ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1964話 気にしすぎたか?

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 密度が濃く、今までの認識とはかけ離れた訓練を行った次の日、外は晴れていた。

 バザールの話では、4時頃まで降り続けていたが、ある時を境にピタッと止んだそうだ。外に出て地面の確認をしたそうなのだが、やはり大雨が降った後とは思えないような地面の状態だったらしい。

 水はけがいいって言うレベルじゃないな。専門家ではないので自然現象には詳しくないが、昨日振り続けたスコールのような雨が、乾燥して砂だらけの砂漠で降ったとしたら、捌く全体が水の底に埋もれる可能性すらありそうだ。それくらい降ったということだ。

 そんな雨が降ったのに、大した影響が見られない森や山。地滑りを起こしたような痕跡もなく、小雨が降った後と言われても分からないレベルの状態だった。

 考えることを放棄した俺は、そう言うものだと割り切り今日の予定を立てていく。

 バザールが確認している、何人か集まっている洞窟の様子だが、時々外の様子を見に来ていた数人以外は、ずっと洞窟の中にいたようだ。

 元々知り合いでもない集団だと予測されるのに、比較的広いとはいえ洞窟以外で行動が出来ないのに、問題が起きている様子がないのは不思議だ。知り合いだったとしても、気を許せるような仲間でなければ、かなりぎすぎすした雰囲気になりそうなものだけどな……

 そう言った様子がないのは、恐ろしく統率の取れる統率者か、俺たちが把握している以上に洞窟が広いのか、催眠術や暗示の様なものにかかっている……くらいしか思いつかないな。

 後半2つなら何の問題も無いのだが、前者だとかなり面倒な相手だと言わざるを得ない。

 戦力差が4対6くらいで前者と後者が戦っても、前者の方が勝率は高いと思う。それだけ統率された集団は厄介なのだ。そこに、Aランクやシングルクラスの能力者がいれば、苦戦は必至だろう。

 特に、サイレントアサシンの奇襲を潰せる勇者の称号持ちが、かなり厄介である。そいつが強ければ、俺とバザールは戦闘がしづらくなるし、そいつが仲間だと認識していれば、そいつらにも勇者の能力が伝播する。そうなれば、戦わずに放置する選択肢もあるくらいだろう。

 確認しないまま放置しておくのは愚策なので、戦力を確認しておくのは戦略的に正しい事だと思う。ライガもバザールも同意してくれたので、洞窟から外へ出る集団を奇襲する方向で話が進む。

 洞窟の中だと迷う以上に、出口を封鎖される可能性も捨てきれないので、外に出てきた戦闘班を襲うことにしたのだ。上手くいけば戦力を減らせるうえに、敵の強さもある程度把握で来るので、一石二鳥というものだ。

 俺たちが辿り着く前に出発されたら困るので、急いで支度をしてから拠点を後にする。

 雨上がりの独特な森の匂いが充満する中を、慎重に歩いていく。普段なら枝の上を行くのだが、枝に乗り移った僅かな衝撃で、葉っぱなどについた水滴が雨のように落ちるので、今日は地面の上を移動している。

 俺たちが辿り着く5分前くらいに、戦闘班と思わしき集団5人が外に出てきて、何やら話し合っていたそうだ。到着することに話し合いが終わり、北へ向かって動き始めたのを確認する。

 俺たちの追跡ルートは、奴らの進んだ痕跡をたどるというルートだ。洞窟への退却を防ぐ効果と、一番索敵が疎かになりやすい後ろを陣取ったのだ。

 注意をしながら歩いてはいるが、油断があるのは見て取れた。

 ハンドサインを使って、奇襲するタイミングを計る。

 洞窟から2キロメートルほど離れた位置で、奇襲を仕掛けることにした。

 会話をすることなく動きを止めることなく進んでいる敵集団は、出発前に俺らのように行動方針を決めているので、道中に余計な会話を必要としないのだろう。集団で移動するので、1人の時より見つけられやすい。それを踏まえて考えると、道中に無駄に話して見つかるリスクを下げるという意味では正しい。

 俺たちと同じと言ったが、俺は見つけてほしくてわざと音を立てたり、気配を大きく出していたりしていたな。うむ、気付かなかったふりをしよう。

 襲撃地点に2キロメートルほど進んだところを選んだのは、ちょうどジャングルと森の境がそこら辺にあるからだ。出る少し前に攻撃を仕掛けて、ジャングルから追い出して追撃を仕掛ける予定だ。初めはライガ1人で倒しやすそうな1人を戦闘不能にする予定だ。

 できればその時点で死なれると困るが、死んでしまったらそれまでだと考えている。情報を引き出すために、いらぬ怪我をするつもりはこちらにはない。相手にとっては、死んでしまった方が楽かもしれない状況になるけどな。

 俺は大きく大回りをして、敵が出てくると予想している地点に先回りする。奇襲によって慌てているであろう敵が相手なので、多少痕跡を残しても急いで移動している。

 バザールから、そろそろ襲撃を仕掛けると連絡が入り、登った木の上から境界線を見張る。

 しばらくすると、ジャングルの方からドカーンと、何かが爆発するような音が聞こえる。ライガが力任せに地面を殴った音だと思う。もし敵がそこにいたら……生きてはいられないだろう。

 10秒くらい数えた頃に、転がるように3人の人間が俺の視界に飛び込んできた。2人足りないが、先ほどの攻撃で死んだか負傷でもしたのだろう。

 少しズレた位置に出てきたのは誤算だが、ジャングルの方を警戒しながら3人で集まり、距離をとろうと動いている。

 そこに優雅に歩いて現れるライガ。長身でスタイルも良く、オオカミのように凛々しい顔は、正直羨ましいと思うくらいにかっこよかった。

 姿を現したのに逃げようとしているということは、勝てないと判断しているからだろう。それでも誰かを見捨てて逃げるような仕草は無い。この3人は、それなりに親しい仲なのかもしれないな。

 俺のいる木から30メートルほど先にいるので、結構距離が離れているが……間には障害物は無い。足に力を籠め、跳躍する。

 勘で跳んだので、予想以上に距離が出てしまったことに慌てるが、着地と同時に反転して距離を縮める。

 着地する前に気付かれたが、その動きに合わせてライガも走り出していたので、どちらを対処するかで戸惑ったのだろう。その一瞬で、俺が1人、ライガが1人仕留めた。最後の1人になっても抵抗を続けるが、ライガの当身によって気絶する。
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