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第1399話 思い返せば
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下の子たちが産まれてから2ヶ月が経った。
まだ娘たちは弟妹たちを抱っこできていないが、必死にお姉ちゃんアピールをすることは止めていない。4人の中で誰が一番最初に、名前を呼んでもらえるか勝負をしているらしい。まだまだ先の話だけど、誰の名前が一番初めに呼ばれても喧嘩になりそうなので止めてほしいな。
新組織の監査担当の部署もゼニスの指導の下で、本格的に訓練が始めた。
ディストピアの行政府と俺の商会から出資をして、独立して存在する組織だ。だけど、両者とも対等以上の発言力を持っている。こちらから監査に向かって命令することはできないようになっている。まぁ不正でもしない限り、命令する事なんて何もないんだけどね。
出資と言ったけど、これだとなんか表現が違う気がするな。外部委託して監査をしてもらって、その報酬としてお金を支払うというのが正しい表現かな?
訓練を始めて、本格稼働をし業務に問題が無ければ、ゼニスも商会へ戻ると言っていた。それがいつになるのか分からないが、息子と部下たちが問題なく運営できているらしいので、任せてもいいかな? みたいなことを言っていたな。
商会の監査みたいなことをゼニスが行っていたので、仕事の半分以上は無くなるし問題ないでしょ? だってさ。監査が外部委託になったからと言って、すべてを任せるわけにはいかないが、それでも仕事量は半減しているようだ。
俺が馬鹿から商会を奪ってからゼニスに任せて、一気に大きくなっていった。その過程でもともと有能だった人間を幹部に引き上げ、時には他の商会から引き抜き業務を分担していたため、ゼニスがいなくても問題ないようになっているのだとか。
色々説明してもらったがよくわからなかった。1つだけ分かったことがあった。
1つの業務に対してダブルチェックをする体制を作っているので、急に1人が抜けても仕事は止まらない。それに同じ業務ができる人材が2人以上配置されているので、なんとでもなるんだと。
それを聞いてグリエルたちとは、教育の方向性が違ったようだ。グリエルたちは一度集めて教育を施してから各街に配置したり経験を積ませるのに対して、ゼニスは有能な人材を直接現場に放り込み、現場の人間に教育を任せていた。
マニュアルは作成していたので、完全に現場まかせと言う事ではない。最低限出来るようにならなければいけない業務、できるようになれば仕事の幅が広がる業務、上の立場に行くためにできなければならない業務など、いくつかに分けてマニュアルが作成されている。
見せてもらったけど、高校生のアルバイトか? と思うような内容も多々あった。正直なところ、当たり前という感じの内容も多かった。
こんなことをマニュアルに書く必要があったのかと思ったが、昔父さんが母さんに愚痴っていた内容を思い出す。
新入社員が会社に入ってきて部下に指導を任せた。1週間程経った頃に、中学生でも理解できる内容なのに、大学を卒業した人間が理解できていなかったと。
質問もなくメモを取りしっかりと覚えていたと思っていたのだが、ただメモをしているだけで頭にまるで入っていなかったのだとか。一通りの業務をロールプレイしてもらったら、仕事が10あったとしたら、2~3しかできなかったとかね。
初めから完璧にできる人間なんてまずいないのだが、覚えたこととメモを取った内容があれば、初歩的な業務だから多少時間がかかっても、7~8割はこなせる内容だったはずなのに……と苦笑していたっけ?
