ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2289話 延長戦Part3

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 次の相手は、ソフィーとレミーだ。

 ソフィーは、斥候なので妻たちの中では動きは早い方で、体の動かし方を熟知していると言ってもいいだろう。それに対してレミーは、純粋な魔法使い寄りなので、体術なんかは妻たちの中では苦手な方だ。

 この2人が組んでいるとなると、どういう攻撃を仕掛けてくるんだろうね。魔法は使えないし、肉体的なことを言えば、妻たちの中では下位に位置するステータスだ。それでも、ただのSランク冒険者であれば、歯がたたない位には強いのだが……

 そんなレミーとコンビを組んで何をしてくれるのだろうか。少し楽しみだな。

 2組とも体は温まっているので、すぐに模擬試合が始まる。

 やはりスピードに秀でているソフィーが俺のメインの相手で、レミー補助する形の立ち回りの様な気がするな。

 一定距離まで近付いてから、急に軽くピョンピョン跳ね始めた。それは、後ろから来るレミーを待っているようにも見える。足を使うボクシング選手や、テニスのプレイヤーがやっている、ステップの基本技だな。

 テニスでは、スプリットステップとか言う技術だったかな? 確か相手がインパクトする際に両足を地面から離して、どちらにもすぐに移動できるような技術だったはず。

 ボクシングでは違う意味合いかもしれないが、体重移動がしやすいからベタ足ではなく、軽く跳ねているようなステップを使うと聞いた気がする。

 ソフィーは、無意識のうちのそのステップを踏んでおり、レミーが追い付く寸前に加速して俺に迫ってくる。

 馬鹿正直に真正面からだが、俺に投げられないように注意しているためか、攻撃はとにかく早い。早いが軽い攻撃なので、ダメージにはならないのだが、鬱陶しい攻撃ではある。

 俺の方が間合いは長いのだが、足を使って距離を誤魔化し、俺を翻弄してくる。

 お手本通りのヒットアンドウェイだろう。投げにくいように、手から離れた場所や動かしにくい場所へ攻撃を加えてくる。

 そなれば、本命はレミーってことになるが、レミーの速度じゃ少しばかり遅いぞ。

 ソフィーの攻撃をさばきながら、後ろからのレミーの攻撃をかわしていく。肉体活性を使って一時的に加速したりしているが、それでもソフィーの攻撃寄り若干遅い。

 肉体活性に入れている力が少ないということもあるだろうが、それ以外にも慣れていないのだろう。妻の中で低くとも基本スペックは、圧倒的に他の冒険者を上回っているので、肉体活性を使う状況なら、魔法攻撃を仕掛けるのが魔法組の妻たちだ。

 1人で戦うことなんて無いから、レミーが攻撃の回避に力を入れる状況なら、前線は崩壊しているので、魔法で状況を変える必要があるだろう。別に魔法でなくとも高威力の範囲攻撃によって、戦場の停滞を作りだせれば何でもいいだろう。

 だから、レミーは肉体活性に慣れていない。地のステータスをあげて、いざという時でも動けるようにするのが、後衛の役割だろうな。

 それに大量に魔力を消費する魔法を使いながら肉体活性をして、少しでもバランスを崩すと魔力が肉体活性に流れて危険なので、特に後衛は肉体活性を使うことがほとんどないのだ。

 ちなみに、肉体活性に魔力が注ぎ込まれすぎると、全身の筋肉が切れるか、骨が耐えられずに骨折してしまう事があるから、同時に使うことはほとんどない。

 そういう背景もあってか、レミーの攻撃は少し威力にかけるんだよな。最悪、かわさずに受けても問題ないだろう。それなりに強化してからだけどな。

 それでも一方的に攻撃をくらい続けるのは面白くないので、レミーが近付いてくるタイミングでソフィーに仕掛けてみたり、横を抜けて見た入りしているが、徹底してレミーがソフィーのヘルプをしている。

 今の調子じゃ、どっちも威力がかけているから、どこかで仕掛けてくるだろうけど……本命は、ソフィーだよな。

 レミーに意識が行くように誘導して、ソフィーが何かしかけてくるか?

 何回も攻撃を仕掛けてくれば、1つくらいミスが出る。俺はそれを逃さず、ソフィーの突き出された腕を取り投げようとした。

 すると、タイミングを合わせたかのようにレミーが踏み込んでおり、投げが成立してもしなくても、回避できない状況になっていた。

 それなら、殴られる個所を本気で守りつつ、ソフィーの戦闘能力を奪ってやる。

 投げた後に首に足を当てれば、さすがに負け判定になる。レミーの攻撃は気合で耐えてから反撃だ。

 そう道筋をたて、実行する段階になった。

 だが実行することはできずに、俺が吹き飛ばされることになった。

 何が起こったのかは分からないが、レミーに殴られたところに痛みが走る。

 レミーの力で俺のガードを抜いて、更にダメージをかなり与えられるとは思っていなかった。

 何が起きたかを確認する前に、まずは体制の立て直しだ。

 レミーもソフィーも気配で近付いてきているのは分かっている。何もしないままだと、俺は攻撃され続けその内保護シールが壊れてしまうだろう。

 体を捻り片手をついてから、そのままの勢いで着地する。

 気配の感じる方へ目を向ければ、ギリギリ視界に2人がおさまる。

 投げて体勢を崩していたとはいえ、ソフィーの方がやはり近付いてくるのが早いようだ。速度も上がっている気がするので、肉体活性でかなり強化しているかもしれない。

 次の攻防で、どうにか先手を取る!

 ソフィーの攻撃は、相変わらずヒットアンドウェイで、俺に投げるチャンスを与えないようにしている。

 レミーは俺の後ろに回り込むのではなく、ソフィーの後ろから時々位置を変えて前に出てきて、不意を打つような攻撃をしてくる。ソフィーと同じように、早いけど軽い攻撃だ。

 試合開始から5分程経過しているが、俺は有効打を一撃も与えられていない。それどころか、流れすらつかめていない状況だ。

 チャンスが無かったので、ソフィーの攻撃に合わせて強引に前に出る。何とか腕を捕まえて投げようとすると、レミーがカバーするように姿を現して、無防備になった左わき腹を狙って拳をふるってきた。

 同じ轍は2度も踏まないよ。

 あえて隙を晒したのだ。

 さっきは回避不可能だったので、体を強化して気合で耐えて、1人を撃破判定にするつもりだったが、今回は若干の余裕がある……というよりは、狙っていたので備えていた。

 ソフィーを手放して、左肘付近を中心に全力で防御をした。腰を落とし、レミーの攻撃に耐えるためだ。

 下げた肘にレミーの拳がぶつかる。

 やはりレミーの力ではありえない威力の攻撃だ。だけど、そのからくりは分かった。

 レミーは禁止されている攻撃魔法を使っていないが、付与魔法を使って威力をブーストしていたのだ。魔法自体を禁止したわけじゃなく、攻撃魔法を禁止しただけだったので、付与魔法は有効だ。俺だって、無意識のうちに回復魔法を使って、体を癒しているから人の事を言えなかった。

 でも、ネタが割れてしまえば対処はできる。俺もそのまま体に付与魔法を使って、逃げるレミーを捕まえ大外刈りのようにして畳に転ばしてから、首に手を当て撃破判定。

 ソフィーの対応をしようとしたところで、後頭部に拳を突き付けられていた。
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