ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
2,005 / 2,518

第2005話 束の間のひととき

しおりを挟む
 昼食を食べ終わっても、食堂に居座っている綾乃を見て……

「なんで残ってるんだ?」

 思わず聞いてしまった。

「初期の報告ならすぐにくるだろうから、シュウの近くにいるだけよ。どうせ呼び出されるんでしょ?」

 ……確かに、言われてみれば、こいつの家は俺の家の敷地に隣接しているので、呼び出すだろうな。ダンジョン農園に作った指令室って言う線もあるけど、今回はあそこを使う必要はないから、どこでも問題なかったりするんだよな。

 綾乃がしばらく居座るということが分かったので、ブラウニーたちに食堂の隅に綾乃のスペースを作るようにお願いする。1分も経たないうちに、駄目人間製造機の様な一角が完成する。何も言っていないのに、呼吸をするかの如く移動する綾乃……

 気にしてもしょうがないな。俺はウッドデッキに出て、娘たちが世話をしているプランターを眺める。

 ふむ、芽ってもう出てるんだな。こんなに早いんだっけ? 種を植えてからどのくらいで発芽をするか知らない俺は、判断に困った。畑エリアの知識は全く役に立たないから、この状況が正常なのかどうなのか良く分からない……

 ドリアードも様子を見に来たようで、話を聞いてみた。そこで1つの事実を知る。

 プランターや畑で育っている植物たちは、本来の成長速度らしい。早いもので3日程、遅くても1週間ほどあれば目が出るのが普通らしい。畑エリアでは数倍の勢いで育つので、半日で芽が出ることがあるそうだ。

 アスパラは、普通でも1日に10~20センチメートルとか伸びるらしく、朝昼夕と3回収穫が必要になるのだとか。そのアスパラを畑エリアで育てると大変なことになるらしい。テレビの早送りみたいなスピードで、ニョキニョキと育つらしい……広さにもよるけど、悪夢だな。

 なので、成長の速い植物は、途中で植え替えているらしい。そうでもしないと、収穫しても食べられなくなってしまうからだ。畑エリアの一角に早く育たないエリアを作って、収穫時期に合わせて植え替えるんだとさ。手間がかかってるんだな。

 そう言えば稲とかって、刺激を与えると多少太く成長するらしいけど、他の食物ではやらないのか聞いてみた。結論は、物によるらしい。ストレスで強く育ったりするらしいのだが、ストレスに弱い植物はあるし、そんなことしなくても育つ植物ももちろんあるのだとか。

 植物にあった育て方が重要だということらしい。俺も知っているトマトで、あらためて説明してくれたよ。

 子どもたちの好きな甘いフルーツトマトは、水分を制限してトマトにストレスを与えることで、必死に生きようとして糖分を蓄えるから、あれだけ甘くなるのだ。

 ドリアードと話しながら、プランターの様子を眺めていると、いくつかのプランターでは芽がまだ出ていなかった。もう出ていないとおかしいのに……どうして?

 植えた時期があっていないので、タネのまま発芽しなかったということが正解らしい。娘たちに失敗から学んでほしいと、時期に合わない植物も育てさせてみるとか言ってたっけ? それがここのプランターたちなんだな。

 そんな話をしていると、シンラがウッドデッキに出てきた。後ろからプラムとシオンが付いてくるのは、いつもの光景だな。よたよた歩きながら、自分たちの世話をしている鉢の前に向かって行く。

「ドリー、これ、こう?」

 なんだと! シンラよ、お前ってそんなにキレイに発音できたのか!? 俺の事なんて、おい! とか良く分からない言葉でしか呼ばないのに、ドリアードの事をドリーって呼んでるし、このやり場のないモヤモヤをどうすればいいんだ!

 スパーンッ!

 痛くないけど、いい音が鳴った。これはハリセンだな。しかも謎技術を詰め込んだ、綾乃特製のハリセンだ。

「シュウ、またくだらない事考えてたんでしょ。それよりもバザールからまだ連絡ないの?」

「どうでもよくないわ! シンラがドリーってドリアードたちの事を呼ぶのに、俺の事はお父さんでもパパでもいいのに、呼んでくれないんだぞ!」

「……本当にどうでもよかった。ちなみに、この子たち私の事は、あやーって呼んでくれるわよ。シュウより仲がいいかもしれないわね」

 なんだと……

 スパーンッ!

 今度は若干痛かった。誰かと思ったら、シンラたちに付いてきたライラだった。小言を貰ってしまった。

 シンラたちが何をしているのか気になったので、様子をうかがっていると、植物を育てているという認識があるのか、水やりについてドリアードに相談しているみたいだ。早く育ってほしいから水をたくさんあげたいようだけど、あげすぎると死んでしまうと教わっていたので、確認しているみたいだ。

 この歳でそこまで理解しているとは……こいつ天才か!

 っと冗談はさておき、この子たちは何を育てているのだろうか? ドリアードたちに聞いてみたが、秘密と言われてしまったので、大きくなるのを期待して待つしかないようだ。

 世話が終わると、いったん子ども部屋に戻り、クッションを持ってまたウッドデッキに出てきた。何をするのかと思えば、日当たりのいいところにある椅子にクッションを置き、3人で埋まるように椅子に座ってくつろぎ始めた。

 ブラウニーたちがストロー付きコップで飲み物を運んできて、それを受け取りオッサンくさく、プハーッとか言ってやがる。こいつの生態は謎過ぎるな。プラムたちはシンラの真似をしてはいるが、プハーッとまではしていないな。

 そんな様子に苦笑していると、バザールから連絡が入る。一応会って話したいとのことで、使う予定の無かった指令室へ向かう。もちろん綾乃も付いてきているぞ。近未来的な監視室で働いているスプリガンの皆さんに挨拶をして、奥へ入っていく。

 ここにはゲートがあるのだが、実は何処ともつながっていない。このゲート自体はマイワールドに繋がっているのだが、その先へ移動する方法が無いのだ。俺はゲートをくぐり、暗部が使っているマイワールドにゲートを作る。そこを通ってすぐにバザールが現れた。

 指令室へ戻り、飲み物を持って来てもらい、監視の途中報告を聞く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...