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第1776話 方針が決まる
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「遅くなって、すいません。支部からの報告書を読んでもらったので、お分かりだと思いますが、報告書が届く20分ほど前に勇者たちが商会へ保護を求めてきたそうてす。遅くなってしまったのは、追加の報告を直接受けていました」
遅れてやってきたゼニスが、そう言って話し合いが始まる。
立派な俺の執務室ではなく、マイワールドに作った領主代行たちが集まる会議室の隣に作った、大会議室だ。俺の執務室より、かなり広い。全てがダンジョンマスターの能力で作られているので、建築常識を無視してる気がする大きな部屋だ。
始めは俺の執務室で、カメラなどを繋げて話し合いをしていたのだが、領主代行の1人が会議室を使わないのかと聞いてきたため、その存在を思い出し移動をしたのだ。
会議室では人数的に入りきらなかったので、新しく大きな部屋を作り大会議室としたのだ。あまりにも広いので、この先使われるか不明である。
「私が来るまでの話し合いの中で、通ってきた小国郡にも商会はあったのに、なぜそこで保護を求めなかったのか? という疑問ですが、フレデリク担当の支店長も気になったようで質問したそうです」
おぉ、支店を任されるだけあって、しっかりと確認してくれていたのか! 優秀な人材のようだな。
「嘘か本当かは分かりませんが、通ってきた支店のある街の国は、全部聖国よりの考えで切っても切れない関係もあり、助けを求めるのには都合が悪かった、と言っていたそうです」
あからさまな聖国シンパではないが、聖国に依存しているということだろうか? 小国であれば、食糧の不安もあり依存傾向になってもおかしくないか? そんな聖国シンパの国では、保護を求めるのはリスクがあったか?
辻褄はあっているが、聖国にいた勇者ということで、どうにも不安が拭えない。これは俺だけでなく、ディストピア上層部全員の共通意見だ。
「そういえば、冒険者ギルドや商業ギルドなんかに助けを求めなかったのは、何か理由があるのかな? 冒険者ギルドって、勇者を厄介者扱いしていると思うけど、それはダンジョンを無理やり壊す奴らがいるから、警戒してるだけじゃなかったか?」
疑問に思ったことを口にした。
「それには、私が答えるわ。確かに冒険者ギルドは、勇者の扱いに困っています。今までに勇者と敵対してきたこともあります。
ですが、友好的な勇者も多くいましたので、冒険者ギルドは勇者の行動次第で対応を決めています。勇者たちが保護を求めなかったのは、やましいことがある可能性は、ゼロではないと思います」
ミリーが説明してくれた。
俺の近くに厄介な勇者が来るのは、ディストピアやゴーストタウンに、ダンジョンマスターがいる可能性が高いと判断して来ているのだろう。
そもそも、問題を起こさない勇者は、俺の近くに来ないのだろう。勇者全体が面倒なのではなく、俺に近付いてくる勇者たちが面倒なのだ。
勇者には、ろくな奴がいないと思っていたが、実はそうではなかったようだ。勇者は厄介だらけだから、気付けていなかった真実だな。実際マップ先生でマーキングしてある勇者もたくさんいるが、そいつらは俺に面倒をかけていないもんな。
マップ先生による情報では、フレデリクにいる勇者たちだが、13人ほどのパーティーで勇者が2人いるようだな。だけど、こいつらレベル400前後もあるんだよな……それが、俺たちを不安にさせる原因なのだ。
妻たちの半分ほどのレベルしかないが、400と言えば……俺の従魔たちは、危険かもしれない。圧倒的にステータスが高くても、致命傷を受ける可能性があるのが、勇者という称号の厄介なところだ。
それにしても、やましいことがある可能性ね。尚更近付きたくないな。ギルドの件は気になったので確認を取ると、『ギルドには所属していなかったし、聖国に知られる危険性があったため、初めから選択肢になかった』と。
「もっともらしいですが、シュウ様の商会に助けを求めるのは不自然ですね。ジェノサイドキャラバンもあり、戦闘能力を売りにしても効果が薄いと考えるはずです。自分たちの力を商品とするなら、もっと好条件の商会はあります」
ゼニスの意見はもっともだな。
「もし、その勇者たちが何かしらの確信を持って、商会に接触してきているとしましょう。ですが、商会の支店にシュウ様の正体を明かしていると考えず、長距離を連絡する手段がないと、考えている可能性はないでしょうか?
