ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1785話 なんとなくあやしい

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 机の上にあった3枚の紙の書類以外、特別な物は無く問題なく仕事が終わった。

 一息ついたところに、グリエルとガリアが執務室へ入ってきた。勇者の動きについての報告会が始まる。でも、ゼニスがいないぞ?

 ゼニスは、いざという時のために、昨日の報告の後にフレデリクへ向かったらしい。昨日は、特に動きがなかったと、一言報告があり終わったのだが……その後に何かあったのか?

 いや、特に何もなかったらしいが、フレデリクの仕事が終わったらリーファスの仕事も任せるため、グリエルとガリアの代わりに、領主代行と話をしてきてほしいと言われて、フレデリクの支店への手伝いを名目に出張に出たらしい。

 後は、商会のトップがたまたま来て、勇者たちが何かリアクションを起こさないか、1つの判断材料にするつもりらしい。安全の確保のために、鬼人を4人連れて行っている。後は、人造ゴーレムを隠して4体連れて行っているので、支店の戦力と合わせれば、勇者たちでも時間は稼げるだろう。

『監視していることは黙っていますが、こちらを手伝ってもらっていることは事実なので、挨拶をして様子をうかがっています。勇者の従者たちは、まじめに働いている印象ですが……勇者2人は、少し不真面目な印象でした。特に、綺麗な女性を見ると、目で追いかけている印象です』

「ん~、それで仕事の手が止まっているわけじゃないよな? 俺だって、付き合いたいとか結婚したいとかは別にして、綺麗な人がいたら何となく目で追うことはあるな。そのたびに妻たちに抓られて痛い思いをするけどね。回数が多かったり、手が止まるなら話は変わるけどな」

 ちょっと、痛いから脇腹抓るのは止めてくれ。男なんだから仕方がないじゃん! 条件反射みたいなものなの、君たちがシルキーたちの甘い物に目移りするような、それと同じ感じなんだってば! あ、分かってもらえた? 好きなのは君たちだけだから安心してくれ。

 勇者たちは敵、という考えが元に行動をしているので、ちょっとしたことに目が行くのは仕方がないことだと思う。もし判断をミスって、俺が狙われるようなことがあれば、ゼニスの立場が無くなる可能性があるからな。

 俺が重宝しているとはいえ、ゼニスの判断ミスで俺がもし怪我でもしようものなら、妻たちに何を言われるか分からない。それだけでなく、ディストピアの上位陣に色々言われるだろう。恩を感じている鬼人たちは、物理的に排除する可能性さえある。

 あの一族は、狂信者に近いからな……ん? その狂信者の一族は、どう判断しているんだ?

『鬼人の方ですか? ちょっと呼んできますね』

 多分だが、鬼人の人たちはゼニスの護衛以外にも、フレデリクに出向しているメンバーがいるはずだ。そのメンバーと接触をしているだろう。そいつらが判断したことも、聞いてみたい気がするな。

『お待たせしました。シュウ様、お久しぶりです』

「おぉ、久しぶり。今回は、族長のお前自ら護衛として付いていっているのか?」

 画面に映し出されたのは、鬼人の族長であるリュウだった。鬼人のまとめ役で、一番強いリュウが自ら出向いていっているようだ。

『もちろんです。連れてきたメンバーは、戦闘力に長けた者を上から3人連れてきています。他に、諜報の得意な者を10人連れてきています。それで、お聞きしたいことがあると聞いたのですが?』

「そんなに連れて行って大丈夫なのか?」

『シュウ様は、そんなことお気になさらずとも、問題ありません。最近は、前に比べて出番が少なくなってきていますから、この程度の人員がいなくなったところで、問題はありません。可能でしたら、もう少し連れて来たかったのですが……』

「あ~分かった分かった。で、聞きたいことなんだけど、勇者たちやその周辺を監視していると思うけど、君たちから見て何か違和感やおかしなところはあったかな?」

『そうですね。勇者2人は、ただの女好き……というよりは、犯したいだけでしょう。私たちが気になったのは、勇者のパーティーの魔法使い風の見た目をした男ですね。何か企んでいそうな雰囲気がありました』

 決定的な証拠はないが、疑わしいようだ。一見真面目に働いているように見えるが、他のメンバーも商会の職員同士の話に聞き耳をたてているようだ。だけど、その話を聞いた俺は……何か嫌な予感がした。何かを忘れているような、そんな違和感だ。

「ゼニス、今はドッペルか?」

『はい、危険があるといけないので、ドッペルを使っています。体は、ホームのある一角にいます』

「勇者の称号は、魔物を見分けられるはずだから、ドッペルはバレていると思う。最悪、ドッペルが殺される可能性があるから注意しろ。最悪のシナリオとしては、商会長がドッペルという魔物で、乗っ取られていた。そのドッペルを倒したから、商会は自分たちの物……という主張ができるかもしれない」

『……可能性は、ゼロではありませんね。ドッペルで会いに行ったのは、拙かったですかね?』

「ドッペルで正解だ。本当に殺されたら、どうにもならん。乗っ取られても、勇者たちを排除すればどうにでもなる。いや、支店を乗っ取られてもあいつらには何もできんな。商会の経営陣は、全員俺の部下なんだから乗っ取られたら、俺の所に戻ってくるだろ?」

『確かにそうですね。商会が乗っ取られたところで、支店が全て離反してこちらにつきますね。支店長には、それだけの権限を与えていますからね。少し冷静さを欠いていたようです。もしドッペルが、敵として排除されたら、勇者は黒ということでいいですか?』

「俺がダンジョンマスターだということは、知っていると思うから、魔物を召喚できるダンジョンマスターが、魔物を使役して色々やっててもおかしくないと考えているなら、排除しないと思う。何か企んでいるなら、排除する可能性は高いと思う。だから、ドッペルが殺されたら黒だと判断しよう」

『分かりました。リュウさん、ドッペルの身に何かありましたら、勇者たちをお願いします』

『心得た。最悪殺してもよろしいですか?』

「無理してリュウたちが傷付くのは本意じゃない。だから、殺しても問題ない。あくまで可能なら、リュウたちが怪しいと思った、魔法使いっぽい奴だけ捕らえてもらえればいい」

『了解です』

 今日も大きな動きは無かったようで、対応について少し話し合いをした後に、解散となる。
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