ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2006話 綾乃がまた危険物を作る

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「結論から言うとでござると、あの街にいる勇者は、侯爵が軟禁しているでござるな。国王が知っているかは謎でござるが、侯爵は有益な人間として、ブラック企業も真っ青な位働かせているでござるな。奴隷と違うのは、扱いが上等というだけでござるがな」

 金に生る木を使い潰すのではなく、出来る限る長く使うために、仕事以外の面は多少優遇されているってことか。稼いだ額に比べれば微々たる優遇な気がするけどな。

 労働時間は1日12時間、休みなしだとさ。1ヶ月で12時間×28日で……336時間。えっと労働基準法で、1週間で40時間の4週間分で160時間……残業が正規の労働時間より多いな。これはブラック企業も真っ青ですわ。

 日本も法律で色々定められているけど、抜け道やサービス残業なんかを使って、企業が得しているケースがあるって言うしな。

 従妹の兄ちゃんに、週6日で労働時間が60時間超えているのに、残業代が無くて用事で休みをとったら、有給届を出せとか言われたとか、ぼやいてたな。週40時間なら、20時間は残業しているわけだから、普通に休みを取ったのに、有給っておかしくね? 残業代も出してないのにな。

 労働基準法の事は詳しく分からないけど、週に40時間以上働いてもらうには、何かしらの申請をする必要があるとか、兄ちゃんが言ってたけど、それは残業代を出すこと前提の話なのに! とか怒ってたっけ? そう考えると……グリエルたちに働かせすぎじゃないか?

 最近は休むようになってくれたけど、前まではいつ寝てるんだ! って思うくらい働いてたからな……話し合いが終わったら、庁舎に行こうk……スパーンッ……いい音が鳴ったな。

「シュウ、今はこっちに集中しなさい。思考が明後日の方向に飛んでるわよ」

 おっと、綾乃に言われて、旅立っていたことに気付く。

「はぁ……もう一度話すでござるが、近くにいた高レベルの奴は、おそらくでござるが……侯爵の隠し玉みたいな奴でござる。暗部の戦闘部隊の人間ではござらんかね? あの人らは、真実の瞳を使っても所属がバレないように、契約などは結んでいないでござるからね」

「でも、それなら冒険者でも傭兵でもいいから身分を得たらいいのに、何でかそうしていないのよね?」

「そこらへんは、分かっていないでござるが、そいつは勇者の監視役っぽいでござるね。勇者がそこまでレベルが高くないのも、逃げられないようにあげさせていない可能性が高いでござる」

「了解。で、バザールはしばらく様子を見るべきだと思うか? それとも、すぐに突入して確保するべきだと思うか?」

「個人的には、さくっと終わらせたいでござるな。しばらく監視した感じでござると、月単位で監視しないと新しい情報が手に入らなそうでござる」

「今日の深夜に決行する形でも、問題ないかな?」

「暗部の人と少し相談してみるでござるが、来る途中に見かけた感じだと、既に臨戦態勢でござったな」

「もう準備ができてるとか言ってたもんな。よし、襲撃した後は商会の倉庫に退避か? それとも街の外がいいか?」

「少しでも疑いを無くすために、倉庫は止めて街の外でござるな。壁も見て回ったでござるが、スラム街の所に人が1人何とか通れる隙間があるでござる。裏の人間や通行料を払えない人たちが使っているようでござるな。先行して、暗部の人間に話を通しておいてもらうでござる」

「あまりそこに住んでいる人に迷惑かけるなよ」

「もちろんでござる。領主館でも騒ぎを起こしてもらい、その混乱に紛れて拉致するでござるよ。勇者を優先しているのは、高レベルの1人と1~2部隊、多くても20人くらいでござるよ。鬼人たちが全員を昏倒させることになると思うでござるよ」

 バザールは、話を通すというだけあって、監視中にいくつかのパターンを考えていたのだろう。暗部が作戦に参加するのは、監視前から決まっていたので、そこに合わせて何となくアウトラインをかいていた気がする。

 問題なさそうだと判断したので、綾乃にも一応聞いてみる。

「バザール、今回は殺しは無しのつもりなのよね? それならさ、1つ実験してほしいアイテムがあるんだけどいいかな?」

 おっと、バザールが暗部に話へ行く前に、綾乃が問題事をぶっこんできた気がする。

「物によるでござるが……今回は何を作ったでござるか?」

「催涙ガスならぬ、催眠ガス! ガス自体は、魔法薬を加工しただけなんだけど、それをガス状というか霧状と言えばいいのかな? その状態にして散布するのが難しかったのよ。で、ずっとその場に残り続けてたら、ガスマスクをつけてても突入できないから、短時間で効果が無くなるように調節してみたってわけ!」

 めっちゃいい笑顔で、思いっきり危ないアイテムを作成してやがった。

「……? 実験するなら、囚人でも使えばよくないでござるか?」

「そっちの実験はもう終わってるわよ。実戦で使ってみて、不具合がないか試してもらいたいのよ。あんた骨だから状態異常は無効でしょ? あんたの操るアンデッドだって問題なく動けるんだから、実験に持って来いかと思ってね」

 なるほどな。鬼人たちがもし寝てしまっても、バザールたちが何とかしてくれるってことか。

「う~~む、出来れば暗部に被害が出ないようにしたいでござるが、正式な装備として使われる可能性を考えると、ちょうどいい実験の機会という訳でござるか。使用上の注意点はあるでござるか?」

「ガスと言っても催涙弾みたいに吹き出すタイプじゃなくて、破裂と同時に全周囲に拡散するタイプだから、使用するときは、扉とかで遮断されている空間に逃げないと、巻き添えを食うことになるわね。持続型の万能薬で防げるから、使う時は全員飲めば問題ないけど、それだと実験にならないから困るのよ」

 思った以上にヤベエな。多少の隙間なら問題ないかもしれないけど、例えば廊下で使えば、家中に広まって扉の空いている部屋の中まで広がりそうな勢いだな。建物の中で使った時に、どれくらい拡散するのかの実験みたいなこともするかもしれないな。

「某は問題ないでござるが、暗部の人たちに聞いてダメと言われたら、諦めるでござるよ」

 話に決着がつき、バザールはここに来た時に使ったゲートを通って、暗部のいるマイワールドへ移動していった。
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