ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2036話 違う問題が結構あった

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 普通の人間なら悪いことしていなくても、警察が尋ねてくればドキッとするように、暗部が来ればこういう風になるのは普通かな? ん? むしろ、悪い事をしていると理解して、覚悟していれば焦らずに済むということもあるかな。

 そうなると、焦っているこいつは……無関係ってことか?

「シュウ、そもそも異常があるのか分かっていないのに、関係があるかないか何て考えても意味なくない?」

 綾乃に言われて、納得する。そうだった、今回の件は俺の違和感から始まった、笑い話になる可能性もあったんだったな。内偵は暗部がしてくれるので、俺はそれを見て判断すればいいだろう。

 暗部が職員をどかして、情報を調べ始める。紙媒体でも保存している情報はあるので、そちらからも調べ始めている。データも紙媒体でも情報を書き換えたり、抹消されたりしていれば、情報を探すのは困難になる。パソコンの消されたデータを復元できる人はいないからな。

 とはいえ、関連情報を繋ぎ合わせていけば、嘘は見つけ出せるのだが……そこまですると、時間がかかりすぎてしまう。そのうち、俺にも違和感がないか情報が送られてくるだろう。そのためにここにいるようなもんだしな。

 調べるのは、俺が違和感を感じた書類を送ってきた人と、その近辺を調べるので、全体を調べる苦労に比べれば、今回はまだ楽な方だろう。

 暗部も多少の不正を見つけられるが、完璧ではないので、ドンドン後方へ情報が送られているみたいだな。

 そこから情報が送られてきている。後方でも特に何も問題が見つけられないのか、ドンドン俺に情報が流れてくる。

「いっぱい情報が流れてきてるね。パッと読んだ感じ、特に問題はなさそうだけど、シュウはどう思う?」

「どう思うって言われても、まだ読んでないからわからんよ。俺が勘違いした笑い話の可能性だってあるんだからな。根気よく調べてくしかないだろう。送られてきた報告書に何か書かれているなら、簡単に発見できるんだろうけど……事件か何かも分からないからな」

 雑談をしながら、一つひとつ確認していく。

 事件だと仮定して、俺がこの人たちの立場だったら、どんなことをできて、どのように隠蔽するだろうか?

 報告書を送ってきた人は、軍隊で言えば小隊長から中隊長と言ったところだな。現場の末端指揮官という感じだな。その上ってことは大隊長以上ってことか。中間管理職以上か?

 担当しているのは財務関係だから、やっぱりお金がらみの何かがあったと仮定しよう。となれば、ありえるのは……書き換え、横領、使い込み、談合ってところか?

「主殿、書き換え、横領、使い込みでござるが、全て関係していると思うでござるが、何か違うでござるか?」

 言われてみれば、書き換えと横領は一連の流れの内か。得たお金を使ったか隠しているだけかで、使い込みかそうじゃないかってことだな。

 他にあるとすれば、ハラスメント系の何かかね? そうなると、情報を洗っても特に何も出てこないはず。俺だったら、報告書の様なモノはすべて抹消するだろうしな。

 情報を洗い出している暗部以外も行動が開始された。

 鉱石ダンジョンのある街の庁舎を掌握するために、一時的に機能を全部止めて、職員全員を集めている。悪い事をしているわけではないので、集められた職員たちにはブラウニーたちが準備したお菓子や軽食などが配られている。休憩のような感じで、少し賑やかだな。

 担当する暗部が、立場が上の人から別の部屋へ呼んで、色々な質問をしている。誘導尋問の様なものもあれば、脅迫の様なモノもあった。

 例えば、職員の中に違法なことをしている人間がいないか聞き無いと言って、後で本当は知っていた場合、幇助した人間として街から追放されるというものだ。

 俺の街で犯罪を幇助するような人間は追放処分になるので、脅しというよりは精神的苦痛を感じさせ、どんな些細なことでも情報を拾おうとする方法なのだろう。

 上から聞いているためか、追放されるような問題ではないが、少しよろしくない内容もチラホラ上がってきている。

 仕事が出来る出来ないで、優遇されたり冷遇されるのは、本人の資質の問題もあるので仕方がない。俺の街でも、本人に合っていない仕事だったとして、違う仕事を担当させて適性を見極めたりもする。

 だけど、好き嫌いで優遇や冷遇をしているお偉方がいたのだ。能力が高ければまだ許せるのだが、能力が低いのに取り繕うのが上手かったり、他人がやった仕事をあたかも優遇したい人物がやった事にしたりと、結構問題になることが行われているみたいだ。

 セクハラについては、かなりきっちりとしているが、今回の様なパワハラについては、徹底できてなかったようだ。

 グリエルたちも集まってきており、人事について頭を悩ませている。

 棚ぼたで手に入れたような鉱石ダンジョンなので、他の街に比べて力を入れていなかった。その街のトップや補佐官はこちらから送り込んでいるが、他の者の多くは現地で雇っている。現地と言っても、近い街からなんだけどね。送り込んだトップたちの目の届かない所で、今回の様な事が行われていたみたいだ。

 考えていたことと違うものが当たり、ちょっと困惑している。

「なぁ、グリエル。他の街でも、同じような事って起こっていると思うか?」

「多少なりとも起こっていると思います。ですが、完璧になくすことは難しいかと……蟻の例えではないですが、10割全員が真面目に働くのは難しいと思います。蟻みたいに2割が怠けることは無いでしょうが、無くすことは困難ではないでしょうか?」

「アリの例えって何? 知らないんだけど、教えてよ」

 綾乃は、働きアリの法則を知らないようだ。

「ありって言うのは、働く蟻が8割でサボる蟻が2割に別れるんだ。それの事だな。で、100匹の蟻がいたとして、よく働く蟻が2割の20匹、たまにサボるが働く蟻が6割の60匹、サボってばかりの蟻が2割で20匹に、大体別れるんだよ。この割合で、262の法則とって呼ばれることもあるだとさ。

 8対2でも262の法則でもどちらでもいいのだが、例えば200匹のよく働く蟻だけにすると、自然とこの割合に合わせて数が変化するんだよ。働き蟻が160匹、サボり蟻が40匹になるんだ。これがサボり蟻だけを200匹集めても同じ結果になるらしいんだ。それを働き蟻の法則って言うんだよ」

「へ~、知らなかった、働き蟻って言うくらいだから、めっちゃ頑張って働いているんだと思ってた」

 グリエルは、この法則にあてこすり、難しいと言っている。確かに人間なので、感情があり完璧に制御することは難しい。自分ではしっかりしていると思っても、周りから見ればそうでない人もいる。そういったバランスをとって、職場が保たれている感じだとさ。

 ディストピアから送り込んでいるメンバーに関しては、教育が徹底されており、しっかり働いていれば多少贅沢してもお金が余るくらいに給料が出ているので、その立場を捨ててまで悪さをしようとは考えないんだとさ。

 報告書の方は未だに気になるところは無いな。おっと、質問の対象が現場指揮官クラスになったみたいだ。庁舎で言うと班長とでも呼べばいいのかな? このあたりが一番情報を持ってそうだから、しっかりと聞き出してほしいところだ。
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