1,691 / 2,518
第1691話 子どもたち
しおりを挟む
そう言えば、俺の寝相とシンラの寝相がシンクロしていた。正確に言うと、俺もシンラも左右から抱き着かれた状態で、寝返りをうてない状況だったのだ。
もしかして、シンラの抱き着かれ癖って俺の所為だったのかな? そんな事を考えてしまうようなシンクロ率だった。先に起きてお茶を飲んでいた妻が撮った写真を見て、みんなで笑ってしまったくらいだ。シンラは不機嫌な面をしていたけどな。
プラムとシオンより先に起きたシンラは、近くで寝ていた姉たちを起こして救出してもらい、元気いっぱいにベッドの上をハイハイして、俺に頭突きをかましてきた。自分も痛くて泣いていたが、回復魔法をかけてやり痛みを取ると、定位置と言わんばかりに俺の膝の上におさまっていた。
不機嫌な面になったのは、この時に写真を見せてもらいみんなが笑ったせいで、ふくれっ面みたいになっていたのだ。
その顔が可愛かったのか姉たち抱き着かれて、完全におもちゃにされていた。その内お前には女難の相(姉妹)とかステータスに表記されそうだな。
機嫌を悪くしたシンラの機嫌を直すのに苦労した。好物のハンバーグを朝出してやると言ったら、ふくれっ面から笑顔になったけど、ピースをして2つ要求してきた。ちゃっかり者だ。シンラの2つなんて、俺の1つより量は少ないんだけどな。
シンラの面白い所は、この年頃なら照り焼きソースとか、少し甘めのタレが好きと思いきや、おろしポン酢とか和風ドレッシングなどをかけて食べるのが好きなんだよな。2つ要求したってことは、そういうことなんだろうな。
シンラを抱っこして食堂に向かう最中に、昨日のことを思い出した。
ミーシャだけでなくスミレもブルムも、俺の仕事、領主の仕事については全く興味を示さなかった。体を動かすのが好きで、執務室で事務仕事なんてしたくない! といった感じだ。
ウルは多少興味を持っていたが、簡単な内容を聞いて無理だと判断したのか、グリエルの立場では何をしているのか、みたいなことを聞いていたな。
下の子たちは誰一人として理解してなかったが、走り回るプラムとシオンは姉たちと同じように育ちそうだと思った。シンラは唯一可能性があるかもしれないが、2人から逃げるために俺の膝の上を占拠して、俺の真似みたいなことをしてただけという可能性も捨てきれない。
俺は定命では無くなっているので、代替わりしなくても問題はないのだが、俺もずっと縛られ続けるのは嫌なんだよな。自分の居場所ではあるが、何処にも行けないのはね。しょっちゅうどこかに行ってるとか聞こえてくるけど、全部仕事だからね!
そこ! この世界を巡らなくてもマイワールドで好きな所を作れるから、何処にもいく必要がないとか言わないの!
食堂につくと同時にシルキーたちにお願いして、シンラ用にハンバーグを用意してもらう。シンラだけに出すとプラムとシオンが怒るので、みんな平等に出してもらうことにした。ミーシャたちにも聞いてみたが、ビュッフェだから好きな物食べる! と返事が返ってきた。
上の子たちは自分で選べるから好きな物を食べれるもんな。下の子たちは栄養バランスを考えた、プレートで料理が出されているからな。
今日は何を食べようか、トーストにベーコン、スクランブルエッグ、コーンスープにサラダ山盛りって所かな。サラダはしそドレッシングで! トーストにはマヨを塗って、ベーコンを乗せてその上にスクランブルエッグを乗せた。
さすがにトースト1枚ではお腹がいっぱいにならなかったので、2枚目は普段はあまりしないシュガーマーガリンにして食べてみた。これ食うのって何年ぶりだろ、久々だと美味いな!
仕事に行こうとしたらシンラが離れなかったので、ライラに一緒に来てもらい、職場に連れていく事にした。俺の執務室は土足厳禁で床に敷いている絨毯は、ブラウニーたちの掃除によって綺麗に保たれているので、シンラを遊ばせておいても何の問題もない。
って思ってたのに、トイレの時以外は俺の膝の上にいた。膝の上で寝られると邪魔なのだが、と言ってもシンラが退くわけも無く、母親のライラは苦笑するだけだった。
少し気になったので、ライラに書類をみせてみた。意見を聞いてみたかったのだ!
「これって俺が見る必要あると思う?」
「他の街の報告書もあるんですよね? そう考えると、書類の枚数が少なすぎませんか? 領主であれば、もっと細かい報告書がたくさん上がってくると思いますよ」
おっと、こんな内容なら読む必要ないんじゃないか? みたいなことを言ってもらえるかと思えば、もっと細かい報告書がたくさんあってもおかしくないと言われてしまった。
「グリエルが全部やってくれても、問題ないと思うんだけどな~」
そういうと、扉がすごい勢いで開かれた。寝ていたシンラがビクッとして目が覚めたが、入ってきたのがグリエルとわかったためか、またすぐに眠りについた。お前、図太いな。普通そこは泣く所じゃねえかな?
