ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,525 / 2,518

第1525話 無謀な挑戦

しおりを挟む
 チビ神からしばらくはホコは攻めてこないだろうとは聞いていたが、それを鵜呑みにするわけにはいかないので、バザールと綾乃を呼び俺なりに対策を考えることにした。

「やっぱり、クリエイトゴーレムによる監視網を作成すべきだと思うんだけど、どう思う?」

「そうでござるな。綾乃殿は、改造をしている張本人として、どう思うでござるか?」

「魔核で学習機能を付加できるようになってはいるけど、あのシステムって自分の体に合わせた動きを、模倣するのには向いているんだけど、物を見て判断するっていうことには致命的に向いていないのよね。何て言えばいいのか……体を動かすことに特化している学習システム? って感じかしら」

 綾乃の言わんとしていることはよく解る。見取り稽古は得意なのだが、勉強することには向いてない。脳筋タイプのCPUみたいな感じか?

 だけど、魔法は無限の可能性があることを俺たちは知っている。ならば、学習や判断に特化したタイプの魔核が作れてもおかしくはないはずだ。

「綾乃の言っていることはよく解るけど、実際に人造ゴーレムを作ときに見取り稽古に特化するように作ったのは間違いない。それに、回復に、自動修復に特化した魔核や、魔力を生み出すことに特化した魔核だって作っているのだ。判断に特化した魔核が作れないわけがない! と思うのだが」

 綾乃とバザールは腕を組み、唸りながら悩んでいる。

「できるできないを論じることに意味はないでござる!」

 バザールが突然声を上げた。

「できるかできないかは、やれることをすべてやってから判断すればいいでござる。幸いにも時間はたっぷりあるのでござる。できなかったら、その時に考えればいいことでござるよ!」

 確かに、できるかできないかを論じることに意味はないな。やってみてできなかったら、その時に考えればいい。まさにその通りである。

 俺たちは、新しく用意した、使っていなかった工房に移動する。

「試しにいくつか作ってみよう。性能の向上やその他の改善点は、作ってからじゃないとわからないから、考えようがないからな。まず問題はないと思うが、俺たちに対する絶対命令権はきちんと入れておけよな。ハリウッド映画みたいに、機械の反乱なんてシャレにならないからな」

「機械が高度になれば、本当にあんな世界が来るのかしらね?」

「どうなんでござろうな? 自己犠牲を良しとしない機械が出てくればあるかもしれないでござるが、魔法……クリエイトゴーレムによる魔核では、死の概念がないでござるからな。特に綾乃殿が構築したシステムにより、人間でいうところの脳が壊れたところで、復元可能でござるからな」

 人造ゴーレムには、個性が存在していない。没個性的と言えなくもないが、戦闘を前面で担うための道具であることを考えると、余計なことを考える必要なく戦ってくれることが望ましい。だから、今の状態は俺たちにとってのベストでもあるのだと思う。

 魔法はイメージが大事なので、始めは3人とも別の場所で自分なりに、今回の件に対して最も適切だと思うものを作ることにした。

 俺も自分の作業場に移動して、悩んでいる。時間は長めにとっているが、そこまで余裕がある時間でもない。まず必要な要素を考えていくことにした。

 まず必要なのは、人間でいうところの目に相当する器官だろう。通常の人造ゴーレムにも搭載しているが、できるだけ人間に近付けるため2つの目を人間のように配置している。

 人間と同じ必要があるかはわからないが、想像しやすいので今回は人間の頭部をイメージして視覚機能を作成する。

 クリエイトゴーレムで作っているとはいえ、イメージしただけでなんとかなるなんてすごいよな。昆虫みたいに複眼にしたら、何か変わったりするのだろうか? って、複眼のイメージができないから無理だわ。実際に持っていないものを再現するのは、さすがに無理だな。

 口は必要ないか。音声を出すだけなら、スピーカーの原理を応用すればいいから、人間の出す声のシステムを模倣する必要はない。

 というか、目と判断する脳以外は、今回は必要ないな。他に機能が欲しければ後で考えればいい。

 目で見たことを判断する脳に相当するものか。ん~、よく考えたら、学習機能を持つ魔核って人間のそれを模倣したわけじゃなかったな。イメージするなら、機械に物を覚えさせる感じだな。繰り返し繰り返し勉強させる……AIの教育みたいなものかな?

 でも、そうなると、人間のような思考をする魔核って作れるのか?

 既存のAIは、トップダウン型、プログラムに知識と経験を積ませ、学習によって最終的に本物の知性へと近づけようというもの。現在、人工知能と呼ばれるもののほぼすべてが、トップダウン型と呼ばれるものだったはず。演算能力に物を言わせて学ばせる、みたいな感じだったっけな?

 それに対して、ボトムアップ型、脳細胞が連結された生体器官の構造そのものを人工的に再現し、そこに知性を発生させようという考え方。

 脳細胞って千何百億ってあって、それが電気信号なんかで繋がって思考しているんだっけ?

 例えば、2千億個の魔核を用意したとして、それを単純に繋げただけじゃ人間の思考を模倣することはできないよな? 繋げただけの状態なら、赤ちゃんと変わらんけど、問題はそこじゃないと思うんだ。繋げたからって人間みたいに学習するかって話だよな。イメージでなんとかなるものなのか?

 正直、どこからどうやって手を付けていいかわからん。トップダウン型だと、不測の事態に陥ったらフリーズしそうだよ。

 ん? フリーズ……止まるか。

 未知のことに対応できるようにって考えてたけど、未知のことで対応できなくなったらフリーズする機能を、積極的に利用するのはどうだろうか?

 って、だめだな。未知のことに対応しないでスルーする可能性だってあるんだしな。

 なにせ、何が起こっているか理解できないから、判断できずに放置する可能性だってあるのだ。その判断基準を覚えさせるなんて無理だろ。そんなことができるなら、対応できる人造ゴーレムを作れるわ!

 だめだな。いろいろ考えすぎるとドツボにはまる。地球で俺より頭のいい人たちが、長年研究しても完成の『か』の字も見えないボトムアップ式の人工知能のようなものを、さっき作ろうと思いついて作り始めた俺に作れるはずがない。

 だから、考え方を変えよう。

 魔核による学習機能の速度は速い。それを使って、普段とは違う変化があったときに、報告を上げる仕組みと、それを判断する仕組み、の二段階で作成してみよう。

 普段と違うという定義があやふやだけど、今回はとにかく作ってみないことにはわからないので、試作することにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

処理中です...