ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,780 / 2,518

第1780話 味覚狩り

しおりを挟む
 自宅への帰り道、ジュリエットとマリアを連れて、隣を歩くランの背中をモフモフしながら、今日の午後の予定を考えている。

 仕事が予定より早く終わってしまったため、空いてしまった午後の時間をどう使うか、悩んでいるのだ。なんとなく、ゲームや読書という気にはならないので、今まで体験したことない何かをしてみたいな。こういう時は、妻たちにも聞いてみよう。

「したことないことですか? そうですね……最近呼んだ本の中に、秋の味覚狩りみたいなセリフがありましたが、普段の収穫とは違うのですよね? それをしてみては、いかがですか? それならPDを使えば、ダンジョン内で再現できるのではないですか?」

 秋の味覚狩り……ディストピアに来てから、季節関係なく食材が採れるから忘れていたが、秋にはそういったことが行われていたよな。シュウは、何年も昔の記憶をほじくりだした。テレビとかではよく見るけど、実際にやった事なんてなかった気がする。

 秋の味覚狩りでイメージするのは……山かな? 海の幸はもう少し寒くなった時期だろう。じゃぁ、山菜か? 俺の好きなタラの芽は、確か春だったな。雪解けから、温かくなる時期だった気がする。

 あ~、栗やキノコは秋のイメージだな。子どもたちも参加できるなら、栗は危険だから……キノコ狩りとかなら、良さそうかもしれないな。うん、キノコ狩りをしてみよう!

 ジュリエットとマリアに伝えてみると、いいですね、と答えてくれたので、今日の午後はキノコ狩りにしよう。ブラウニーたちには、夕食にキノコ尽くしのメニューにしてもらえば、面白そうだな!

 家に帰ったら、娘たちが迎えてくれて、ちょっと遅れて逃げているシンラと、追っているプラムとシオンがやってきた。お前らは相変わらずだな。何が面白くて、毎日毎日追いかけっこをしているのやら。

「ウル、今日はもうすることってなにもないか?」

「ん?」

「あ~、今日は早く帰ってこれたら、午後に時間が空いてるんだ。午後すること無ければ、みんなで味覚狩りに行こうかなってね」

「「「みかくがり?」」」

 ミーシャたち3人がシンクロして、首を傾げている。

「味覚狩りって、収穫とかを体験することじゃなかったっけ?」

「ウルの指摘は間違いじゃないけど、今日は味覚狩りでも秋の味覚狩りだ! ここに住んでると、秋の味覚って言われてもわからないだろうけど、今回はキノコ狩りをしてみようと思う!」

「「「キノコ!」」」

 ミーシャたちのテンションが上がっているが、この子たちは嫌いなものが無く、何でも食べるので雰囲気にテンションが上がっているだけだ。

 ウルは、どんなキノコが採れるのか考えているようだ。ミーシャたちは勢いで喜ぶのだが、ウルはしっかり考えて喜ぶタイプなのだ。

 抱っこを求めてきたシンラを抱きかかえると、プラムとシオンが自分も抱っこしろと、足を攻撃してくるのでシンラの両側に来るように抱こうとすると、シンラから止めろ! と攻撃を受けるが無視である。

 この家はな、男より女の方が強いのだ。シンラ、よく覚えておくんだぞ。何せ男は、俺・シンラ・レイリーの3人しかいないんだからな。上手く立ち回らないと、大変なことになるぞ!

 俺の心の声を聞き取ったのか、シンラは笑顔が張り付いたような顔になってしまった。

 本当にすまん。だけど、今日は2人で風呂に入ろう。娘も母親たちも無しで、一対一だ。いや、もしかしたらレイリーおじいちゃんも来るかもしれないけど、それはいいよな?

 シンラはぐるりとこちらを向いて、親指を立てている。お前、どこで覚えたんだ? どうせなら、寝る時も一緒に寝るか。プラムたちには、ライを貸し出してやろう。ライ、今日はプラムたちと寝てくれるか?

 振り返ると、ライが固まっていた。おい、クロとギン! 羨ましいからって、ライをいじめるんじゃないぞ? いじめなければ、娘たちにたまには一緒に寝てあげてってお願いしてやるから。

 そうすると、ライに向かって威嚇していたクロとギンが大人しくなり、こちらを向いて早くミーシャたちに言え! と催促しているように見える。後で言ってやるから、少し待っていなさい。

「で、時間はどうなんだ?」

「お母さんたちが、午後は何かするって言ってた気がするけど、何だったかな? ちょっと聞いてくるね」

 ウルが母親たちの所へ向かおうをすると、シンラたちを抱いて羨ましかったのか、ミーシャたちが俺の足にしがみついていたが、ウルについて母親たちに話しを聞きに行くみたいだ。

 来るっと回れ右をした娘たちに、ちょっと寂しさを覚えるが……今はお前たちの方が優先だな。俺が少し寂しい気持ちになった瞬間に、プラムとシオンから顔を叩かれたので、意識を下の子たちに戻したのだ。

 普段はかまおうとすると逃げるのに、こういう時は察しがよくて本当に困る。なんか、猫みたいな感じだな。忙しかったりするときには、かまえって言うのに、こっちがかまいたい時はこっちにくんな! みたいな空気出すもんな。

 その点、上の子たちは……あ~、すまんすまん。

「そうだ、お前たちもキノコ狩り行くか?」

 キノコは分かっているが、キノコ狩りと言われてもピンとこないだろう。3人揃って首を傾げている。だけど、キノコは分かるので、キノコ食べる、みたいなことは言っている。

 食堂へ向かうと、まだ昼食の時間ではないので何も並んでいないが、良い匂いが漂っている。

 シルキーたちに声をかけると、アマレロが飛んできた。

「今日、午後の時間が空いたから、キノコ狩りに行きたいと思うんだけど、今日の夕食ってまだ変更可能か?」

「どういった物を考えていますか?」

「キノコは秋の味覚として考えているから、キノコ尽くしでもいいし、秋の味覚てんこ盛りでもいいかなって思っているんだけど、難しいか?」

「食事に関しては、問題ありません。確か……ありました。秋の味覚でしたら、サンマとかどうですか? ちょっと前に、湖の方で捕れたみたいで多めに仕入れています」

 サンマか……いいね!

「オーケー、メニューは任せるから、秋の味覚のフルコースでお願い。後、キノコ狩りをしたら、すぐに焼いて食べたいから、七輪と炭の準備もお願いしていいか?」

 かしこまりました~、と言って、アマレロはキッチンへ飛んで戻っていった。

 下の子たちは、分かっていないが、美味しいものが食べれるのだろう、とテンションをあげている。可愛いな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...