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第2383話 下っ端の切実な悩み
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工房に呼んで評価してもらう訳にはいかなかったので、ひとまず1セット分の馬車3つを繋げたモノを準備して、レイリーたちの元へ運ぶことにした。
呼ぶわけにはいかなかったのは、別の地で任務についている軍人に、組織のトップとはいえ任務を放棄してこっちに来いということは出来ないからだ。それに、俺ならゲートが無条件に使えるから、俺から出向くのが筋ってもんだろう。
「というわけで、試作品として完成した馬車を持ってきたから、習熟訓練とでも言って、2つの評価を暫定的でいいからつけてほしいので、待機や休みじゃない人たちを60人ほど呼んでもらっていいかな?」
「また突然ですね……30分もすれば昼食になるので、訓練組がそろそろ戻ってきますが、汗をかいたりしている状態でも、問題ないですか?」
「気にしないでいいさ。まだ試作品だから拙い所が沢山あるからな。汗をかいた状態で入ると、匂いがこもるのか、みたいなことの実験になっていいかもな」
訓練組が戻ってくるまでに、レイリーに簡単に今回の違いについて説明した。
「席の数で悩んでいるということですか……10人も12人もかなり贅沢な馬車の使い方になりますので、文句は出ませんと思いますが、何を比べればいいのですか?」
「見てわかる通り、10人の方は横を気にせずにゆったりできるけど、12人の方に比べると席の間隔が狭い。12人の方から見れば、10人の方より足を自由にできるスペースが広いけど、横に人がいるのでゆっくりできるかどうかって感じだな」
「今の馬車は、荷物の箱を使ったりして座ったりしますが、椅子と呼べるものはありませんし、基本はみっちり乗るのでどちらでも、天国みたいなものだと思いますね。箱馬車なので、空調が気になるくらいですかね?」
空調に関しては、魔道具を採用してもいいと考えていたのだが、用意する数が厳しい事になるので、10人に1人の割合で氷魔法を使えるように訓練するのはどうかという提案をしている。
「魔法を使える人間が増えれば、戦術の幅が広がるのでありがたいですね。訓練の一部として組み込む形でもよろしいですか?」
ってか、今まで魔法を訓練に取り入れてなかったんだな。覚えるのに時間がかかるし、剣術とかと違って魔法スキルを得られなければ、訓練すらできないからな……それで、相性が悪いと覚えられなかったりするのが魔法なので、そんなことに時間を割くなら剣の訓練の方が有用的だと言われた。
この世界は、種族によって得手不得手は無いのは、昔から分かっていたことだが、実は環境要因で得手不得手が存在することが、最近の研究結果で分かってきている。
この世界の人たちが、種族特性だと思っていたことが、実は環境要因によるものだったということだ。
エルフは、森と生きるので精霊と相性がいい、みたいに思われているが、生活している場所と生活様式がマッチして、精霊を使えるようになるということだ。エルフ以外の種族でも、エルフと同じように生まれた時から同じ生活をしていると、精霊と相性が良くなる。
探してみると、実際に似たような事例がいくつもあったので、たどり着いた結論だったりする。
ドワーフだけは、何故か肉体的な特徴があるため、確定寄りの仮説として俺たちの共通認識になっている。
「とりあえず、希望者全員に訓練をさせてみて、才能が有りそうな人間だけを抽出する方向でいいんじゃないか?」
「強制させないでいいのでござるか?」
「いくら軍とはいえ、内心やりたくないと思っている魔法を無理やりって言う話になるなら、士気や意欲に関わってくるから、やらない方がいいだろう。それでもダンジョンの中で訓練するなら、参加者が半分だったとしても、10人に1人割合は確保できると思うぞ」
綾乃は興味なしと言わんばかりに、副官の2人に中を説明していた。バザールは、軍人なんだから強制すればいいんじゃないか? みたいなことを言っている。
自分の意思で参加した場合と、強制された場合では、取り組み方に差が出ると感じたので、こういった提案をしている。
