ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,535 / 2,518

第1535話 バザールのスキル

しおりを挟む
「麻薬については、多少時間がかかるので、違う実験から始めたいと思うのですがよろしいですか?」

 人体実験の行われる地下実験場に来ると、待機していた暗部の1人、鬼人かと思ったら、どこかでヘッドハンティングしてきたヒューマンの1人が担当していたようだ。

「問題ないけど、使う麻薬はさっき渡しておいたから、無くなる前に言ってくれ」

「では、麻薬を使わせてから、バザール様の実験から始めましょう」

 俺らを担当していたヒューマンが鬼人たちに指示を出して、重犯罪者たちに麻薬を投入し始めた。

「ってか、君はどういう立場なのかな?」

「あっ! 失礼しました! 私は、暗部の実験担当をしています、エックスと申します。本名は別にありましたが、ここに配属されるにあたって捨てました」

 エックス……何者でもない、ということらしい。そして、こいつ以外にも何人か同じような人がいるらしいが、今回は現場に来ないとのことだ。

 知らない間に暗部の人間も増えているようだ。マジでこの街どうなってんだろ?

「バザール様、準備できました。一応、気が強いタイプから小心者まで準備しておきました。精神が影響を及ぼすのかわかりませんでしたので、他にもレベルも多少分けて準備しております」

 そういう考え方もあるのか。確かに抵抗値みたいなものがあるのなら、レベル別や気持ちの持ちようも、影響してくるかもしれないもんな。他にも、動物も何種類か準備されていた。

 バザールが集団の中心に入り、闇の波動を解放した。

 バザールを見た瞬間に小心者に分類される犯罪者は、できるだけ距離をとろうとしているが、鎖につながれているので無駄な抵抗に終わっている。

 重犯罪者なのに小心者とは? 精神異常者みたいなのだけかと思ったが、ついかっとなって死刑になるような犯罪を犯してしまった奴もいるらしい。一時の過ちでも、この世界では死刑が適応される犯罪であれば、しょうがないことである。

 一番早く変化したのは、動物のネズミだった。

「体の大きさか? Lvを多少あげていたのも、同時に変化したな……どういう原理なんだろうな?」

 次に変化したのは、ブタだった。

 今回実験に使われている動物は、ネズミ・ブタ・シカ・クマ・ウシの5種類だ。選定基準はよくわからないが、ネコ・イヌ・オオカミは外してもらっている。俺が可愛がっている種類の動物だからな。イヌはいないけどオオカミと一緒のくくりだ。

「体重だけで考えますと、ネズミの次に変化するのは犯罪者のこいつが妥当ですよね。ですが、ブタですか? シカとウシがほぼ同時に変化しましたね。どういうことでしょう?」

「何かしらの基準でもあるみたいだけど、仮に精神的な何かがかかわってたとしたら、私たちには判断できないわね」

 綾乃が言う通り、意思疎通ができるのであれば、多少なりとも判断基準になるかもしれないが、動物と会話など無理なので、客観的にしか答えは出せない。

「それも気になるんだけど、特にネズミが変化した奴……何種類かに変化してないか?」

「言われてみると、3? いや、4種類くらいいるかしら?」

 20匹いたネズミが綾乃の言う通り、4種類に変化していた。

 一番多かったのが10匹のゾンビマウス、次に7匹のブラッドマウス、マーダーマウスが2匹、レッドマウスが1匹。4種類とも共通点は、アンデッドということだ。

 動物は何種類かに分かれたが、全部アンデッドに分類される魔物に変化している。

「闇の波動を受けた生物は、アンデッドに変化するのはほぼ確定っぽいな。犯罪者の方は……1人変わったか?」

 バザールの姿を見てなんとか離れようとしていた小心者の部類の犯罪者が、おそらく1人変化したな。

「シュウ、あれってリビングデッドに変化してるわよ」

 綾乃に言われ、俺も鑑定してみると、確かにリビングデッドと表記されていた。

「そもそも、闇の波動にさらされると、1度は死ぬってことか? 死ななきゃ、アンデッドにはならんよな?確か、この世界はヴァンパイアは人の一種で、アンデッドとして生まれ変わるもんな」

「そういえば、そんな報告書があったわね。でも、この際、死んだかどうかは別にどっちでもいいんじゃない? 多分だけど、生物だったものも変化するんじゃないかと思うんだけど、適当な動物の死体とかない?」

 さすがに動物の死体は収納の腕輪やカバンには入ってないな、召喚してわざわざ殺すのもなと思っていたら、普通に動物の死体が召喚できるってどういうことだよ!

 バザールに遠隔で指示を出すと、すぐに対応してくれた。

『おっと! でござる。死体を召喚したら、すぐに魔物になってしまったでござる』

 スピーカーを通してバザールの声がこちらへ届いた。

「お前、闇の波動を出しながら墓場を歩くなよ。死体が全部アンデッドになっちまうぞ」

 おそらく、地球で見たらこの世界の終わりかと思うような光景が繰り広げられるだろう。

「シュウ様、どうやら他の犯罪者たちも1人を除いて、変化したようです。精神的な何かの影響ではなさそうですね。小心者の次は、一番抵抗が強いと考えていた奴が変化しています。残っているこいつですが、他の犯罪者に比べてレベルが高いですね」

 最後に残っていた犯罪者は、レベルが150を越している。

 なんでこんな高レベルで死刑になる犯罪を犯したのか分らんが……

「ある一定以下のレベルの生物やだったものがアンデッドに変化する?」

「可能性はありそうね。種族によってそのレベルが違う可能性はあるけどね。ネズミとクマあたりでLv10刻みで召喚してみたら解るんじゃない?」

 綾乃の提案通り、バザールに指示をしてLv100から10刻みで200まで召喚してもらう。DPが!とか言っていたので、後で補充するといって黙らせておいた。

「結果は、151以上みたいだな。ネズミもクマも同じみたいだな。それにしてもバザール、お前1人で国堕としできるな。99%以上の人間を全部魔物にできるとか、戦争にすらならんな」

 バザールの闇の波動は、種族に関係なくLv150以下のモノが全てアンデッドに変化することが判明した。ただ、Lvでアンデッドに変化するまでの時間が変わるわけではなく、ほぼ種族で変化するまでの時間が決まっているのではないか? という結論になった。

 こうして1つ目の実験が終わる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...