ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1421話 圧倒的

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 今日の話し合いはすぐに終わった。相手が相手だけに、俺は戦線離脱。俺が嫌だから、妻たちにも戦ってほしくない。なら、従魔たちか人造ゴーレムしかない。

 最初は、クロやギンが鼻息を荒くしていたが、出てきた中ボスの姿形を聞いて、あからさまにやる気が萎えていた。俺の知識や記憶をある程度受け継いでいる、召喚された従魔たちは少なからず俺の影響を受ける傾向にある。

 戦うことに忌避を覚えるわけではないが、戦った後、俺にどう思われるかを察してヤル気が萎えたようだ。だって、あんな奴らを相手にした爪や牙には、しばらく触りたくないだろ? 毛皮にだってつくかもしれないし、ブラッシングもしばらくは無理だな。

 それなら! と、ニコたちスライムがアピールしてきたが、お前たちって攻撃手段あるの? って聞いたら、体当たりと触手の鞭、魔法、溶解液、体内で溶かす、と言ってきたので、却下した。

 じゃぁ聖獣の3匹はどうするか聞いたら、ブラッシングが無くなるなら戦わないと、胸を張って応えてきた。

 戦いたくない理由ではなく、戦った後の理由で戦闘を回避するおかしな感じになってしまった。これって、勝つ事前提で話が進んでいる証拠である。

 なので、白羽の矢が立ったのは、シリウスである。こいつは基本的に俺じゃなくて、娘たちや年少組のメンバーに可愛がってもらえれば気にしないらしい。俺の従魔なのにな! 本当にこういうやつが多くて困る。

 シリウスが水魔法でどうにもできなかったら、人造ゴーレム部隊。人造ゴーレム部隊で時間がかかるようなら、シリウスが元の大きさに戻って奴らを飲み込むと言う話になった。

 ウミムシを魚が食う事だってあるだろうし、シリウスが海の魔物なので気にする必要は無いと思うが、正直あんなにデカい虫を食べたらお腹が痛くならないか心配である。

 シリウスには悪いが、帰ったら娘たちに褒めてあげるようにお願いしておくから、よろしく頼む。

 シリウスからしたら、俺たちがなんでこんなことに悩んでいるのか全く分かっていないが、お願いされたからには全力を尽くして、褒めてもらおうとヤル気をみなぎらせている。

 次の日、朝一番でシリウスが行動を起こす。

「GURUAAAAA」

 小さい体からどれだけ大きな音を出すのかと、ビビったしまった。

 そして、リバイアサンが水を司る神と言ってもいい光景を目の当たりにする。

 シリウスの周りに、こぶし大の水が数十個と現れる。その全てから、レーザーと見間違うような直線でウミムシたちに殺到する。

 戦闘が始まって3秒……沈没船の甲板の上で動いているのは、シリウスだけだった。

「ちょっと、強すぎねえか?」

「さすがに、水魔法であの威力は、おかしいと思います。どんな使い方をしたのでしょうか?」

 そう、魔法の威力がおかしかったのだ。ウミムシとはいえ、Lv800の魔物に貫通してダンジョンの一部を削っているのだ。俺もライムもその光景に混乱していた。

 その混乱を感じ取ったのか、シェリルたちを通してどんな魔法を使ったのか教えてくれた。

 その内容は、水深80000メートルの圧力をかけ撃ち出したらしい。うん、よく分からん。凄い圧力だということしかわからん。

 マッスルスーツの元ネタになった漫画の、超古代文明の思考型プログラムが作り出したマシンが、確か水深8000メートルで筋肉スーツを撃ち抜いていたから、それの10倍? ってどれだけの威力なの?

 わからんわ!

「お兄ちゃん、混乱している場合じゃないです。早く進まないと!」

 ネルが混乱している俺に、現実に戻ってくるように声をかけてきた。確かに、混乱している場合じゃない。

「みんな、移動する準備を開始するぞ!」

 ブラウニーたちに移動してもらって、船を出してもらわないとな。そうしないと、移動もできない。ブラウニーたちもさすがにこんなに早く終わると思っていなかったのか、ちょっとくつろいでいる様子が見られたので、慌てて準備をしてもらっている。

 シリウスには、51階からずっと海中の中を調べてもらっているからな……かなり無理をさせている気がするんだけど、シリウスを見ても疲れている様子が無いんだよな。なんなのだろうか?

 撫でられているシリウスにステーキを与えておこう。こいつは、ある程度食べれば満足するのだが、元の姿があれなのでいくらでも食べることができる。胃の中はあの巨体に繋がっているのだろう。

 勢いよく食べるのは良いけど、シェリルたちに汁を飛ばすなよ?

 準備ができたので、みんなで乗り込んでいく。これからのコースの確認をしながら、船を進める。そして、今日の2つ目の問題なのが、到達予想地だ。

 今までは夜営地として使える沈没船があったのだが、今日はどう考えても無理な状況だった。いや、1階上の階段を降りたあたりにはあるのだが、その地点まで移動しようとすれば3時間強はかかるだろう。強引に進む場合は、2時間は先になってしまう。

 そんな理由もあり、今日は船で寝泊まりすることになっている。

 昼が過ぎ俺は、次のことを考えていた。

「75階があれだったってことは、100階は……うげえ、気分が悪くなるな」

 先程シリウスが戦った巨大ウミムシを思い出して、げんなりしてしまった。だって、パターン的に25階がブラッドリーレイス、50階がデッドリーレイスで種族が同じだった。それを考えると、75階が巨大ウミムシ、100階は超巨大ウミムシの可能性が……

 とりあえず、このダンジョンが102階までしかないことは確認できているのだ。神のダンジョンを考えると、100階で中ボス、101階でラスボス、102階にコアルームということになるはずなのだ。

 降りていくのが憂鬱になるが、娘たちからの期待の眼差しを毎日受けている身としては、行かないという選択肢はあり得ない。嫌でも頑張らないと「とーたん、ウソつき! 嫌い!」とか言われかねん。

 シリウス、次も任せるかもしれないが、よろしく頼む。
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