そういった人が存在するのだから、当たり前でもしっかりと書いておくことによって、確認することができる。基本をないがしろにしないことが、大切なのだということだろう。
グリエルたちはその基本を現場に入る前、ゼニスは現場に放り込んで実践の中でその大切さを学ばせる、というスタンスなのか。
有能な人材がいるから俺は楽ができる。グリエルやガリアがいなければ、ゴーストタウンを見つけても稼働させなかっただろうし、ゼニスがいなければ中立地域の街以外と交流するつもりはなかったしな。
俺って人に恵まれてるよな。妻たちも本当に優しい人ばかりだし、本当に恵まれてるな。
下の子たちが産まれてから2ヶ月の間に色々あった気がするけど、実際は娘たちのお姉ちゃんアピールと、ゼニスの監査組織の立ち上げの2つに集約されるな。
ふとこんなことを考えたのは、ゼニスの代わりに俺に報告をしに来たゼニスの息子を見送ったからだ。
ゼニスは恰幅の良い、ちょっとぽっちゃり系の体系なのだが、それでもイケメンではある。イケているおじさんという感じだ。その息子であるゼニアは、痩せて若くしたゼニスといったところだ。
ゼニスの息子ゼニアは、30代半ばで、15歳くらいの子どももいるらしい。ゼニスには孫がいるということだ。
なんだろね。知っているようで知らないことが多いな。
それにしてもゼニアか、頭一文字じゃなくて二文字を使って、子どもに名前を付けたのか? 名前を付ける際の決まりでもあるのかな?
俺は、ゼニスの息子さんはより孫の方が年が近いとはな。その孫も商会で下働きとして働いているのだとか。ゼニスの孫だから……といっていいポジションにいるわけではないようだ。
ゼニスの商会ではなく、俺の商会だからなのか? 気になったので後日ゼニスに聞いてみた。
私は家族や親族でも、血の繋がりだけで役職を与える事はしません。たとえ息子でも孫でも能力が無ければ放り出します。
と言っていた。子どもや孫は可愛いが、能力のない人間が上に立つのは、下で働く者のためにならない。最悪みんなを路頭に迷わせてしまうことだってあるのだ。
実際にはもっと強い言葉を使っていたな。貴族に真っ向から喧嘩を売るような話し方だったな。
俺も世襲制はどうなのかと思うしね。勉強をできる環境にあるのにそれをおろそかにして、自分のために領民がいる……とか思ってしまうクズは本当にいらん。地位を利用して女を無理やり抱いたりとかありえん。
こんなところで貴族批判してもしょうがないか。中にはしっかりとした貴族もいるのに、悪いことをしている貴族の方が有名になっているからな。そういった印象が無くならないんだよな。
まだ娘たちは弟妹たちを抱っこできていないが、必死にお姉ちゃんアピールをすることは止めていない。4人の中で誰が一番最初に、名前を呼んでもらえるか勝負をしているらしい。まだまだ先の話だけど、誰の名前が一番初めに呼ばれても喧嘩になりそうなので止めてほしいな。
新組織の監査担当の部署もゼニスの指導の下で、本格的に訓練が始めた。
ディストピアの行政府と俺の商会から出資をして、独立して存在する組織だ。だけど、両者とも対等以上の発言力を持っている。こちらから監査に向かって命令することはできないようになっている。まぁ不正でもしない限り、命令する事なんて何もないんだけどね。
出資と言ったけど、これだとなんか表現が違う気がするな。外部委託して監査をしてもらって、その報酬としてお金を支払うというのが正しい表現かな?