「シュウ様がトップでなければ、まとまらない状況なのですから、大人しく最低限の報告書だけ読んで、必要なときにだけ判断してください!」
それだけ言って戻って行った……地獄耳か?
「シュウ様は気付いていないかもしれないですが、あなたを中心にディストピアもゴーストタウンも、その他の街も成り立っているんですよ。しばらくは、そうですね、後30年位はトップでいてもらわないと困ると聞いてますよ」
俺の妻たちにも話がいっているみたいで、俺がトップにいることがどれだけ大切なのか説かれてしまった。
しかもタイミングよく起きて、膝の上に立って俺の服で遊んでいたシンラが、肩にポンポンとしてめっちゃ笑顔で俺の事を見てきた。どう反応するのが正解だろうか?
あれから、度々シンラが俺について執務室へ来ることになった。だけど最初の日以来、執務室では俺の膝に乗ってこなくなった。一応専用のベッドを準備したのだが、それよりグリエルたち以外ほとんど使うことのないソファーや、床の絨毯を気に入っているらしく運動なのか走り回っている。
っと、足に衝撃を受けて視線を落とすと、シンラがまた泣いていた。ったく、ライラも笑ってないで止めろよな。
抱き上げて高い高いをしてあげると、キャッキャと笑い出した。現金な奴だな、楽しければ何でもいいんかな。もう少しで仕事も終わりなので、そのまま肩車をしてやる。
頭を叩くな、暴れるな!
10分もあれば終わるような仕事だったのだが、頭を叩かれ、暴れられ、髪の毛を引っ張られ、そのせいで1時間程かかってしまった。
そういえば、最近ミーシャたちといる時間が減って、シンラといる時間が増えたな。ミーシャたちはあれ以来ここに来てないしな。シンラも遊びに来ている感覚だし、プラムとシオンはシンラにくっつきたいだけだし、お父さんにもうちょっと興味を持ってほしいな……
もしかして、シンラの抱き着かれ癖って俺の所為だったのかな? そんな事を考えてしまうようなシンクロ率だった。先に起きてお茶を飲んでいた妻が撮った写真を見て、みんなで笑ってしまったくらいだ。シンラは不機嫌な面をしていたけどな。
プラムとシオンより先に起きたシンラは、近くで寝ていた姉たちを起こして救出してもらい、元気いっぱいにベッドの上をハイハイして、俺に頭突きをかましてきた。自分も痛くて泣いていたが、回復魔法をかけてやり痛みを取ると、定位置と言わんばかりに俺の膝の上におさまっていた。
不機嫌な面になったのは、この時に写真を見せてもらいみんなが笑ったせいで、ふくれっ面みたいになっていたのだ。
その顔が可愛かったのか姉たち抱き着かれて、完全におもちゃにされていた。その内お前には女難の相(姉妹)とかステータスに表記されそうだな。
機嫌を悪くしたシンラの機嫌を直すのに苦労した。好物のハンバーグを朝出してやると言ったら、ふくれっ面から笑顔になったけど、ピースをして2つ要求してきた。ちゃっかり者だ。シンラの2つなんて、俺の1つより量は少ないんだけどな。
シンラの面白い所は、この年頃なら照り焼きソースとか、少し甘めのタレが好きと思いきや、おろしポン酢とか和風ドレッシングなどをかけて食べるのが好きなんだよな。2つ要求したってことは、そういうことなんだろうな。
シンラを抱っこして食堂に向かう最中に、昨日のことを思い出した。
ミーシャだけでなくスミレもブルムも、俺の仕事、領主の仕事については全く興味を示さなかった。体を動かすのが好きで、執務室で事務仕事なんてしたくない! といった感じだ。
ウルは多少興味を持っていたが、簡単な内容を聞いて無理だと判断したのか、グリエルの立場では何をしているのか、みたいなことを聞いていたな。
下の子たちは誰一人として理解してなかったが、走り回るプラムとシオンは姉たちと同じように育ちそうだと思った。シンラは唯一可能性があるかもしれないが、2人から逃げるために俺の膝の上を占拠して、俺の真似みたいなことをしてただけという可能性も捨てきれない。
俺は定命では無くなっているので、代替わりしなくても問題はないのだが、俺もずっと縛られ続けるのは嫌なんだよな。自分の居場所ではあるが、何処にも行けないのはね。しょっちゅうどこかに行ってるとか聞こえてくるけど、全部仕事だからね!
そこ! この世界を巡らなくてもマイワールドで好きな所を作れるから、何処にもいく必要がないとか言わないの!