レイリーも納得したようで、文言を考えて訓練を実施してみることにすると言っていた。
訓練組がやってきたので、そのまま馬車の中へ入ってもらう。一応空気が流れるように窓は作っているが、涼しいかと言われれば微妙な感じだ。
今回レイリーに提案した、氷魔法を使って空間を冷やしてあげると、歓声が上がった。訓練をした後だから、涼しいのが心地よかったのだろう。思わず歓声を上げてしまう気持ちも分かる。
昼食前まで馬車を走らせたりして、試作品を体験してもらった。
評価は、どちらも今までの馬車の何倍も良いものだとの事だ。2つを比べた場合、どちらがいいかと聞かれれば、10人の方が横の事を気にしなくていいので、ゆっくりと休めそうだとの事。
5列で狭いというが、前の座席の下に足を伸ばせるので、そこまで気にならないとのことだ。一番前も足が伸ばせるように、御者の座る下に足を伸ばせるようになっているので、どこに座っても一緒の造りとなっている。
やっぱり、贅沢を言えば横が気になるか。
レイリーの判断とすれば、横3列の縦5列で15席でもいいくらいだ、と言っていた。馬車の数は増えるけど、魔物の馬1匹で3台引けるのなら、3分の2の数で済むので騎兵に流用できると言っていたな。
馬車の中に入ると警戒がどうしても甘くなってしまうので、馬車の上に乗れるのであれば、そこで警戒できるようにしておいてもらえると、嬉しいと体験した軍人さんが言っていたな。
通路の一番後ろに梯子をつけて、天井に扉をつければ屋根に登れる馬車になるからそれでいいかな。
そこらへんは、これからの改良で使い心地を確認しながらだな。
レイリーたちが帰る時に、軍人の1人が周りに聞こえないように、
「馬車の掃除も考えると、複雑なものは大変なので、出来るだけ掃除がしやすいつくりでお願いします」
って言われたよ。そっか、掃除するのは軍人たちだから、あんまりゴチャゴチャしていると掃除が大変か……その点、今の馬車は平面に箱を積んだりして椅子にしていただけで、箱をどかせば掃除が簡単なので手間はそんなになかったのだろう。
だけど、椅子という異物が1つあるだけで、掃除の手間が増えてしまうか……
そこらへんは用検討が必要になりそうだな。戻ってから話し合うか。
呼ぶわけにはいかなかったのは、別の地で任務についている軍人に、組織のトップとはいえ任務を放棄してこっちに来いということは出来ないからだ。それに、俺ならゲートが無条件に使えるから、俺から出向くのが筋ってもんだろう。
「というわけで、試作品として完成した馬車を持ってきたから、習熟訓練とでも言って、2つの評価を暫定的でいいからつけてほしいので、待機や休みじゃない人たちを60人ほど呼んでもらっていいかな?」
「また突然ですね……30分もすれば昼食になるので、訓練組がそろそろ戻ってきますが、汗をかいたりしている状態でも、問題ないですか?」
「気にしないでいいさ。まだ試作品だから拙い所が沢山あるからな。汗をかいた状態で入ると、匂いがこもるのか、みたいなことの実験になっていいかもな」
訓練組が戻ってくるまでに、レイリーに簡単に今回の違いについて説明した。
「席の数で悩んでいるということですか……10人も12人もかなり贅沢な馬車の使い方になりますので、文句は出ませんと思いますが、何を比べればいいのですか?」
「見てわかる通り、10人の方は横を気にせずにゆったりできるけど、12人の方に比べると席の間隔が狭い。12人の方から見れば、10人の方より足を自由にできるスペースが広いけど、横に人がいるのでゆっくりできるかどうかって感じだな」
「今の馬車は、荷物の箱を使ったりして座ったりしますが、椅子と呼べるものはありませんし、基本はみっちり乗るのでどちらでも、天国みたいなものだと思いますね。箱馬車なので、空調が気になるくらいですかね?」
空調に関しては、魔道具を採用してもいいと考えていたのだが、用意する数が厳しい事になるので、10人に1人の割合で氷魔法を使えるように訓練するのはどうかという提案をしている。
「魔法を使える人間が増えれば、戦術の幅が広がるのでありがたいですね。訓練の一部として組み込む形でもよろしいですか?」