その上での仮定ですが、ダンジョンマスターの関係者に知られる前に、ある程度の地位のある立場の人間に取り入いってしまえばいい……みたいな、考え方あるかもしれません」
あれは……名前は忘れたが、メギドとバレルの領主代行だったな。
「ありそうな話ですね。結局のところリスクマネジメントは、リスクがある前提で考える必要があります。絶対はないから当たり前なのですが、最悪の状況を複数想定して対応するしかないと思います。そして、私たちが考えうる最悪の状況とは……」
ピーチが流れをぶった切り、話し始めた。
最悪の状況とは、俺の死のようだ。言葉にしなくても、俺以外の人は分かっているみたいだな。俺からすれば、親しい人の死が最悪の状況なのだが! カエデが引き継ぐようにして、
「シュウ、確かにあなたな考えている状況は、悪いものであるのは間違いないわ。でもね、それは最悪ではないの。私たちにとっての最悪は、あなたの死なのよ。
だからと言って、ここにいる誰が死んでもよしという訳でないわ。私たちが死なないことを前提に、対策を考えていきましょう」
そう言うことで、対策会議が開始された。
前提として、生身で勇者たちの前に出ないということだ。俺はもともと会うつもりはないんだけどな。俺は生身では危険だが、妻たちはドッペルより生身の方が安全なんだよな。
妻たちは眷族ではないので、勇者たちの称号は効果はないし、生身の方がドッペルより強いからな。とはいえ、勇者たちに近寄らせるつもりはない。何かあったときの戦力は、
「綾乃、人造ゴーレムは何体動かせる?」
「そうね、人型が20と魔物型が50くらいかな? 作ってほしいとも言われていなかったから、現状どこかで動いている30を合わせて、100体は確保してるわよ。シュウが確保していてほしいって言ってた数よ。追加で作った方がいいの?」
「いや、それだけあれば十分だな。いつでも動かせるようにしといてくれ。バザール、S級スケルトンは何体くらいだ?」
「そうでござるな。連携がしっかり取れるのは、256体でござるな。一大隊分でござるよ」
「例の作戦も使えるか?」
「例の? あぁ、フレンドリーファイア前提の作戦でござるな。もちろん、使えるでござるよ。スタングレネードも装備させているでござるし、人がいない場所での戦闘であれば、あれの準備もできているでござる」
まさか、あれの準備もしていたのか。戦闘になれば、敗けはなさそうだな。
勇者たちは、支店長に対応を一任して、勇者の動きはスプリガンに監視をお願いしよう。
もし、何かあれば再度集まってもらうことを伝え、解散となる。
遅れてやってきたゼニスが、そう言って話し合いが始まる。
立派な俺の執務室ではなく、マイワールドに作った領主代行たちが集まる会議室の隣に作った、大会議室だ。俺の執務室より、かなり広い。全てがダンジョンマスターの能力で作られているので、建築常識を無視してる気がする大きな部屋だ。
始めは俺の執務室で、カメラなどを繋げて話し合いをしていたのだが、領主代行の1人が会議室を使わないのかと聞いてきたため、その存在を思い出し移動をしたのだ。
会議室では人数的に入りきらなかったので、新しく大きな部屋を作り大会議室としたのだ。あまりにも広いので、この先使われるか不明である。
「私が来るまでの話し合いの中で、通ってきた小国郡にも商会はあったのに、なぜそこで保護を求めなかったのか? という疑問ですが、フレデリク担当の支店長も気になったようで質問したそうです」
おぉ、支店を任されるだけあって、しっかりと確認してくれていたのか! 優秀な人材のようだな。
「嘘か本当かは分かりませんが、通ってきた支店のある街の国は、全部聖国よりの考えで切っても切れない関係もあり、助けを求めるのには都合が悪かった、と言っていたそうです」
あからさまな聖国シンパではないが、聖国に依存しているということだろうか? 小国であれば、食糧の不安もあり依存傾向になってもおかしくないか? そんな聖国シンパの国では、保護を求めるのはリスクがあったか?
