ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2172話 帰還中の一幕

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 帰り道、兵士たちの様子を見ながら戻っているのだが、兵士たちの足取りが重いな。土木組の子たちが途中で休憩に入ったけど、離脱しただけで判定は生存なので、損耗率は兵士たちの方が上なのだ。

 でも、1人だけ魔力切れで倒れてしまった子がいたので、こちらの損耗率も0パーセントではなかったが、気絶した数を考えれば、最後に地下へ潜り音響爆弾を使った時の人数で、十分に俺たちの損耗率を越えてしまっている。

 それが分かっているので、レイリーが臭わせていた特別訓練があると考えており、こんな表情をしているのだと思う。いろんな訓練があるから、どの事を指しているか分からないが、ついでにあまり寝れない訓練でも一緒にしてやるか?

 少し腑抜けている部分があったのは確かなので、その部分は鍛え直さないといけないな。いくら強いからと言っても兵士程度の実力なら、倒せるものは沢山いる。ある程度大きな街の騎士団長で、しっかりと鍛えていれば、1対1で負けることだってある。

 不意打ちをされ致命傷を負えば、助けられずに死ぬ可能性だってある。余裕と油断は違うのだ。今回は明らかに油断していたため、気を引き締める意味の訓練をするはず。そう考えれば寝れないあの訓練は、結構適切かもしれないな。

 鬼畜の所業の訓練だけど、どこの軍隊でも似たようなことやっているし、甘さを断つにはちょうどいい訓練でもあるんだよな。

 ちなみに油断とは、一説で仏教用語であるらしい。ある王様が臣下に油の入った一つの鉢を持たせ、行動する時にもし油を一滴でもこぼせば、お前の命を断つであろうと告げ、抜刀した家来をその臣下の後につけさせたというもの。

 初期仏典には、神仏に捧げる灯火を絶やさぬよう、油を断たないように大切にする、という教えも多く存在し、そこから油断という言葉が生まれたという説もあるそうだ。油は大変貴重な物であり、不注意で油を損失してしまわないように、戒めの言葉として油断が生まれたという。

 こんな豆知識はいいとして、兵士たちにはこういった場所で、油断しないように常に戦闘態勢に移れるくらいのレベルにはなってほしいと思っている。

 そのために高い給金を出しているわけではないが、貰っている分はしっかりと働いてくれ。ディストピア基準で考えても、平均の倍以上は給金を貰っているので、しっかりと訓練をしてくれ。他の街で考えれば、3~4倍は軽く超えるしな。

 その大半が俺の懐から出ているので、私兵に近い位置付けでもあるんだよね。だから、最低限の基準は超えてもらわないとね。給料を下げざるを得ないんだよね。

 商会の莫大な売り上げから、俺に支払われるお金で簡単に賄える程度ではあるが、だからと言って質の悪いものはいらない。

『シュウ様、追加の訓練の件は後にして、今日はとりあえず今回の訓練が終わったので、ゆっくり休みましょう。食事の準備も出来ていますので、早く戻ってきてください。兵士たちにも伝令が言っているはずです。大量に作れて種類の豊富な、カレー祭りですので、先頭の兵士たちはもうすぐ食事をとりに来ますよ』

 おっと、数がいるからどれくらい離れているかと思ったら、既に食事を開始できる位置にまで後退している部隊もあるのか。レイリーの言い方だと、残っていた部隊じゃなくて、戦闘していた部隊の中で一番早く戻ってきた奴らだろうな。

 でもさ、兵士たちは大喜びかもしれないけど、俺たち最近カレー祭りしたばかりなんだよな。まぁ、いつ食べても美味いからいいんだけど、兵士たちも同じメニューとなると、カレーの種類よりはトッピングになる物が、大量にあるんだろうけどな。

 兵士たちの食事事情は、俺たちとは違い質より量だからな。いや、うちは量も質も最高だったな。とにかく肉が好きな奴が多いし、訓練で体を酷使するから、しっかりと食べないと体がやせ細っちゃうんだよね。

 相撲取りは、食べるのが仕事と言われる所以はそこに合ったりもする。人にもよるが、相撲取りがお腹の減りを我慢出来て、成人男性と同じ食事をした場合、すぐに痩せるといわれている。

 それだけ筋肉もあり訓練もして、重たい体を支えるのにエネルギーを使っているので、必然と痩せてしまうとか。

 カレーのトッピングか~、やっぱり王道で行けばトンカツだよな! カツカレー! 他にもチキンカツにエビフライもいいな。少しそれるが、カレ牛も悪くないけど……今回はあるかな?

 他には、からあげも悪くない。夏野菜のトッピングだっていいな。やっぱり、チキンカレーとチーズナンのコンボは無視できないな。つい最近食べたのに、少し考えるだけで食べたいものが沢山出てくるな。やっぱり、カレーは最強だな!

 少し遅れている集団がいるな……

「ピーチ、あのグループってどこか怪我してるんじゃないか?」

 俺のセリフを聞いて、後ろを振り返る妻たち。

 遠目では分かりにくいが、少し歩き方がおかしい気がする。戦闘が終わったから、治療師たちも移動して、衛生兵も気絶した兵士たちを運んでいるから、多少の怪我ということで治療されていないグループかもな。

 歩く分には問題ないが、普段よりは時間がかかってしまうような感じだろう。捻挫じゃないけど、少しくじいてしまった……そんな感じの怪我かね?

 ピーチは、土木組と年少組には先に戻って状況を伝えるように指示を出し、残りのメンバーで治療に当たるように指示を出した。

 ここの集団は、大体300人ほどいた。訓練時の位置的には、最大限のパフォーマンスを維持できないため、自力で後方へ下がるように指示された者たちらしい。治療の優先順位も低く自分で動けるため、気絶している人たちが優先され、治療を受けられないまま移動をしていたようだ。

 確かに、順位を考えればこの集団は限りなく最後に近い。2~3日すれば治る程度の怪我だから、治療をする必要があるかと聞かれれば、無いと答えるのが大半だろう。明日には痛みは残るが、訓練はできる程度の怪我だろうからな。

 とはいえ、訓練の後で疲れているし、治療できるメンバーがいるんだから、治してやるべきだよな。

 あいているところに並んでもらって治療を始めるのだが、何故か俺の所に兵士はいなかった……そんなに女がいいのか! 確かに俺の妻たちはかわいいし綺麗だけどさ!

「勘違いしないの。シュウは、私たちのトップ、王様みたいなものなのよ。そんな人に治療してもらうわけにはいかないでしょ? だから、私たちの方に全員来たの。むしろ、空いているからと言って、シュウの所に行く兵士がいなくてよかったわ」

 カエデにそう言われて、俺が偉い人間だったと思い出した。
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