ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,519 / 2,518

第1519話 頑張ってるよ

しおりを挟む
 一通り攻撃をして、検証してみた結果。

 Aランクの魔物でも、仮定名セラフに継続してダメージを与えるのは難しいようだ。武器の限界ではなく、反応速度の問題になるからだ。

 Sランク相当の人造ゴーレムやクリエイトアンデッドで作ったスケルトンたちでも、ギリギリかわせることがある速度なのだ。普通のAランクの魔物がかわせるわけがない。

 反応するギリギリ外からの不意打ちで攻撃が当てられても、次の瞬間に切り捨てられて終わりという感じだ。

「こいつ、倒せんだろ。反応速度速すぎるし、服というか鎧に与えた傷も普通に直ってるぞ。もう、放置するしか無いんじゃないか?」

「あれをずっと隔離しておくのでござるか? いざって言うときにリスクが高いと思うでござる」

「私もバザールの意見に賛成ね」

「いや、俺も賛成なんだけど、倒す方法がないのに、どうしろって言うんだよ」

「隕石でも落としてみたらどうでござる?」

「ついでに、ダンジョンでやったみたいに、一番下に運んでそこに向かって落としてみれば? 地上だとかわされる可能性があるけど、落とし穴の下であれば隕石の大きさを調整すれば、たぶん当たるでしょ」

 綾乃の案を採用してとにかく限界まで深く掘った穴、というかダンジョンに仮定名セラフをキャスリングで移動させる。

 初めは、仮定名セラフの足下に作ったのだが、あいつは地面に立っているようで実は飛んでいたので落ちなかったのだ。

 穴の底に移動させても、動く気配がなかった。

「あーあ、あの武器ほしかったな」

 隕石を落とす準備を始めて、思わず口から本音がこぼれた。俺のメイン武器ではないが、あの武器を奪えればスキルを使わなくても、身体さえとらえれば切り裂けるのだ。そんな破格の武器が目の前にあるのにゲットできないなんて、ゲーマーとして悲しい!

「隕石を落とす前に、武器を奪ってみる? やるだけなら自由だと思うし、試してみるのもアリだと思うわよ」

「はっ! でござる! そう言えばでござるが、スカートっぽいものの下に着けていた、職人の道具入れみたいなモノの中に何が入っているのか確認していないでござる」

 バザールが攻撃を開始したあたりから、武器や道具のことを忘れていたことに気が付いた。

 色々な方法を試してみるが、一番上手くいったと思うもので、人造ゴーレムを2体使って両手の武器を真剣白羽取りのように左右から掴んでとろうとした方法だったが、引き抜かれて結局2体スクラップにしてしまった。

「腕というか手を固定して剣を動かせないようにすれば、武器を防げるかな? 例えば、アダマンタイトで固定するとか」

「さすがにアダマンタイトでやるのはキツいでござるな。魔力がいくらあっても足りないでござる」

「あれだけは、魔力の消費量が半端無いもんね。それに魔物たちじゃ使えないから、私たちがドッペルにはいって使う必要があるわよ。生身で行くなんて論外だからね」

 仮定名セラフにアダマンタイト製の盾は切られたけど、肉体と言っていいのかわからないが、剣を使わずにアダマンタイトを壊すことは不可能だと思う。だから、アダマンタイトでの拘束を提案してみたが、ネックは消費魔力だった。

「でもさ、アダマンタイトでの拘束は無理でも、何かしらの金属で重りを着けるのはいいかもしれないわね。関節とかに上手く纏わせれば、動きを阻害させられるかもしれないわよ」

「確かに、それならドッペルでできそうだな。ただの鉄だったら、厚さ次第だけど俺でも壊せるからな。最低でも鋼か?」

「タングステンがいいのではござらんか? もっと重い金属もあるでござるが、値段とのバランスを考えれば、ベターでござるよ」

「クリエイトゴーレムを使ってタングステンをつけるのはいいのだが、近くで魔法を使って大丈夫なのか?」

「確実とは言いきれないでござるが、攻撃的な魔法で無ければ攻撃を受けることはなかったでござる」

「クリエイトゴーレムが攻撃判定されないことと、タングステンたを変形させて身に付けさせることが、攻撃判定にならないことを祈るしかないか」

「攻撃がなくても、直接身体に何かを触れさせたら即切り捨てられたわ」

 まじかよ! それだったら、クリエイトゴーレムで一気に拘束でもしないと、確実に切り捨てられるぞ。

「それについてでござるが、タングステンを砂状にして、あいつの回りに敷き詰めた上でクリエイトゴーレムを使えばどうでござるか?」

「最低でも、腕と剣の長さの外からやれば、一瞬で切り捨てられることはないか? 砂タングステンを一気に塊にしてから必要な分を削っていけば、なんとかなるかもしれないか?」

「最悪、死ぬくらい痛いだけで、死なないんだから3人でローテーションを組んでやればいいでしょ」

 1人でやるつもりでいたが、綾乃は任せっきりにするのは良くないと考えたようで、俺・綾乃・バザールの3人でやることを提案してきた。

 そこまで言われて引き下がる俺とバザールでもないので、参戦を決めた。

 元からやるつもりでいたから、俺は関係ないんだけどな。

 じゃんけんの結果、一番負けた俺が先鋒だ。次にバザール、最後が綾乃の5回勝ちで勝ち抜けの勝負だったのに、1度も綾乃に勝てなかった。あいつじゃんけんが強すぎねえか?

 3人でじゃんけんしたから、あいつだけが勝つ確率って、9分の1だぞ! それを5回連続で勝ちやがったってことは、9分の1の5乗、59049分の1の確率じゃないか!

 幸運3セットが全く役に立ってね!

 しかもその後にバザールにも、じゃんけんで負けたしな。幸運先生! 仕事してください!

 まぁいい、どうせ1人でもやるつもりだったのだ。気してもしょうがない! 気持ちを切り替えてやってやろうではないか!

 まずは、仮定名セラフがいる場所をダンマスのスキルで囲って、その中にタングステンの砂をモリモリと敷き詰めていく。

 ここがマイワールドでなければ、普通に剣を使って突破してきただろうが、今は動かないので簡単に仕事が進んでいく。

 敷き詰め終わったところで、新しく召喚した俺のドッペルをマイワールドに送り込む。

 さて、仮定名セラフよ! 勝負だ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

処理中です...