ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,551 / 2,518

第1551話 哀れな対戦相手たち

しおりを挟む
 変則的ダンジョンバトルの開始時間になった。

 3人のダンジョンマスターの内1人が10勝するまで戦い続けるバトルロイヤルだ。

 1戦1戦の戦闘時間に制限はないが、戦闘のインターバルは1時間。どんなに短くても10時間は続くダンジョンバトルである。試合が長引けば長引くほど、勝敗が平均的になればなるほど時間のかかるバトルである。

 これもし1人だったら、寝落ちして魔物をバトルに出せずに負けるんじゃねえか? そんなハードな試合内容である。

 まぁ、こっちには寝なくても問題ないバザールがいるし、他にも補佐してくれる綾乃もいるし、いざとなればスプリガンたちに起こしてもらえるから何の問題もない。

 試合が長引くようなら、バザールに任せて寝るつもりだし何の問題もねえ!

 バザールに関しては、ダンジョンバトルを代理で行うことができるから、俺がいなくても大丈夫なんだよね。チビ神が前に言っていたが普通はそうじゃないらしいけど、そうなったら普通のダンジョンマスターは、どうやって長時間のダンジョンバトルを管理しているのだろう? って考えたことがあったっけな。

「じゃぁ、定石通り初めの3試合は様子見で戦いましょうかね」

 綾乃が不思議なことを言っていた。定石通り? 3試合は? どういうことだ?

「なぁ、綾乃。定石通りってどういうことだ?」

「えっ? 説明してなかったっけ? バトルロイヤル式のダンジョンバトルは、魔物は持ち越せないけど装備品は次の試合に持ち越せるのよ。だから初めの3試合ほどは、相手の装備品を見極めるターンなのよね。アーカイブ見直してなかったら、見逃すところだったわ」

 チビ神にも確認を取った上で、ルールブックにもそう書いてあったので間違いないようだ。

「じゃぁ、始めの3試合はどうするんだ?」

「装備に関しては、他のダンジョンマスターより圧倒的にDPがかかってないから、始めから全力でも行けるんだけど、魔物に使うコストを減らして3試合分の余ったDPで、強化外骨格3式を強化できるように設計したのよ!」

 強化外骨格を強化って、言葉的に矛盾をはらんでいる気はするけど、気にしたら負けだな!

「で、始めの3試合はどうするんだ?」

「そこは、骨ゲーターにアダマンコーティングして、Dランク魔石で水流を操作できる魔核を身につけさせてるわ」

 水流操作? 魔核ってそんなこともできたのか? じゃぁ、全身アダマンタイトにした骨ゲーターでも、Sランク魔石を複数使えば自在に泳げるんじゃね?

「……って顔してるけど、そんなにうまくはいかないわ。試してみたけど、水流操作に関してはDランクの魔石の出力が限界みたいで、複数つけても効果は変わらず。だから全身アダマンタイトにしたら、泳げなかったのよ」

「いつの間にそんな実験してたんだよ! 俺も混ぜろよ!」

「サプライズよ、サプライズ! バザールと他にも考えたのよ、だから大丈夫だって。もし負けそうになったら、あなたの案で勝ちを拾いに行くから問題ないでしょ? 実践データを取る貴重なチャンスだしね。身内でやると、結果が偏るのよ。だからいいチャンスだと思ってね!」

 一応、必勝の作戦を考えてあるので、どうにかなると思う。遊んでフェンリルの召喚権利を失うのは絶対に嫌なので、反則技に近いグレーゾーンを発見しているので、それを使えばおそらく負けはないはずだ。

「そういえば、あっちのやつはダゴンだけど、もう片方ってSランクの魔物何が召喚できるんだ?」

「それがわからないでござる。アーカイブを調べてもSランクの魔物を使った試合がないのでござる。一応、獣系のナニカを召喚できるって話でござるが……

 バトルの方は、戦略や戦術をしっかり練って、武器や罠、DPによる強化でダンジョンバトルを勝っているタイプだったでござる。何度かバトルロワイヤルをしているみたいでござるが、際どいところで勝ちをもぎ取っている形でござったな」

 ふ~ん、強くないのに強いのか? 初めの3試合は、特に見どころもなさそうだし、バザールたちが見たっていうバトルロワイアルのアーカイブでも見てようかな?

 俺の知らないところで、いろいろとこそこそやってたんだなこいつら。

「ちょっと、アーカイブが気になるから、隣の部屋で見てるわ。何かあったら呼んでくれ」

 ちなみに俺たちが今いるのは、監視部屋の隣にあるDBS部屋の更に隣に作った、掘りこたつ式観戦部屋だ。わざわざ部屋の温度をダンジョンスキルで低くして、こたつで温まるというマッチポンプな部屋である。

 俺は、視界の隅にこれから行われるダンジョンバトルの映像が入るように位置を調整して、アーカイブを見始めた。

 飛ばし飛ばし見たり、早送りしながら見た結果わかったことは1つ。こいつ、相手の分析をしっかりして、勝ちに行っているタイプだな。それにしても、よく対応した装備や魔物がこれだけ召喚できるもんだな。多分綾乃たちもこれのことは理解してると思うけど、どうするつもりなんだろ?

 それにしても、Aランクの魔物を強化して装備を整えて戦えば、案外簡単に勝てるもんなんだな。

 こういった作戦を練っているタイプの試合って面白いな。純粋な力で正面衝突も悪くないんだけどな!

 っと、すでに2試合目が始まっていた。ってことは、2時間経ったのか?

 1試合目の準備時間と2試合目の準備時間、合わせて2時間。時計を見ると、この部屋に入って2時間10分経っていた。

「となると、1試合目の戦闘時間は10分? 装備にどれだけDPをかけたかわからないけど、Aランクの魔物同士が戦ったとして、10分は早いよな? どうなってるんだ?」

 1試合目の戦闘を見て時間がかかった理由が判明した。

 戦闘に出てきた2匹の魔物はおそらくBランクの亜人の魔物である。ただその手に持っている武器だけは、明らかにランクが違う強さだった。骨ゲーターじゃ過剰戦力だろうと思ったが、3試合はこんな感じなんだよな。

 そして戦闘が開始される。骨ゲーターの背中には申し訳程度に改良された、強化外骨格3式のバックアームが取り付けられている。何に使うのかと思ったが、一応攻撃に使えているらしって、骨ゲーターはアンデッドだから、バザールが動かしてるのか!

 このバトルロワイアルのルールとして、相手が死ぬことが勝利条件、バザールがとった行動は、手足を切り取って死なないように治療した後に、敵の持っていた武具を牙やバックアームを使って壊していたのだ。これは酷い。

 戦闘時間は1分にも満たないのに10分もかかった理由は、武具を壊していたからだった。

 装備品は持ち越しが可能なら、壊してしまえばよくね? というのがバザールの考えだったようだ。後で話を聞いたら、過去に同じ方法で武器を壊して勝ったダンジョンマスターがいるのだとか。

 ここから2試合目も同じように武器を破壊するまでの時間が、戦闘時間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...