ってか、今まで魔法を訓練に取り入れてなかったんだな。覚えるのに時間がかかるし、剣術とかと違って魔法スキルを得られなければ、訓練すらできないからな……それで、相性が悪いと覚えられなかったりするのが魔法なので、そんなことに時間を割くなら剣の訓練の方が有用的だと言われた。
この世界は、種族によって得手不得手は無いのは、昔から分かっていたことだが、実は環境要因で得手不得手が存在することが、最近の研究結果で分かってきている。
この世界の人たちが、種族特性だと思っていたことが、実は環境要因によるものだったということだ。
エルフは、森と生きるので精霊と相性がいい、みたいに思われているが、生活している場所と生活様式がマッチして、精霊を使えるようになるということだ。エルフ以外の種族でも、エルフと同じように生まれた時から同じ生活をしていると、精霊と相性が良くなる。
探してみると、実際に似たような事例がいくつもあったので、たどり着いた結論だったりする。
ドワーフだけは、何故か肉体的な特徴があるため、確定寄りの仮説として俺たちの共通認識になっている。
「とりあえず、希望者全員に訓練をさせてみて、才能が有りそうな人間だけを抽出する方向でいいんじゃないか?」
「強制させないでいいのでござるか?」
「いくら軍とはいえ、内心やりたくないと思っている魔法を無理やりって言う話になるなら、士気や意欲に関わってくるから、やらない方がいいだろう。それでもダンジョンの中で訓練するなら、参加者が半分だったとしても、10人に1人割合は確保できると思うぞ」
綾乃は興味なしと言わんばかりに、副官の2人に中を説明していた。バザールは、軍人なんだから強制すればいいんじゃないか? みたいなことを言っている。
自分の意思で参加した場合と、強制された場合では、取り組み方に差が出ると感じたので、こういった提案をしている。
レイリーも納得したようで、文言を考えて訓練を実施してみることにすると言っていた。
訓練組がやってきたので、そのまま馬車の中へ入ってもらう。一応空気が流れるように窓は作っているが、涼しいかと言われれば微妙な感じだ。
今回レイリーに提案した、氷魔法を使って空間を冷やしてあげると、歓声が上がった。訓練をした後だから、涼しいのが心地よかったのだろう。思わず歓声を上げてしまう気持ちも分かる。
昼食前まで馬車を走らせたりして、試作品を体験してもらった。
評価は、どちらも今までの馬車の何倍も良いものだとの事だ。2つを比べた場合、どちらがいいかと聞かれれば、10人の方が横の事を気にしなくていいので、ゆっくりと休めそうだとの事。
5列で狭いというが、前の座席の下に足を伸ばせるので、そこまで気にならないとのことだ。一番前も足が伸ばせるように、御者の座る下に足を伸ばせるようになっているので、どこに座っても一緒の造りとなっている。
やっぱり、贅沢を言えば横が気になるか。
レイリーの判断とすれば、横3列の縦5列で15席でもいいくらいだ、と言っていた。馬車の数は増えるけど、魔物の馬1匹で3台引けるのなら、3分の2の数で済むので騎兵に流用できると言っていたな。
馬車の中に入ると警戒がどうしても甘くなってしまうので、馬車の上に乗れるのであれば、そこで警戒できるようにしておいてもらえると、嬉しいと体験した軍人さんが言っていたな。
通路の一番後ろに梯子をつけて、天井に扉をつければ屋根に登れる馬車になるからそれでいいかな。
そこらへんは、これからの改良で使い心地を確認しながらだな。
レイリーたちが帰る時に、軍人の1人が周りに聞こえないように、
「馬車の掃除も考えると、複雑なものは大変なので、出来るだけ掃除がしやすいつくりでお願いします」
って言われたよ。そっか、掃除するのは軍人たちだから、あんまりゴチャゴチャしていると掃除が大変か……その点、今の馬車は平面に箱を積んだりして椅子にしていただけで、箱をどかせば掃除が簡単なので手間はそんなになかったのだろう。
だけど、椅子という異物が1つあるだけで、掃除の手間が増えてしまうか……
そこらへんは用検討が必要になりそうだな。戻ってから話し合うか。
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