ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2394話 街を守る計画

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 時間前にはグリエルとガリアが会議室へきており、どんな話をするか気になっている様子だった。昨日の今日で呼び出しがあれば、どんな内容なのか気になって当たり前だろう。

 しかも元々呼び出したのが俺ではなく、妻であるイリスとネルなのだから、いつもと違うのではないか? と考えている節もあるようだな。

「本当ならレイリーも呼んでおきたかったけど、レイリーは今回の勇者の件に関して全面的に任せることになったから、忙しいだろうから決まったことを伝えることにしている」

「えっと……レイリーに任せることなのに、レイリーを呼ばないのはまずいのではないでしょうか?」

 グリエルの疑問はもっともだが、

「勇者の対応についてはレイリーに任せるから、そこの部分には口は出さないよ。俺が口を出すのは、勇者たちへの対応ではなく、街に対する備え……みたいなものかな。戦争になるかはわからないけど、戦争はレイリーの領分、俺は街を守るために全力を尽くす、そういうことだな」

 グリエルとガリアは納得したようで、しきりに頷いている。

「そういうことでしたか。対勇者の戦闘をレイリーに任せているのであれば、街の守りは別の者が行うべきですね。それがシュウ様ということですか」

「戦争による軍人の犠牲は理解して覚悟を決めたつもりだ。だけど、軍人以外の被害を出すつもりはない。戦争となれば、無法をするものだって出てくるだろう。うちの軍には、そんな奴はいないと思いたいが、相手にそれを求めるのは無理だろ?」

 戦争となれば良心の呵責なんてなく、自分たちの欲を満たす者たちが絶対に出てくる。戦争に勝ったとしても、戦場から逃げ出した者たちが近くの街で……ということはよくなる話だ。そんなことを許さないためにも、まずは自分たちの街を絶対に守りきる。

 そのうえでこちらに問題が起きないのであれば、周辺の街へも気にかける必要があるだろう。

 普通の軍隊であれば、負けた軍にそこまでの戦力はないが、今回は勇者が中心となった少数精鋭部隊がいる。その部隊から逃げ出すものが1人でもいたら、街の常備戦力では話にならならないだろう。

 対人戦でもSランク冒険者相当の力はあるので、人によっては城壁などあってないようなものだしな。それにSランク相当のステータスがあるのであれば、城壁を乗り越えて街に入るだって難しくないだろう。

 要は、強すぎる相手が逃げた場合、問題が必ず起きるのでそれを対策しておく必要があるということだ。

「それで、どうなさるのですか? シュウ様自身は前線に出ることはできませんし、ドッペルの体では勝敗がわからないですよね? 勇者の持っているダンジョンマスターの特攻は、レベル差を簡単に覆してしまうのですよね? どうなさるんですか?」

 生身で戦えばレベル差では覆せないくらい離れているが、それをすれば絶対に家から出られなくなるので、その選択肢はない。ドッペルでは、生身よりだいぶパフォーマンスが落ちるので、その差を埋めきれなければ勝てないくらいには相手が強いと予想している。

 そうなるととれる方法は、今量産を急がせている人造ゴーレムが主力になる。そのサポートとして、バザールの指揮するS級スケルトンを援護に出すつもりだ。

 魔物であるS級スケルトンは、勇者の特攻と相性はよくないが使いつぶせる戦力として、常に作り続けているので最悪全部なくなったとしても問題ない。

 リバイアサンのめぐちゃんとシリウス君に最終防衛ラインを任せるので、少なくとも街中での被害はゼロになる予定だ。街の外となると、監視の目をスプリガンたちに頼むことになり、連絡の遅れでもしものことがあると考えている。

「監視の目は多くても問題ないと思っているから、別の手段を用意しようと思っている。ダゴンを追加で召喚して、水を操る能力を使って有効範囲内に雨を降らせて、その雨を使って索敵をしてもらおうと思う」

 まだ検証できていないが、リバイアサンたちほど広い範囲をカバーすることはできないだろうが、それは数で補うつもりなので、おそらく問題ないと思う。

 言い方は悪いが、ダゴンも使い捨てられる戦力の1つなので、遠慮なしに投入するつもりだ。おそらく水を使った索敵なら、俺たちをはるかにしのぐ範囲をカバーできるので、今回のような作戦ではもってこいだと思う。

 ここの戦闘能力は高くない分、水を使った能力が高いので、それでSランク判定を受けている魔物だ。

 水が有効に活用できる場面であれば、格上も食い殺せるくらいに、能力に全振りしている珍しい魔物だと思う。

 使いつぶせるからと言って、むやみやたらに殺させるつもりはない。

 ダゴンたちが通れるように、地下にはダンジョンの水路が張り巡らせるつもりだし、地上へ出なくても穴をあけて地上へ干渉できるようにもするつもりだ。

 万が一ダンジョンに勇者たちが入ってきても、水で満たされているので、戦わずに遠くから見ているだけで戦う必要もないだろう。水流を作って寄せ付けないだけで、相手が勝手に自滅してくれるという判断だ。

 昨日の今日で、こんなことを思いついたわけではない。綾乃とバザールと暇なときに色々な可能性を考えて話し合った内容の1つを、少しアレンジして使っているだけなので、今思いついたものではない。

 ほかにもいろいろな想定をして、状況に合わせて何ができるかを検討したものがあるのだが、今回は出番なしということで、封印を解いていない。

 ダゴンのお供にサハギンを多めに召喚する予定だ。

 サハギンたちは、戦力というよりは、逃げたことを想定した勇者の仲間に対する餌みたいなものだ。がむしゃらに逃げた場合、お金になるようなものはほとんど持っていないだろう。装備をお金にかえる方法もあるが、確実に足元をみられるだろう。

 装備がなくなれば身の危険が高くなるから、換金アイテムとしてサハギンを倒して、ドロップアイテムを回収する……くらいはするだろう。人間に手を出させないための対策の1つだが、無条件に人を襲うようなタイプなら無意味になるだろう。

「色々な意見がよく出てくると思いますが、それは置いておきましょう。一番近くの街とその周辺を中心に配置するということですよね? 王国へはどうするのですか?」

「一応、知らせておいてやれ。内容は、勇者がいる街が周りに戦争を仕掛けそうだとでもいえば、向こうで勝手に調べるだろう。今回は王国側で俺たちの街が一番近いから、狙われるならフレデリクからだろう。その前に小国のどこかを攻めるだろうから、時間の余裕はあるだろうしな」

 王国は王国で頑張ってもらおう。おそらく、対人戦はあまり得意ではないだろうから、あれから強くなった深紅の騎士団もいるし、再編した奴隷兵の代わりもいるみたいだから、そいつらを派遣すれば何とかなるんだろう。
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