ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1471話 ドワーフの悪巧み?

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 特に変わりのない日々が続いていたある日。

 罰に懲りて規則正しい生活になっていた綾乃が、俺を探しに庁舎を訪ねてきた。よく会うたびに、お肌がとか言っていた綾乃だが、肌の色つやは良さそうだ。

「綾乃がここに来るなんて、初めてじゃね?」

「そういえば学校までは来てたけど、庁舎のある階まで来たのは初めてだったような気がする」

「ただのお役所だけど日本の役所と違って、必要がなければ来ることもないからな」

「日本の役所も行く機会が少ない人も多いと思うけどね。ディストピアはというか、この世界はわざわざ足を運ぶ必要がないもんね。そもそも行政の仕組みが違うしね。商売でもしてなければ、来る必要ないでしょ?」

「そんなことないぞ。他の街なら税金を収めに、年に一度は来なきゃいけないけど、税金を取っていないディストピアは庁舎に来る必要がないだけだぞ! 人頭税は給料から天引きだけどな。あ、自営業の人は来る必要あるか」

「ここでは何をしてんのよ」

「俺の管理下にある街の統括が中心かな? 日々色々な情報が庁舎に集められて、それをここでまとめて必要な情報を、各街に発信している感じだな。他にも、監査みたいな事をしているとか言ってた気がするぞ」

「ん~街が市役所なら、県庁みたいなものかな?」

「どうなんだ? そもそも、市役所の業務も県庁の業務も俺は知らないからな! ほにゃらら科とか言って、いくつかに分からているのを知っているくらいだ」

「言われてみれば、市役所って何をしているところか私も知らないわ」

「ってか、綾乃、何かあって俺を探してたんじゃないのか?」

「あぁ! そうだった。えっと、最近ドワーフの人たちの工房に行きはじめたんだけど、工房をマイワールド内にすることって出来ないかな?」

「出来ないか出来るかで言えば、問題なくできるのだがマイワールドに移す理由も、工房のドワーフたちが移動する理由も無くねえか? この街作る時に、わざわざ近隣住民の迷惑にならないように区画分けをしたんだしな」

「それで工房がシュウの家のある方に密集してるのか」

「そうだぞ。ディストピアはざっくり分けて、北がきこり、西が畑エリア、東が海産物エリア、南が工房エリア、中央が商売エリアみたいな感じになっているよ。俺の家がディストピアで一番高い位置にあるから、ちょっと変な風に見えるかもしれないけどな」

「何でそんな事になってるの?」

「お前さ、この街の作りについて何か考えたことなかったのかよ! この街って、他の街と比べると決定的に違うことが1つあるんだけど、気付かないか?」

「……街がきれい! 食べ物が美味い! 住みやすい!」

 スパーンと綾乃の頭をハリセンで叩く。

「バカチン! そういうことじゃねえよ。この世界の街って普通、大きな水源の近くに作られてるんだ、でもこの街には大きな水源がないだろ?」

「え? 湖があるじゃん」

「アホが! 湖と言ってるけど、あれは海水だぞ。街に必要な水源は淡水だ馬鹿野郎! 人が生きていくのに水が必要、だから水源の近くに街をつくるんだよ。日本だって昔、町は水源の近くに多かったはずだぞ。それに世界初の四大文明も、大きな川の近くにあっただろ?」

「それ教えてもらった覚えがある! 確か、メソポタミア文明、エジプト文明、インダストリー文明、黄河文明だったっけ? それで、全部近くに大きな川があったって習ったような? ナイル川、黄河、インダストリー川……後なんだっけ?」

「正解はユーフラテス川とティグリス川な。って、違うわ! インダストリー文明って何だよ! 製造とか産業とか言う意味があるから、近いっちゃ近いかもしれんけど全く違うからな! インダストリーじゃなくて、インダス文明でインダス川が正解な」

「何か違う気がしてたけど、そこが違ったのか!」

「まあいいわ。俺の家が一番高い位置にあるのはな、俺の家の庭にその水源があるからだ。ここから、街全体に水を行き渡らせている。今は魔導具で水を生み出せるようになってるけどな」

「へ~そんな事になってたんだ。でも、何でシュウの家の庭に水源があるの?」

「お前さ、こんな所に意味もなく湧き水が生まれると思うか? 俺の家には何がいる? 四大精霊が住んでるんだぞ。水の大精霊であるアクアがいるんだから、そこに水が集まってくるのは自然の摂理なんだよ」

「あのお姉さんってそんなにすごかったんだ!」

「そうだな。大精霊は俺たちじゃ考えられないような、超常的な現象を起こすって、俺も人のこと言えねえか? そんなことはどうでもいい。で、結局何で工房をマイワールドにって話になったんだ?」

「ドワーフの人たちが、夜も鍛冶したい時があるのにさせてもらえないって、ボヤいてたのが気になって、マイワールドに工房を移動させれば時間気にせず出来るでしょ?」

「綾乃、他人のことを考えていいことだと思うけど、ドワーフたちが加減を知らないから、夜はわざと鍛冶をさせてないんだぞ。綾乃はヴローツマインに家あるだろ? あそこのドワーフたちの生活って本当にすげえぞ。もしあれを再現するとなったら、ドワーフがブラウニーたちに見捨てられるな」

「えっ? どういうこと?」

「あの街って、眠らない街と言っても過言じゃねえな。鍛冶をしているドワーフたちの生活サイクル聞いて、笑ったくらいだぜ。起きて酒と飯、酒飲みながら鍛冶、休憩がてら酒と飯、そしてまた酒飲みながら鍛冶、仕事が終わったら仲間と酒を飯、そして寝る。このサイクルが1日じゃなくて、作品が中心なんだぞ」

「ってことは、2~3日寝ずに打ち続けるってこと?」

「よくできました。人間じゃさすがにそこまで出来ないけど、ドワーフは無駄に頑丈だし、酒が入っていると目が覚めるのか、2~3日寝なくても平気になるらしいんだよ。で、もし工房をマイワールドに移したらどうなるか分かるだろ? それに、綾乃が主導したとなれば、1年くらいはあれが続くぞ」

 あれ、と聞いて綾乃が体を振るえさせた。2週間だった罰が未だに終わっていない、あの大変な現状を思い出しているのだろう。

「遊びに行くときによくこの話をするのって、同情を買って私からシュウに交渉させるつもりだったのかしら?」

「同郷ということで、仲がいいからな。ターゲットになった可能性はあるな。次に言われたら、シルキーに相談してみるとでも言ってみろ。おそらく、愚痴こぼす以外ではその話無くなるぞ」

「マジですか」

 綾乃は苦笑しながら庁舎を後にした。ドンマイ!
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