ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,517 / 2,518

第1517話 亀の歩み

しおりを挟む
 綾乃が決意を曲げないので、綾乃のためにドッペルを10体用意する。

 バザールのアンデッドの意識共有と違い、1人で複数と同時に繋がることはできないので、1体1体と接続を確認しているので時間がかかっている。

 今回は自分の姿に似せてはいないが、体系は近いモノにしている。仮定名セラフが一応姿形を覚えて攻撃してくる可能性を考えてのチョイスだ。スケルトンたちでは関係なかったが、人間の形をしていたら違うかもしれないので、念のためだ。

 30分ほどかかったが、仮定名セラフは動くことなく止まっている。

 綾乃が10体と言ったが、多くても3体くらいで限界をむかえそうだけど、本当に大丈夫だろうか?

 覚悟を決めていても、問答無用で殺されたときって、かなりの衝撃なんだよね。何度か体験したことあるんだけど、何て言うかズドンッてドッペルから押し出されるんだよね。その時に神経を抜かれるような痛みがして、初めての時は一瞬気絶したんだよな。

 綾乃にも前に話してるし、さっきも痛みについて話したが、問題無いと言っていたけど……

 準備ができたので、ドッペルを仮定名セラフのいるマイワールドに送り込む。

 問題なく意識同調というか、乗っ取りが成功する。

 そう言えば、マイワールドって別次元だか空間だかにあると思うのだが、どういう原理でつながっているのだろか? バザールの時には気付かなかったけど、どうやって繋がっているんだ?

 バザールにも聞いてみたが、『良く分からないでござるが、出来るから出来るでござる!』とか言っていた。

 使えん奴だ。

 と、ボソッと言ったら、エルダーリッチを巻き込んで、両手両膝を着いてガックリしていた。

 そんなこんなで、遊んでいるようなやり取りをしていると、綾乃が仮定名セラフにいつの間にか近付いていた。

 綾乃は、仮定名セラフに触れないように、装備の隙間を覗いたり、スケルトンが引っ張っても問題なかったレベルで、服というか鎧を動かしている。

 地面に張り付いて、スカート軍事服みたいなやつの中まで確認している。いつの間にライトなんて用意してたんだ?

『シュウ、バザール、聞こえてる? って、こっちに伝える方法が無いから答えられないか。勝手に話すわ。上半身には隠すようなスペースは見つからなかったけど、下半身のスカートっぽいやつのなかに、何か装備品があるのは間違いなさそう。それが神器か分からないけどね。だから、ケーブルカメラみたいなのを送って、待ってるから』

 あのスカートっぽいやつの中に何かあるのか? DPの消費だけでなんとかなるなら、それに越したことはないな。

 すぐに扱いやすそうなケーブルカメラを、バザールのスケルトンと一緒に送り出す。

『あっ、バザールも来たの?』

 スケルトンを見て、綾乃はバザールが意識共有していることに、すぐに気が付いたようだ。

 最下級のスケルトンは話すことが出来ないので、ノートパソコンを使って意志疎通をはかっている。

 そこは、エルダーリッチでも送り出せば良かったんじゃないか?

 綾乃は、バザールと協力してスカートの中を調べるようだ。相手が女性だったら警察案件だな。絵面だけ見れば、完璧に盗撮しているようにしか見えん。

 どうやら、スカートっぽいものの中には、土建関係の職人が着けていそうな、作業ポケットとでも言うのか、腰に巻いて道具を色々入れておくヤツがあるようだが、その中を覗くことは困難で何が入っているか分からないようだ。

 ただのスカートならまくればよかっただけなのに! と綾乃が言っているが、さすがにそこまで上げたら切り捨てられるんじゃないか?

 仮定名セラフが着けていたスカートっぽいヤツは、上まで捲り上げられないようだ。

 綾乃とバザールの見解では、あの中に何かしらの道具が入っていそうだとのことだ。見えない位置にそんなものがあれば、そう考えるのが普通だよな。わざわざ報告するようなことだろうか?

 監視映像を見ていると、綾乃とバザールが何やら話し合っているようだ。バザールが怒っているようなリアクションをしているので、また綾乃が何か無茶なことを言ったのだろう。

 おいおい! 口喧嘩を始めたぞ!

 あっ! 綾乃がバザールをどついた。

 えっ! マジか!?

 バザールをどついた綾乃のドッペルが真っ二つになっていた。

 どうやら、近くで攻撃に相当する行動をとっても、攻撃されるようだな。

 少しすると、悲鳴と同時に綾乃が起き上がった。

「ちょっと、あの痛みは無いんじゃないの!?」

 あまりに痛かったようで、叫んだ後に俺に突っ込んできた。叩くな! 叩くな! 痛くないけど、倒れるからヤメレ!

 痛みに文句を言っていたが、痛いだけで死にはしないと分かったようで、根性で2体目のドッペルに乗り移った。

 痛みにあれだけ文句言ったくせに、また乗り移るのか? 根性あるな。

 それにしても、他の対象に攻撃したのまで感知して攻撃されるんか、ますます基準が分からんな。

 綾乃のがまた近付いて何やら始めたぞ。

 どうやら、スカートっぽいヤツを脱がせないか試しているようだ。流石にミスって切られるのは嫌なようで、バザールにスケルトンを召喚させて指示を出している。

 バザールも、無意味に殺される役はやりたくないみたいで、スケルトンの能力を上げる補助魔法を使っていた。

 5体目が切られたあまりで、何やら気付いたようで作業の光景が少し変わった気がする。

 仮定名セラフは、スカートっぽいヤツをベルトのような物で固定しており、それを外すためにスケルトンを何体も使い潰しているみたいだ。

 触って切られるまでのわずかな時間で、少しずつベルトを外す努力をしている。25体目で、尾錠から剣先を外すことが出来たようだ。

 ツク棒からベルトを外すのは、一気にやらなければならない。果たして可能なのだろうか? 外せたとして、ベルトを絞め直されたりしないだろうか?

 現状、DPを消費しているだけなので、思う存分やってもらいたいものだ。

 ダメージを無効化している魔道具なり神器なり、出てきてほしいものだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...