ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,620 / 2,518

第1620話 こんなんでいいのだろうか?

しおりを挟む
 俺が解説者に罵倒されている頃、メグちゃんは……

 敵のダンジョン80階層で無双をしていた。

 休んで元気が出たのか、娘たちからエールをもらって張り切っているのか分からないが、昨日とは比べ物にならないレベルで、S級スケルトンたちを操って殺している。

 メグちゃんが水流操作をしているから、水エリアとか関係なしに進んでいくため迷路で罠が多かったが、今は罠を使っても簡単に見破られると分かったためか、とにかくたどり着くまでに階層のほぼすべてを踏破しないといけない渦巻き状になっている。

 所々に敵を配置して、殲滅後に扉が開く仕掛けなども準備している。とにかく遅滞戦をしているようにしか見えない状況だ。とにかく時間を稼いで、攻め込むつもりなのだろう。

 俺らが32階に引いた後、すぐに水エリアの対策として水陸両用の魔物を大量に送り込んできた。でもそれだけではゴーレムたちを突破できないことは分かっているようで、ゴーレムたちに対抗できる水棲生物を魔物たちに運ばせていた。

 貫通属性のことは分かっていないと思うが、長年の経験か貫通属性を持っている水棲魔物を選んでいたのだ。しかもその運び方が斬新だった。

「まさか、水棲魔物の運搬に水ゴーレムを使うとは思ってもみなかったわ」

「シュウは、早い段階でクリエイトゴーレムを手に入れたから、属性付きのゴーレムをほとんど使ったことがないんだっけ?」

「そうそう、属性ゴーレムって使い勝手が悪そうに見えたから使ってなかったんだよね。それ以上にクリエイトゴーレムで、同等の属性ゴーレムもどきも作れたからな」

「あ~ニコちゃんたちスライムを模した、人造スライムみたいなのを作ってたわね。しかも、危ない薬品を使った奴。家とか家具には影響ないのに、害虫を体内に取り込んで溶かしているのを見た時、戦慄したわよ」

 そういえば、あの人造スライムたち今何をしているんだろうか? 前は、レアキャラとしてダンジョンで遭遇したら、朝食で余った食事をプレゼントする係だったような? 家にいるときは、害虫駆除してくれているのか? 便利な奴だ。

「あっ! 今度はクラーケンも運んできたでござる。まさか、締め付けが有効なのも経験で知っているでござるか?」

「人造ゴーレムたちは問題ないけど、アダマンゴーレムとかはさらに動きも遅くなるし、絶望的だな。次に入ってきたあれはなんだ? マップに光点が表示されているのに、映像に移ってないんだけど、幽霊系の魔物か?」

「鑑定結果が出たでござる。初めて見るタイプのゴーレムでござる。ウィンドゴーレムというらしいでござるが、凪いでいるから風っていうのもおかしいでござるな」

「シュウの召喚リストにはいなかったゴーレムよね? 属性でまだいないのは、光と闇だっけ?」

「それがさ、光と闇のゴーレムは召喚できるんだけど、使い道がかなり限定されるんだよ。光のライトゴーレムなんだけど、眩し過ぎて仲間も視界が悪くなって使い物にならないし、闇のダークゴーレムは暗闇でしか生きられないっていう謎生態なんだよな」

「何それ? 意味不明なゴーレムね、本当にゴーレムなの?」

「名前はゴーレムだな。それより、あのウィンドゴーレムは何に使うんだ?」

「この数を考えるとでござる……ワームや聖銀を纏ったオーガを運ぶのではござらんか?」

「ウィンド、風、空気のゴーレムってことか? あり得るな。これって、フェンリルたちも苦戦するか?」

「どうかな。水の中を移動するから行軍速度は落ちるしフェンリルたちなら、ワームやオーガは苦にならないんじゃない? 物量戦をするにも、行軍速度の問題で大量には運べても足りないと思うけどね」

 綾乃の言っていることも一理あるな。

「よし、フェンリルたちにワームとオーガを任せて、人造ゴーレムとS級スケルトンで可能性は低くても物量戦に備えるか」

 人造ゴーレムも人型だけでなく、魔物を模したアラクネ型やケンタウロス型なども投入することにした。

 人造ゴーレムもS級スケルトンも倒されれば多少の痛手にはなるが、正直新しく作ることもできるから消耗戦には持って来いだったりするんだよね。

「あ、ディザスターラットも使っちゃえば?」

「あいつら、待機エリアで増えてるもんな。33階に放つか? 34階も水エリアだから暴走しても問題ないな。よし、フェンリルたちの遊び相手にもなるだろうから、ちょうどいいな」

 フェンリルたちに連絡を入れてから、ディザスターラットたちも33階に放した。

 フェンリルってオオカミに属する魔物なんだけど、ネコみたいな習性があるんだよね。相手をいたぶるというかなんというか、狩りで遊ぶ感じかな? だから、死んでも気にならないディザスターラットなら、気にせずに遊び相手にできるというものだ。

「メグちゃんの様子はどうだ? イラ立ってたりしないか?」

「今のところ問題なさそうでござる。制限はあるでござるが、昨日と違って全力で能力を使えることが楽しくなってきているみたいでござる。イケイケ状態でござるよ」

 娘たちのエールでもなく、全力で能力を使えることが楽しいみたいだな。これからのダンジョンバトルも、自分から参加しようと思ってくれるだろうか? そうなれば、作戦を考えるのも楽になるかな? でも、そればっかりに頼るようになるのはどうなのだろうか?

「攻めはバザールのサポートに任せて、俺たちは守りに集中するか」

『おっと? 駄女神のダンジョンマスターが、何を血迷ったのか自分のダンジョンにディザスターラットを解き放ったぞ! 自殺願望でもあるのだろうか!』

 ちょっと待て! なんでこいつがまだ踏破されてない階層の情報持ってんだよ! さすがにこれはダメだろ! チビ神、どういうことだ?

『どうやって知ったのかは分からないけど、さすがに問題がある発言だったみたいで、創造神様の遣いが回収してったわ。いい気味よ!』

 罰がくだるならそれでいいか。

 1週間後、敵のダンジョンマスターは、結局33階を抜けることが出来ずに敗北することとなる。

 もともと100階だったはずのダンジョンがいつの間にか150階に増えており、攻略するのに時間がかかってしまった。

 この1週間は、解説者も面白くなかったようで、テンションが低かったのが印象的だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...