ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,572 / 2,518

第1572話 そんなのってアリ?

しおりを挟む
「何かあるでござるな」

「これは確かに、何か変ね」

 魔法を放ったことによって景色が歪み、綾乃も何か変だということに気が付いた。

「魔法で歪んだのか、火で歪んだのか」

 綾乃とバザールは、すぐに後者だと返してきた。俺もその意見に賛成だ。魔法で歪んだとすれば、範囲が広すぎると考えられる。魔法でとなると、魔力と魔力が反発して歪んだことになるので、範囲が限定的だったりするのだが、今回は歪んだ範囲が広かったのだ。

「熱に影響を受ける魔法を使ってるってことか。となると可能性が高いのは、水魔法か?」

「そうでござるね。光魔法の幻惑でござるなら、あそこまで広い範囲が歪まないでござる。それを考えると、水魔法による幻惑だと思うでござる」

「そういえばさ、光魔法の幻惑と水魔法の幻惑ってどういう原理なの?」

「光魔法の方は、姿形を光の強弱や色で再現する超高等魔法って言われてる。言われてるっていうのは、俺たちみたいな異世界から来た人間しか、この魔法を使えないからっぽい。あ、シルクちゃんは問題なく使えるけどね」

「光の精霊でござるからな。あの子は、訳の分からない光魔法も使ってたでござる」

「でだ、水魔法による幻惑は光の屈折がウンタラカンタラで、見えるものが見えなかったり見えないものが見えたりするようにできる。制御のイメージが難しいけど、慣れればこの世界の人間でも使えるようになるとか」

「あれ? そもそもこの世界の魔法って、基本的に決まった効果しかないんじゃなかったっけ?」

「魔法名をトリガーにしている場合は、ほぼ固定されるけどイメージ次第では、同じ魔法でも天と地ほどの威力の差が表れる。まぁ、この世界の人間と俺たちの使う魔法が同じかって聞かれたら、首をかしげたくなるけどな」

「この世界と言ってはいるでござるが、主殿の奥方もこの世界を基準に考えると、人外の部類に入るでござるよ」

「骨のお前が人外とかいうなよ。まぁ、常識外れではあるけどな。っと、水魔法で幻惑を使っているのであれば、取る手段は1つ! 広域で一気に温度を下げてやればいい、ダイアモンドダスト」

 ダイアモンドダスト。ゲームによっては攻撃魔法に分類されたりもするが、俺が使ったのは魔法自体に攻撃力は全くない、ただ単にダイアモンドダストが発生する温度まで一気に冷やす魔法だ。

 大気中の水分を使って光を屈折させているのであれば、その大気を冷やして水分を凍らせたりすれば、相手の魔法が効果を失うのだ。対抗魔法と呼んでいいだろう。

 寒くなっても体はドッペルなので、大きな問題はない。

 監視室から送られてきている情報では、そろそろ領主間の入り口に……マジかよ!

 思わず突っ込みたくなるような姿の男がいた。

 シルクハットにモノクル、スーツにマント、しかも白で統一していた。シャツは紺、ネクタイは赤、これってどう考えても、頭脳は大人体は子どもの名探偵に出てくる、怪盗コスプレじゃないですか!

 心の中で盛大に突っ込んでいると、隣からドサッという音が聞こえた。振り向くと綾乃が崩れ落ちていた。

 その気持ち痛いほどよくわかる。着ている物は、確かにその漫画の怪盗と同じなのだが、明らかに筋肉ムキムキな人だったのだ。崩れ落ちたくもなるが、今は我慢。

 そう言えば、監視カメラで姿を見れるのに、しっかりと確認してなかった。そのせいで、精神的に大ダメージを負っている。

 そう言えば、バザールは?

 顎が外れたかのようにポカーンと口を開けていた。あまりの衝撃に魂が抜けかかっているかもしれん。だからといって、俺まで止まるわけにはいかない。

 怪盗ムキムキに向かって全力で突っ込む。

 気付かれたことに驚いている怪盗ムキムキが何かを叫んでいるが、頭が理解することを拒んでいるのか、何を言っているのかわからない。

 レスリングのタックルみたいに、肩を腹にぶつけて両太ももを抱えるようにして体を持ち上げる。そのまま地面へ押し倒し、マウントポジションをゲット。

 でもさ、こいつ何なんだろ? 鑑定してみたけど勇者じゃないし、ダンマスでもない。だけど、この格好ってどう考えても、あの漫画を知っている奴だよな。

 とりあえず、ボコボコにしてからほとんど使われていなかった、特別牢獄へ連れて行った。

 正直、あの格好でお腹いっぱいなので、取り調べは暗部の人間に任せることにした。

 あんな格好でも、レベルは驚異の324。かなりのハイレベルである。こんなバカなことをしているくせに、かなりレベルが高い。そして気になるのが、鑑定でもダンジョンマスターでも、判明しないスキルか能力を持っていることだ。

 なので、スキルも魔法もその他の能力も使えなくなる部屋を準備してある特別牢獄へ連れて来たのだ。

 この部屋は、いつの間にか作れるようになっていたので、設置してみた奴だ。

 そしてこの部屋の特徴は、敵味方関係なくすべてが使えなくなるので、ステータスのみのガチンコになる。そこは、ダンジョンマスターなら効果が無くなる。とかしてほしかったんだけど、平等に使えなくなるのだ。

 これを設置したときには笑ったもんだ。

 これで、もし神に与えられた能力があっても、無効化できているはずだ。あの部屋の中では、ダンマスのスキルすら使えなくなってたからな。

 あいつからの情報収集はすべてお任せして、俺たちは精神的に受けたダメージを回復するために、ディストピアへ戻ることにした。バザールですら、自分の農園のあるゴーストタウンではなくディストピアに戻るあたり、俺たちが受けたダメージの大きさを分かってもらえるだろうか。

 俺は家に帰ってすぐさま子ども部屋へ向かい、ハイハイでプラムとシオンから逃げていたシンラを捕まえて、お腹に顔をうずめた。

 初めは喜んでいたシンラだが、次第に変だと思ったのか猛烈に俺の頭を叩いてくる。足元ではプラムとシオンが足にしがみついて、シンラを返せ! といっているようだった。

 それでもかまわず顔をうずめていると、両腕を抑えられ首にキレイに腕が回ってきた。

 ヤバいと思った次の瞬間には、意識が飛んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...