ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,554 / 2,518

第1554話 不穏な空気

しおりを挟む
 6、7、8戦目は、5戦目と同じような形で終わった。ダゴンの方はともかく、マーフォークの方は何かしら手をうっくると思ったけど、武器を変えるだけで大した手を打ってこなかった。あの武器に何かあるのだろうか?

 さて、どうしたものか?

「どう思う?」

「判断しにくいわね。特にマーフォークの方は、何か不気味ね。違和感があるのに、その違和感に気付けない。そんな感じかな?」

「確かにでござる。何か違和感はあるのでござるが、よくわからないでござる。しいて言うなら、武器が遠距離から近距離になったくらいでござるな」

 それは違和感だな。速度では勝てないとわかっているのに、遠距離のボウガンから近距離の槍に替えてるんだよね。ただ、ダゴンの方のように戻ってくる槍ではないが、とにかく頑丈なのは確認している。

「それにしても、あっちはSランクの魔物を出してこないよな。今まで負けそうなことはあったけど、負けはなかったっけ?」

「いや、何回か負けているでござるよ。ただ、ここ一番の勝負には必ず勝っていたでござるが……そう考えると、不思議でござるな」

 そっか、勝ち試合だけしか見てなかったのか。

「とりあえず、6・7・8試合目の武器を見るか」

「その前に、9試合目の準備をしてからでござるよ」

 そうだった。9試合目に出る魔物の準備をしておかないと、不戦勝になって負けてしまう。せっかく7勝したのにこんな理由で他のやつに1勝持ってかれるのは気に入らないよな。

 魔物の準備が終わると、アーカイブで試合を見直してみた。

「3試合の槍って似てるけど、おそらく別物だよな? どんな意味があると思う?」

「3本の槍?」

「3本でござるか? 3本? 水中の武器? 何かあったような気がするでござるが、何でござったかな?」

「3本、これが俺たちが感じていた武器か?」

「何かやばい感じがするでござる」

「私も何か嫌な感じがする。ハイサハギンじゃなくて、骨ゲーターで様子を見た方がいいと思うんだけど、シュウはどう思う」

「俺も、3本の槍と水の組み合わせに、拙さを感じている。だけど、ダゴンに骨ゲーターは少し戦力不足じゃないか?」

「そうでござるが、骨ゲーターの牙と尻尾で攻撃の代用できると思うでござる。水中専用だけを装備させるというのはどうでござるか?」

「水エリアなら対等な勝負ができても、操作だけで勝負されたら骨ゲーターじゃ相手にならんだろ。それならバックアームなしの、強化外骨格3式を装備させてハイサハギン出せばいいと思うけど、片手くらいなら仕込み籠手を装備させられるだろ?」

「ちょっとまって、計算してみる。大丈夫そうね。ハイサハギンのスペックが気持ち下がっちゃうけど、誤差の程度だから問題ないと思うわ」

 慌てて魔物を準備して、装備を身に着けさせる。

 9試合目が開始された、映し出されたダゴンじゃない方の魔物を見て、背筋が寒くなる。

「あれが隠していたSランクの魔物か?」

「あれは、やばいでござるな。ダゴンの非じゃない危険を感じるでござる」

「マーフォークと見た目が大して変わらないのに、あの雰囲気は何?」

「マジでわからん。あいつが強いのはわかるけど……バザール、鑑定してくれ」

「っ!! シュウ殿、あいつ今まで戦ってきたマーフォークと同じでござる。なのに、何故かかなり強化されているでござる」

 どういうことだ? あいつの強さの秘密は何だ?

 混乱している間に戦闘が始まった。

 マーフォークが地面に槍を突き刺したら、地面が爆発したのだ。

 バザールは慌ててガード体制をとり、ダゴンは水を生み出していた。

 マーフォークがダゴンを無視してハイサハギンに接近してくる。矢で牽制するも、すべて弾かれてしまった。

 マジか!?

 突き出された槍をかろうじて回避したハイサハギンだが、三叉に分かれた一つがかすり、強化外骨格3式を切り裂いた。

「これはヤバいな。マーフォークが強くなったんじゃなくて、槍によってマーフォークが強化されているのかもしれない。そんな武器があるのか?」

 限りなく正解に近い答えを導きだしたのだが、後一歩答えに届いていない。だが、武器がかなめであることは間違っていない。

「聞いたことは無いわね。神器のグレイプニルだって拘束するために体を動かせなくなるのに、動けるうえに強くなる武器って……あれ、神器なのかしら?」

「神器はSランクの魔物と同じくらいのDPがかかるだろ? それだと、今回いきなり投入してきたのに、あの強さのマーフォークが持ってるのっておかしくね?」

 元々のマーフォークのDPと神器の総量を合わせると、確実に足りなくなるはず。じゃぁ、神器じゃないとして、あの強さはどうやって得たものだ?

 分からないことが多すぎる。もっと情報が欲しい。

 はぁ?

 画面に目を戻すと、ハイサハギンの胸に槍が突き刺さっていた。2分くらいで負けたってことになるな。バックアームなしとはいえ、強化外骨格3式のを装備してたのに2分って、ちょっと強くなりすぎじゃね?

 ダゴンとの戦闘は、一方的でもないか。ダゴンが上手く水を操って、マーフォークの攻撃を凌いでいる。

「なぁ、ダゴンの動きがよくなってる気がしねえか?」

「言われてみれば」

「そうでござるな。どういうことでござる?」

「学習している? 違う魔物なはずなのに? 何かトリックがあるのか?」

 動きがよくなったといっても、ハイサハギンを倒したマーフォークにダゴンが勝てるわけもなく、5分後にはチリとなった。

「マジでどういうことだ?」

 俺たちはコタツで向かい合って、お通夜みたいな雰囲気になってる。

「分からないけど、多分水中戦でも陸上戦でも強化外骨格3式だと、バックアーム込みでも勝てるか怪しいわよ。陸上に強い魔物に装備させてもダゴンには勝てないし、水中に強い魔物だとマーフォークには勝てなそうね。かといってハイサハギンだと、マーフォークに力負けしそうね」

 あまり長い時間ではないが、ダゴンとの戦いでエリア一帯を水で満たしたときの移動速度が、3式水中装備をした時のハイサハギンと同等か、それ以上の速度で移動していたのだ。

 勝てるかどうか、怪しい。

 そして問題なのは、あのマーフォークが使っている槍が、簡単に3式の装甲を貫いていたことだ。原理が全く分からん。アダマンタイト製の槍でも、あそこまで簡単に貫くことはできないのに……

「カギを握るのは、あの槍か? 過去の試合、アーカイブを見るか? 槍のヒントがあるかもしれない、少なくとも後7試合は、負けても大丈夫だろ? その間に何か勝てる方法を見つけよう。一応、次の試合は、3式フル装備で戦わせよう」

 とりあえず、対策会議を始めよう。

 3人でアーカイブを見るのにも限界があるので、状況を説明して妻たちにも協力を仰いだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...