訓練を始めて、本格稼働をし業務に問題が無ければ、ゼニスも商会へ戻ると言っていた。それがいつになるのか分からないが、息子と部下たちが問題なく運営できているらしいので、任せてもいいかな? みたいなことを言っていたな。
商会の監査みたいなことをゼニスが行っていたので、仕事の半分以上は無くなるし問題ないでしょ? だってさ。監査が外部委託になったからと言って、すべてを任せるわけにはいかないが、それでも仕事量は半減しているようだ。
俺が馬鹿から商会を奪ってからゼニスに任せて、一気に大きくなっていった。その過程でもともと有能だった人間を幹部に引き上げ、時には他の商会から引き抜き業務を分担していたため、ゼニスがいなくても問題ないようになっているのだとか。
色々説明してもらったがよくわからなかった。1つだけ分かったことがあった。
1つの業務に対してダブルチェックをする体制を作っているので、急に1人が抜けても仕事は止まらない。それに同じ業務ができる人材が2人以上配置されているので、なんとでもなるんだと。
それを聞いてグリエルたちとは、教育の方向性が違ったようだ。グリエルたちは一度集めて教育を施してから各街に配置したり経験を積ませるのに対して、ゼニスは有能な人材を直接現場に放り込み、現場の人間に教育を任せていた。
マニュアルは作成していたので、完全に現場まかせと言う事ではない。最低限出来るようにならなければいけない業務、できるようになれば仕事の幅が広がる業務、上の立場に行くためにできなければならない業務など、いくつかに分けてマニュアルが作成されている。
見せてもらったけど、高校生のアルバイトか? と思うような内容も多々あった。正直なところ、当たり前という感じの内容も多かった。
こんなことをマニュアルに書く必要があったのかと思ったが、昔父さんが母さんに愚痴っていた内容を思い出す。
新入社員が会社に入ってきて部下に指導を任せた。1週間程経った頃に、中学生でも理解できる内容なのに、大学を卒業した人間が理解できていなかったと。
質問もなくメモを取りしっかりと覚えていたと思っていたのだが、ただメモをしているだけで頭にまるで入っていなかったのだとか。一通りの業務をロールプレイしてもらったら、仕事が10あったとしたら、2~3しかできなかったとかね。
初めから完璧にできる人間なんてまずいないのだが、覚えたこととメモを取った内容があれば、初歩的な業務だから多少時間がかかっても、7~8割はこなせる内容だったはずなのに……と苦笑していたっけ?
そういった人が存在するのだから、当たり前でもしっかりと書いておくことによって、確認することができる。基本をないがしろにしないことが、大切なのだということだろう。
グリエルたちはその基本を現場に入る前、ゼニスは現場に放り込んで実践の中でその大切さを学ばせる、というスタンスなのか。
有能な人材がいるから俺は楽ができる。グリエルやガリアがいなければ、ゴーストタウンを見つけても稼働させなかっただろうし、ゼニスがいなければ中立地域の街以外と交流するつもりはなかったしな。
俺って人に恵まれてるよな。妻たちも本当に優しい人ばかりだし、本当に恵まれてるな。
下の子たちが産まれてから2ヶ月の間に色々あった気がするけど、実際は娘たちのお姉ちゃんアピールと、ゼニスの監査組織の立ち上げの2つに集約されるな。
ふとこんなことを考えたのは、ゼニスの代わりに俺に報告をしに来たゼニスの息子を見送ったからだ。
ゼニスは恰幅の良い、ちょっとぽっちゃり系の体系なのだが、それでもイケメンではある。イケているおじさんという感じだ。その息子であるゼニアは、痩せて若くしたゼニスといったところだ。
ゼニスの息子ゼニアは、30代半ばで、15歳くらいの子どももいるらしい。ゼニスには孫がいるということだ。
なんだろね。知っているようで知らないことが多いな。
それにしてもゼニアか、頭一文字じゃなくて二文字を使って、子どもに名前を付けたのか? 名前を付ける際の決まりでもあるのかな?
俺は、ゼニスの息子さんはより孫の方が年が近いとはな。その孫も商会で下働きとして働いているのだとか。ゼニスの孫だから……といっていいポジションにいるわけではないようだ。
ゼニスの商会ではなく、俺の商会だからなのか? 気になったので後日ゼニスに聞いてみた。
私は家族や親族でも、血の繋がりだけで役職を与える事はしません。たとえ息子でも孫でも能力が無ければ放り出します。
と言っていた。子どもや孫は可愛いが、能力のない人間が上に立つのは、下で働く者のためにならない。最悪みんなを路頭に迷わせてしまうことだってあるのだ。
実際にはもっと強い言葉を使っていたな。貴族に真っ向から喧嘩を売るような話し方だったな。
俺も世襲制はどうなのかと思うしね。勉強をできる環境にあるのにそれをおろそかにして、自分のために領民がいる……とか思ってしまうクズは本当にいらん。地位を利用して女を無理やり抱いたりとかありえん。
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