ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,351 / 2,518

第2351話 未来は決まってない

しおりを挟む
 今日起こしに来てくれたのは、初めての感触だった。今はしなくなった、昔のシンラのように顔に何か張り付いている状態だ。若干呼吸がしにくいが、モフモフなので問題なく呼吸は出来る。だけど、俺の従魔でモフモフで顔に張り付くやつはあんまりいないが、お前さんは誰だい?

 顔に張り付いているのが分かるので、大きくはないんだろうな。そして、昨日の出来事から考えれば、張り付いている正体も何となく想像がつく。顔に張り付いていたのは……やっぱり、子タヌキだった。

 楽しんでいる様子はいいんだけどさ、いくら娘たちにけしかけられたからって、一応主である俺の顔に張り付くのはどうなんだい? 親タヌキならしないと思うが、子タヌキはまだ子どもだから、遊んでいる感覚な可能性もあるか?

 大きくなってからもやってくるなら問題はあるが、小さい姿であれば問題はないか。だからと言って、ダマはするんじゃないぞ!

 スライムたちに押されてイヤイヤしているダマを牽制しておく。この場合は、ダマというよりはスライムたちだな。ダマは子タヌキみたいにモフモフしているから呼吸ができるが、スライム! お前たちはダメだ! 完全に呼吸ができなくなるからな。

 呼吸できるように隙間を空ければいいって問題でもないぞ。

 そう心の中で思うと、ビクッとしたスライムたちがいたので、何かしようと企んでいた奴らもいたようだな。

 こんなことを言っても、結局忘れた頃に顔に張り付いてくるから、結局は面倒なことに変わりはない。面倒だけど有能だから強く言いすぎることも出来ないんだよな。本当にしてはダメな事のラインは、しっかりと理解しているようなので、賢いとしか言いようがない。

 無邪気にじゃれ合ってくる子タヌキを小脇に抱えて、様子を部屋の入口で見ていたシンラたちに近付いていく。そのままシンラを捕まえ、子タヌキとは反対の方の小脇に抱えて食堂へ向かう。

 ミーシャじゃなくて、この子たちが起こしにきたということは、何かしら俺にイタズラをしようという魂胆だろう。昔のミーシャたちも良くイタズラをしてきたからな。ミーシャたちのイタズラというか起こす方法は、過激だったからな……そう考えれば、まだ優しい起こし方ではあるか?

 ただな、苦しくて起きるって言うのは、意外にしんどいから止めてほしいんだぞ。

 捕らわれの身となったシンラを助けるために、足元ではプラムとシオンが俺の事を必死に攻撃してくる。力はいれていないので、この子たちが怪我することはないが、結構マジになって攻撃してくるから、地味にいたかったりもするんだよな。

 お前さんたちが悪さをしなければ、こんなことにはならないのに、何故怒られるとは分かっていてイタズラをしてくるのかね?

 そういう意味では、スライムたちと一緒なんだよな。本当に誰に似たんだかな……

 俺もイタズラはするけど、こんなんではなかったし、怒られるようなことはしてなかったと思うんだが……そう思っているのは、俺だけだったりするか?

 足に軽い痛みとと心に深い痛みを感じながら、食堂へ向かった。

 食堂に入ってきた俺を見て、またいつものかと妻たちは苦笑して、ミーシャたちもまたやってる……と呆れながらも、俺の助けに来てくれる。

 シンラたちを回収して席に座らせると、シンラはともかくプラムとシオンは落ち着いた様子になる。

 俺がシンラを解放していればこんなことは起きなかったのだが、それでは負けた気分になるので解放せずに、プラムとシオンの攻撃を受けていたのだ。

「そんな事なら、始めからその場で怒って解放でいいんじゃない? シンちゃんは、あなたにイタズラするのを面白がっているし、プラムちゃんとシオンちゃんはシンちゃんにナニカすれば怒るだけだからね。もう少し大きくなれば、スミレたちみたいに過激なことはしなくなるわよ」

 そう言ってきたのは、カエデだ。

 そんなことは分かってるけどさ、やっぱり怒るだけだとシンラには響かんのだよな。怒ってもあまり響かないけど……問題なのは、いけないことはいけないと理解してもらわないとな。

 毎回毎回助けていたら、やっても問題ないんだ! と思われても困るんだよ。下手に権力を持っている俺の子どもだから、なにしても問題ないみたいなことになれば、俺が子どもたちを本気で罰しないといけない時が来るかもしれないだろ? それだけは本当に勘弁してほしいからな。

 小説とかで、王子だから何をしても問題ないと、悪逆非道なことをしていても、王はそれを裁けずにどんどんエスカレートして、国が崩壊した……みたいなエピソードもあるだろ? そう考えると、早いうちからしっかりと教えなきゃいけないと思うんだよな。

「それは問題ないわよ。あなた以外にイタズラはされてないし、本当に行けない事であれば、私たちだってスミレたちだって、シルキーたちだって怒ってくれるわよ。むしろ、シルキーたちは、怒るで済ませるか分からないだろうね」

 ん~、それもそうか。シルキーたちが教育に関しても協力してくれているので、もし問題があれば、どんな方法を使ってでも、矯正をしてくれるだろう。

 もし上限を超えるようなことがあれば、その前に鉄拳制裁するか……罰することはきついけど、その前に物理的に分からせることは可能だよな。最悪、悪さをする前にマイワールドに監禁する方法もあるか……

 そうならないように教育していくけど、いざという時の方法だけは確保しておけば問題ないか。

 今日も今日とて、食事の取り合いをしており、いつも飽きずに良く続けるもんだな。シンラももっと起こればいいのに、プラムとシオンたちには怒らないんだよな……って、こいつが怒ってるところって、あんまり見たこと無い気がするな。

 逆ギレみたいなことはあるけど、怒ってるってイメージはあんまりない。どちらかというと、達観しているような表情を見せることが多いから、大丈夫か心配になってくる方が多い気がする。

 プラムとシオンは、シンラがいれば問題ないだろうし……なんか、大丈夫な気がしてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...