まで来ていた。

「俺たちでもできる動きとはいえ、地球にいた時の常識で考えると、ありえない速さだよな……なんだこの速度! って言いたくなる奴だな」

「そうでござるな~。時速60キロメートルは超えているでござるから、道を走っている車より早い速度で、森の中を走っているでござるよ。オフロードバイクで走ったとしても、あそこまで速く森の中は針れないでござるな」

 認識速度も上がっているのだろう。だからこそ気にぶつからずに、高速で移動を続けられるのだと思う。実際に俺たちもあの動きは出来るが、客観的に見るとあの動きも大概おかしく見えるな。

「この冒険者たちは、この街でどう動いて何を思うのでしょうね」

「この世界でも城壁が無かったり低かったりする村なんかは、時々住人がいなくなることはあるけど、城壁のある街から住人がいなくなることは、ほとんどないからな。何を考えるんだろうな」

「どうせなら、収音機も置いておけばよかったわね。そうすれば、何を話しているか聞こえたかもしれないのに」

 そうこうしている内に、街の門へたどり着いた。開け放たれており、自由に出入りできる状態だ。近くに盗賊らしき集団はいたのだが、先日の俺たちが捕らえた敵が、集団で移動したからか、元々いた場所より街から離れた位置にいて、街の事は知らなかったようだな。

 後10日もあれば異変に気付けただろうが……って、冒険者たちが離れて誰もいなくなれば、その内気付くか? そしたら、盗賊の根城になる可能性があるか? だったとしても、俺たちの責任じゃないし、多少盗賊が集まった程度なら、騎士団を派遣すれば大体は片付くはずだ。

「おっ? 城壁に登って、街の様子を見ているな。生きている人間は誰一人いないから、まさしくゴーストタウンだよな」

「今度は分かれて、街の中でも探すのでござろうか?」

 城壁に登った冒険者たちが、指をさしてお互いが行くべき場所を確認した後、別々に行動を開始した。

 3人で別々の冒険者をフォーカスし、見える範囲で何をするのかを見届けた。



「まさか、街に行った理由が、残りの物を漁るためだったとはね。強制依頼で大した金も出ないから、補充のつもりかね? 斥候の1人が街を歩き回ったのって、物色できるモノがないか探してたってことだったりしねえよな?」

「あり得るでござるな。見えるところでは、冒険者ギルドに相応しい冒険者として振舞っていたでござるが、見えない所ではあくどい事もしていた可能性はあるでござるな」

「国際法上では、破棄された街は誰のものでもないからって、荷物を荒らすとなれば、盗賊みたいなものだと思うけどな」

「そうはいうけど、考えてみたら、シュウは使いきれないほどのお金を持っているから、言えることなんじゃない? SSランク冒険者でも、金がない人はいるでしょ。無駄遣いかギャンブルか女か、分からないけどたまらない人だっているわよ。だから、こういった小銭稼ぎもしてるんじゃない?」

 言われてみれば、お金に困ったことはないから、街に残っている物をわざわざ拾おうとは思わなかったな。

「ほとんど持ち出されてて、建物に八つ当たりするのはいただけないでござる。あれで、結構な数の家が倒壊したでござるよ」

 SSランク冒険者と聞いていたが、こいつらのとる行動を見ると、なんか小悪党にしか見えなくなってきた。本当にこんな奴らで大丈夫なのだろうか?

 先日建てたフラグを回収するまで、後3日……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...