ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2240話 すぐに終わった戦争

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「あ~あ~。冒険者による攻撃を確認しました。致死性の猛毒を使った奇襲も確認しています。あらかじめ言いますが、冒険者が勝手に攻撃をしたという戯言は聞きません。

 1時間より前に私への攻撃を確認した場合は、その時点で殲滅を開始します、と初めに言っているので、門番が攻撃の可能性を考えて外へ出すのを止めなかった時点で同罪です。

 住人の皆さんは、襲ってきた冒険者と無能な門番、そして戦争を吹っ掛けてきた領主とその取り巻きを呪ってください。

 殲滅を開始します」

 俺の声を聞いたバッハが、イステリオンの街に向かって火炎弾を吐き出す。威力はほどほどに抑えられているようだが、抑えていたとしてもその被害は尋常ではないだろう。

 炎による被害はほとんどなく、上空で爆発した衝撃波で街の建物に被害を与えているようだ。

 領主館や貴族たちの屋敷があるエリアには直接火炎弾が撃ち込まれており、火災による被害も出ている。

 足元で攻撃を仕掛けてきた冒険者たちが、俺の事を罵倒している。街を攻撃するなんて卑怯だ! 関係ない市民を殺すのは卑劣だ! などなど、言いたい放題である。

「何を言われてもなんとも思わないが、1つだけお前たちに言っておこう。関係ない市民と言っているが、お前たちは関係のない獣人を強制的に奴隷に落とし、残虐非道な扱いをしてきた。それなのに、関係がないとは頭に蛆でも沸いているのかね?

 あ~、国が~とか、宗教の教えが~とか、そんなことはいうなよ。獣人が前世に罪を犯していたというのは、お前らの国が獣人を思うように使うために勝手に作った後付けの理由だからな」

 それでも、罵倒をつづけるこいつらの根性もすげえな。

 さて面倒なので、物理的に黙らせますかね。俺がお前たちを殺さなかったのは、殺さなくても制圧できるだけの戦力差があるだけで、殺すことをためらっているわけじゃないんだぞっと……

 メグちゃんが連れてきた弓使いも含めて、両肘両膝をすべて潰した。出血多量で死なれてしまうのは困るので、品質の悪いポーションを振りかけてやる。

 関節を砕かれた冒険者たちは呻き声をあげているが、俺はお構いなしに話しかける。

「さて、俺は別にお前たちを殺せないわけじゃない。死んだ場合は、そこで苦しみは終わるだろ? 苦しみを長く味わせるためには、生きていてもらわないと困るからな。治療したのは気まぐれじゃなく、低位のポーションによる血止めなだけだからな。

 元のように動けるようになるには、エリクサーや高位の回復魔法が必要だから運が良ければなおるかもな。聖国にそこまでの回復魔法の使い手がいるか知らないから、エリクサーだろうから……全員分のお金があるかどうかだね」

 俺はこんなことを言っているが、こいつらを治せるような高位のポーションやエリクサーを、こいつらが買えるとは思わない。Sランクの冒険者だったとしても、買える冒険者パーティーは稀だろう。それも1本が限界だろうな。そもそも、売っていないからどうにもならんだろうけどな。

 こいつらは、これから生活するために、人の手を借りないと生きていけないだろう。

 多分、責任を取らせて領主と上層部と一緒に処刑することで、住人たちの怒りの矛先を向ける事に使われるんだろうな。生かしておく方が大変だし、財産も没収されて復興にお金が使われるかな?

 皆殺しのつもりだったが皆殺しを止めた理由は、街が壊れたのに人が生きていて、さらに怪我をしている状況であれば、救いの手を差し伸べないわけにはいかない。

 それが全員を奴隷に落として生活の保障をするのか、自立できるように他の街へ移住させるのかは分からないが、全員が死んでいるより苦痛を伴うことは間違いない。

 あの教皇なら、今回同調した領主どもに復興の資金や労働力を出させるんじゃないかな。俺に手を出すなと勅命が出ているのに、手を出してしまった奴らに後始末をさせるんだろうな。

 まぁ事後処理の事なんて俺には関係ない。戦争を吹っ掛けてきたので、全力でトップを叩きのめすだけだな。

 バッハがあらかた吐き終わったのか、俺の元に戻って来て元のサイズになる。それを見たメグちゃんも小さくなった。そういえば、メグちゃんはバッハと同じくらいのサイズだったので、元の姿ではなかったな。

 バッハの話を聞くと、どうやら貧民街の近くには火炎弾を吐かなかったみたいだな。あそこの建物は、よく燃える上に崩れやすいから、余波だけで十分だと判断したみたいだな。

 貧民街の人たちには、しっかりとした家には住めないだろうから、良い判断だったかもな。

 崩れたところで普通の家に比べれば、大きな怪我は負わないだろう。一番元気なのはもしかしたら、貧民街に住んでいる人たちかもしれないな。

 怪我をしている平民……と言っていいのかは分からないが、大した財産も残らずに大変な事になるだろうな。そういう奴らは、獣人たちをひどく扱っていただろうから、むしろいいきみかもしれないな。

 さて、領主は……瀕死の状態だし、お偉い方も半分くらいは死んでるから、統率が取れてなさそうだな。

 俺のすることは終わったから、バッハにまた大きくなってもらってから、ディストピアへ戻ることにした。

 帰りは特に何もなくメグちゃんと一緒にバッハの背中で昼寝をして帰った。バッハが文句を言ってくるが、途中でうるさくなったのか、メグちゃんが水の膜で音を遮断してくれた。

 ディストピアにつくと、すぐにグリエルに呼ばれて怒られた。

 怒られた理由は、終わったらなすぐに連絡をしてください、との事だ。

 グリエルの言っていることはごもっともなのだが、すっかり忘れていたのでしょうがないと思うんだ。それより、精神的に疲れたから、早く家に帰りたいのだが?

 そんなことを言葉にしたら呆れた表情になり、後はやっておきますので、また休日をお楽しみくださいとのことだ。

 優秀な部下を持って、俺はすごく嬉しいよ。俺の子どもが育つまで、領主の仕事を代行してく

「シュウ様が領主ですからね! 下では働きますが、上には立ちません!」

 と、頭を押さえられてしまった。
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