辻褄はあっているが、聖国にいた勇者ということで、どうにも不安が拭えない。これは俺だけでなく、ディストピア上層部全員の共通意見だ。
「そういえば、冒険者ギルドや商業ギルドなんかに助けを求めなかったのは、何か理由があるのかな? 冒険者ギルドって、勇者を厄介者扱いしていると思うけど、それはダンジョンを無理やり壊す奴らがいるから、警戒してるだけじゃなかったか?」
疑問に思ったことを口にした。
「それには、私が答えるわ。確かに冒険者ギルドは、勇者の扱いに困っています。今までに勇者と敵対してきたこともあります。
ですが、友好的な勇者も多くいましたので、冒険者ギルドは勇者の行動次第で対応を決めています。勇者たちが保護を求めなかったのは、やましいことがある可能性は、ゼロではないと思います」
ミリーが説明してくれた。
俺の近くに厄介な勇者が来るのは、ディストピアやゴーストタウンに、ダンジョンマスターがいる可能性が高いと判断して来ているのだろう。
そもそも、問題を起こさない勇者は、俺の近くに来ないのだろう。勇者全体が面倒なのではなく、俺に近付いてくる勇者たちが面倒なのだ。
勇者には、ろくな奴がいないと思っていたが、実はそうではなかったようだ。勇者は厄介だらけだから、気付けていなかった真実だな。実際マップ先生でマーキングしてある勇者もたくさんいるが、そいつらは俺に面倒をかけていないもんな。
マップ先生による情報では、フレデリクにいる勇者たちだが、13人ほどのパーティーで勇者が2人いるようだな。だけど、こいつらレベル400前後もあるんだよな……それが、俺たちを不安にさせる原因なのだ。
妻たちの半分ほどのレベルしかないが、400と言えば……俺の従魔たちは、危険かもしれない。圧倒的にステータスが高くても、致命傷を受ける可能性があるのが、勇者という称号の厄介なところだ。
それにしても、やましいことがある可能性ね。尚更近付きたくないな。ギルドの件は気になったので確認を取ると、『ギルドには所属していなかったし、聖国に知られる危険性があったため、初めから選択肢になかった』と。
「もっともらしいですが、シュウ様の商会に助けを求めるのは不自然ですね。ジェノサイドキャラバンもあり、戦闘能力を売りにしても効果が薄いと考えるはずです。自分たちの力を商品とするなら、もっと好条件の商会はあります」
ゼニスの意見はもっともだな。
「もし、その勇者たちが何かしらの確信を持って、商会に接触してきているとしましょう。ですが、商会の支店にシュウ様の正体を明かしていると考えず、長距離を連絡する手段がないと、考えている可能性はないでしょうか?
その上での仮定ですが、ダンジョンマスターの関係者に知られる前に、ある程度の地位のある立場の人間に取り入いってしまえばいい……みたいな、考え方あるかもしれません」
あれは……名前は忘れたが、メギドとバレルの領主代行だったな。
「ありそうな話ですね。結局のところリスクマネジメントは、リスクがある前提で考える必要があります。絶対はないから当たり前なのですが、最悪の状況を複数想定して対応するしかないと思います。そして、私たちが考えうる最悪の状況とは……」
ピーチが流れをぶった切り、話し始めた。
最悪の状況とは、俺の死のようだ。言葉にしなくても、俺以外の人は分かっているみたいだな。俺からすれば、親しい人の死が最悪の状況なのだが! カエデが引き継ぐようにして、
「シュウ、確かにあなたな考えている状況は、悪いものであるのは間違いないわ。でもね、それは最悪ではないの。私たちにとっての最悪は、あなたの死なのよ。
だからと言って、ここにいる誰が死んでもよしという訳でないわ。私たちが死なないことを前提に、対策を考えていきましょう」
そう言うことで、対策会議が開始された。
前提として、生身で勇者たちの前に出ないということだ。俺はもともと会うつもりはないんだけどな。俺は生身では危険だが、妻たちはドッペルより生身の方が安全なんだよな。
妻たちは眷族ではないので、勇者たちの称号は効果はないし、生身の方がドッペルより強いからな。とはいえ、勇者たちに近寄らせるつもりはない。何かあったときの戦力は、
「綾乃、人造ゴーレムは何体動かせる?」
「そうね、人型が20と魔物型が50くらいかな? 作ってほしいとも言われていなかったから、現状どこかで動いている30を合わせて、100体は確保してるわよ。シュウが確保していてほしいって言ってた数よ。追加で作った方がいいの?」
「いや、それだけあれば十分だな。いつでも動かせるようにしといてくれ。バザール、S級スケルトンは何体くらいだ?」
「そうでござるな。連携がしっかり取れるのは、256体でござるな。一大隊分でござるよ」
「例の作戦も使えるか?」
「例の? あぁ、フレンドリーファイア前提の作戦でござるな。もちろん、使えるでござるよ。スタングレネードも装備させているでござるし、人がいない場所での戦闘であれば、あれの準備もできているでござる」
まさか、あれの準備もしていたのか。戦闘になれば、敗けはなさそうだな。
勇者たちは、支店長に対応を一任して、勇者の動きはスプリガンに監視をお願いしよう。
もし、何かあれば再度集まってもらうことを伝え、解散となる。
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