食堂につくと同時にシルキーたちにお願いして、シンラ用にハンバーグを用意してもらう。シンラだけに出すとプラムとシオンが怒るので、みんな平等に出してもらうことにした。ミーシャたちにも聞いてみたが、ビュッフェだから好きな物食べる! と返事が返ってきた。
上の子たちは自分で選べるから好きな物を食べれるもんな。下の子たちは栄養バランスを考えた、プレートで料理が出されているからな。
今日は何を食べようか、トーストにベーコン、スクランブルエッグ、コーンスープにサラダ山盛りって所かな。サラダはしそドレッシングで! トーストにはマヨを塗って、ベーコンを乗せてその上にスクランブルエッグを乗せた。
さすがにトースト1枚ではお腹がいっぱいにならなかったので、2枚目は普段はあまりしないシュガーマーガリンにして食べてみた。これ食うのって何年ぶりだろ、久々だと美味いな!
仕事に行こうとしたらシンラが離れなかったので、ライラに一緒に来てもらい、職場に連れていく事にした。俺の執務室は土足厳禁で床に敷いている絨毯は、ブラウニーたちの掃除によって綺麗に保たれているので、シンラを遊ばせておいても何の問題もない。
って思ってたのに、トイレの時以外は俺の膝の上にいた。膝の上で寝られると邪魔なのだが、と言ってもシンラが退くわけも無く、母親のライラは苦笑するだけだった。
少し気になったので、ライラに書類をみせてみた。意見を聞いてみたかったのだ!
「これって俺が見る必要あると思う?」
「他の街の報告書もあるんですよね? そう考えると、書類の枚数が少なすぎませんか? 領主であれば、もっと細かい報告書がたくさん上がってくると思いますよ」
おっと、こんな内容なら読む必要ないんじゃないか? みたいなことを言ってもらえるかと思えば、もっと細かい報告書がたくさんあってもおかしくないと言われてしまった。
「グリエルが全部やってくれても、問題ないと思うんだけどな~」
そういうと、扉がすごい勢いで開かれた。寝ていたシンラがビクッとして目が覚めたが、入ってきたのがグリエルとわかったためか、またすぐに眠りについた。お前、図太いな。普通そこは泣く所じゃねえかな?
「シュウ様がトップでなければ、まとまらない状況なのですから、大人しく最低限の報告書だけ読んで、必要なときにだけ判断してください!」
それだけ言って戻って行った……地獄耳か?
「シュウ様は気付いていないかもしれないですが、あなたを中心にディストピアもゴーストタウンも、その他の街も成り立っているんですよ。しばらくは、そうですね、後30年位はトップでいてもらわないと困ると聞いてますよ」
俺の妻たちにも話がいっているみたいで、俺がトップにいることがどれだけ大切なのか説かれてしまった。
しかもタイミングよく起きて、膝の上に立って俺の服で遊んでいたシンラが、肩にポンポンとしてめっちゃ笑顔で俺の事を見てきた。どう反応するのが正解だろうか?
あれから、度々シンラが俺について執務室へ来ることになった。だけど最初の日以来、執務室では俺の膝に乗ってこなくなった。一応専用のベッドを準備したのだが、それよりグリエルたち以外ほとんど使うことのないソファーや、床の絨毯を気に入っているらしく運動なのか走り回っている。
っと、足に衝撃を受けて視線を落とすと、シンラがまた泣いていた。ったく、ライラも笑ってないで止めろよな。
抱き上げて高い高いをしてあげると、キャッキャと笑い出した。現金な奴だな、楽しければ何でもいいんかな。もう少しで仕事も終わりなので、そのまま肩車をしてやる。
頭を叩くな、暴れるな!
10分もあれば終わるような仕事だったのだが、頭を叩かれ、暴れられ、髪の毛を引っ張られ、そのせいで1時間程かかってしまった。
そういえば、最近ミーシャたちといる時間が減って、シンラといる時間が増えたな。ミーシャたちはあれ以来ここに来てないしな。シンラも遊びに来ている感覚だし、プラムとシオンはシンラにくっつきたいだけだし、お父さんにもうちょっと興味を持ってほしいな……
0
お気に入りに追加
454
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り
あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。
しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。
だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。
その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。
―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。
いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を
俺に教えてきた。
―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。
「――――は!?」
俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。
あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。
だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で
有名だった。
恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、
あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。
恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか?
時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。
―――だが、現実は厳しかった。
幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて
出来ずにいた。
......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。
―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。
今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。
......が、その瞬間、
突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり
引き戻されてしまう。
俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が
立っていた。
その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで
こう告げてくる。
―――ここは天国に近い場所、天界です。
そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。
―――ようこそ、天界に勇者様。
...と。
どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る
魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。
んなもん、無理無理と最初は断った。
だが、俺はふと考える。
「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」
そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。
こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。
―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。
幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に
見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと
帰還するのだった。
※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる