ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,054 / 2,518

第2054話 出発前の大仕事⑥

しおりを挟む
 子どもたちの準備も終わり、明日出発! とシンラたちはいき込んでいたが、キャンプじゃないんだからきちんと住めるように建物を作ってからじゃないと、お前らは呼ばないぞ。ミーシャたちはいいけど、シンラたちは我慢できないだろ?

 姉たちにつられて準備していただけに、一緒に行けないとなると予想以上に手強い相手になった。

 こっちが何か話そうとしても3人でガン泣きして、こっちの声をかき消す。今度行くところの話をすれば、ある程度は話を聞くのだが、自分たちが初めから一緒に行けないと分かると、ガン泣き……もうね、子どもがこんなに大変な生き物だとは思わなかったよ。

 正直なところ、建物が出来るまでの間我慢ができるというのであれば、連れて行っても問題ないのだが、それを説明すればガン泣きするので、自分たちでも無理だということは理解しているのではないかと思う。

「とーたん、私たちが面倒を看るから、一緒に連れて行ってあげて。もし駄目そうだったら、ケットシーやスライムたちに協力してもらって、私たちのマイワールドで時間を潰すようにするから……ダメかな?」

 ミーシャを先頭にして、シンラたちを一緒に連れていってほしいと、説得された。ゲートをあまり使いたくないと思っている俺の事も考えているが、今回はシンラたちの様子を見て、そっちが勝ってしまったのだろう。

 ミーシャたちは、俺がゲートをあまり使いたがらないのを理解しており、移動は移動で楽しめる物だと分かっている。それに建物が出来るまでは、不便な生活になることもしっかりと理解している。だけど、シンラたちはまだそこらへんは、理解できていないからな。

 シンラたちには、何かあればゲートを移動に使える! と思わせたくないんだよね。ゲートは便利だけど、根本的にすべてをぶち壊すことのできる技術だからな。

 だから、出来る限り制限をかけているつもりだ。これで制限をかけているつもりなのか? と思われることもあるが、暗部も緊急時以外は魔導列車で移動するし、グリエルたち街の上層部でも簡単に使える物ではない。

 だけど、娯楽として提供ができる便利な場所なので、ゲートを使ったマイワールドへの移動は制限していない。学校に関しても便利なので使っているし、街のトップの移動は基本的に認めていないけど、話し合いが必要だとは考えているので、会議室だって用意している。

 制限をかけているのは、ゲートを使った長距離の移動だけであって、ゲート自体の利用ではないのだ。

 ミーシャたちも少し誤解している部分がありそうなので、ここで誤解を解いておくのもいいかもしれないな。

 ウルも含めて子どもたち7人を集めた。ウルの腕の中にはシンラが太々しく座り、ミーシャたち3人の前にプラムとシオンが座り、俺の話を聞く体勢になる。

「ウルたち4人は、俺がゲートを使いたがらないと思っているかもしれないけど、それは間違いだ。俺が制限しているのは、ゲートを使った移動だ。移動と言っても、ここからマイワールドを行き来するのは、問題ない。問題としているのは、マイワールドを経由して違う場所……街とかに移動することなんだよ」

 ミーシャたちは首をひねっているが、ウルはやっぱりそうなんだ! と言った、納得顔をしている。ウルは聡い子なので、そう予想していたのだろう。



 話は変わるが、国民的アニメの青い狸……じゃなくて、猫型ロボットのドアはかなり便利だ。だけど、あれを誰でも使えるようになると、失業する人が大量に発生するだろう。それに保安関係の問題もあって、色々な法整備があり違う問題も抱えることになるだろう。

 便利にするということは、悪い事ではない。だけど便利にし過ぎると、そのあおりを受けて大変な目に合う人が大量に発生するということだ。

 ドアの一例をあげれば、移動に時間がかからなくなり、長距離を移動する乗り物も必要ではなくなる。電車や飛行機などが必要ではなくなる。この2つを作っている人たち、整備をする人たち、動かす人たちが失業することになる。

 航空チケットや旅行プランを考えて、提供してくれる旅行コーディネーターの仕事は楽になるだろうが、簡単にいろんな所へ行き来できるのであれば、現地ガイドみたいな人の方が重宝される可能性が出てくる。

 車に関しては、限定された地域を回るために使われることはあっても、長距離を運転して移動するということは減るだろう。中には自分で運転したい人もいるだろうが、車より楽で簡単で安全な移動方法があれば、そちらを選ぶ人は多いはずだ。

 長距離トラックに関しては、荷物を瞬時に運ぶ方法があるので、無くなることだろう。


 1つの例をとって話したが、ゲートをこの世界で無制限に使えば、色々なモノが崩壊してしまうことは目に見えている。それによってあおりを受けて一家心中するような人たちだって出るだろう。そうでなくても、身売りをしなければいけなくなり、一家離散ということもあるだろう。

 だから、緊急時以外は使いたくないと考えているのだ。

 失業者の部分は、この世界観に合わせて話したから、ミーシャたちも何とか理解してくれたようだ。シンラたちは、何言ってんだお前? みたいな顔をしているけど、気にしたら負けだろう。

 で、ゲートを安易に長距離移動に利用したくないのは、ゲートで簡単に移動ができるんだからと言って、今以上に物流を混乱させたくないんだよね。一般的には知られていないが、ただでさえ魔導列車が活躍して物流に影響が出ているからな。

 それでも、高級志向の部分と足りない物を補っているという形で、混乱にはなっていないので、まぁセーフだろう。トラブルが増えるのであれば……魔導列車での物資運搬も見直す必要が出てくるだろう。


 っと、話は逸れたが、シンラたちよ。姉たちの言うことをしっかりと聞いて行動でき、我慢できないときは姉たちと一緒にマイワールドで大人しく過ごす、というなら連れて行ってあげよう。

 だけど、言うことを聞かないようだったら、問答無用でディストピアに帰すからな! その時は、シルキーたちの監視の元、生活することになるから気を付けるようにな。

 俺が最後に言った、シルキーたちの監視という部分に、ミーシャたちまでウッとした表情をしている。確かにあの4人の妖精は厳しいけど、ルールを守ってその範囲内で活動する分には、大したことは無いんだぞ。

 まぁ、脅し文句に使われるくらい、特にスカーレットは厳しく躾けるからな。その顔も分からんでもない。俺も、たまに雷が落ちて大変な思いをすることがあるからな。気持ちは分かっているつもりだ。そしてスカーレットさんやい、そんなに睨まんでくれ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...