ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1397話 新組織

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 報告書の違和感を指摘してから1週間、その結果が届いた。

「主犯が王国の息のかかった人間だったのか……この表現は正しくないか、前のクソ領主の息がかかっていたが、特に悪さをしたことがなく犯罪歴も無かったので、処罰の対象にならなかった奴か……」

 どういう流れでこいつを雇う事になったんだろうな? それにこいつは何の目的で着服していたのかよく分からん。散財をするわけでも女に貢いでいるわけでも、贅沢をしているわけでもなった。

 着服されたと思われるお金は、全部こいつの家の隠し金庫の中にはいっていた。

 機会を見計らってお金を全部持ち出す予定だったのだろうか? 王国の屑な貴族に指示でも受けていたのだろうか? 本当に判明しなかった。あえて言うなら、その行動が正しいと思ってやっていた……ということらしい。

 ツィード君謹製の奴隷の首輪で確認したが、領主館のような所で働く人間の常識で、着服するのがあたりまえだと本気で思っていたらしい。

 特に目的をもって金を着服していたわけではなかった。それでも犯罪は犯罪なので、犯罪奴隷として王国へ売り払った。もちろん国王には嫌味を言っておいた。王国の人間のスタンダードがそれなのか? と会話の節々にぶっこんでやったわ!

 文句も言われたが、こんな奴が普通に領主の下や国の管理する場所で働いているかと思うと、ぞっとする話だ。

 貴族の為に住人がいるのではなく、住人の為に街がありそれを管理する為に貴族がいる。世襲していきいつしか自分のために住人が金を持ってくる……と勘違いするバカが多いんだよな。

 封建制だったとしても住む人間がいなければ、貴族だって必要ないからな。ほとんどの場合反抗できるだけの力も知識もないので、奴隷のように働く人たちだっているんだよな。

 まぁ歴史を見ても分かる通り、こういった人種は最終的に排除されてきている。革命であったり他の国に攻め込まれたり、理由はいろいろだ。

 王国や帝国の歴史を見ても分かるのだが、領主がコロッと変わることがよくある。この世界には個人ですべてをひっくり返せる力を持った人間がいるので、そういった革命のようなことが簡単に起きる。

 そして代を重ねるごとに子孫は傲慢になっていき、最終的には殺される……といったことが普通に起きるのだ。

 働く前にもしっかりとその辺を研修しているはずなのに、どういった思考で犯罪を犯すんだろうね。

 報告書を読み終わりサインをして帰ろうとしたところに、グリエルとガリアがやって来た。

「もうお帰りでしたか? 話は明日にした方がよろしいですか?」

「ん? 帰ろうとしているけど、用事があるわけじゃないし今話してよ」

「了解いたしました。先日の件なのですが、報告書の通りで奇妙な事件でした。やっていることはシンプルだったのに、動機も目的も全くなかったのですから、こちらも驚きました」

 そう話し始めた。

 今回の着服について細かい説明に来てくれたようだ。その話を聞いて苦虫を噛み潰してしまった。

 中がクリアなら問題はなかったのだろうけど、たまたまあった1人の悪性腫瘍と外部に協力者がいたため、今回の着服が起こってしまったようなのだ。その協力者が、俺の商会から出てしまったことだ。

 不正を完全に防ぐことは難しい。それこそ働く全員を監視したり奴隷の首輪でもつけない限り無理だ。でも、協力者としてかかわってしまったという事実がゼニスに火をつけてしまった。

 阿漕な事をしなくても、扱っている物が飛ぶように売れる商会なのだ。それなのに金欲しさに協力者が出てしまった……その事実が悲しくて管理体制を見直す事にしたらしい。

 街の運営も商会の運営も、俺の下で行われていることだ。なので、新たに監査を担当する部署を独自に作ることにしたらしい。

 ゼニスからの意見書を元にグリエルが説明してくれた。

 コンセプトは1週間前に話した感じそのままなのだが、投入される人員について変更があった。

 監査を任せられるような奴隷は、グリエルとガリア・ゼニスが買い占めて教育を施して、幹部候補として迎え入れているため不足していたのだ。

 そこで提案されたのが、俺のために命を懸けられる有能な人材を管理している街から募り、必要な人員を確保してその者たちに闇魔法で、直接奴隷魔法をかけるというものだ。

 本当の奴隷になるのではなく、条件付きの縛りを設けた一般人? とでも言えばいいのかな……不正をしない、犯罪を犯さない等の条件を付けて、働いてもらうという感じだ。

 日常生活に干渉することはないけど、こんな条件で人が集まるのか疑問だったが、一度この条件で募集を出してみるとグリエルが強く言うので許可を出した。

 対象者は一定以上の知識を持っていて数字に強く募集段階で、俺の管理している街に住んで働いている者というものだった。大前提として俺のために死ねる人材というものがあるので、集まっても数名じゃないか? と思っていた。

 ところが、募集を出した次の日には1000人を超える応募があった。この中に本当に俺のために死ねる人が、どれだけいるのやら……働く際に魔法が施されるため、給料がかなりいい。それにつられているんじゃねえか? と疑ってしまった。

 募集期間が1週間の間に集まった応募者は、4000人強。開いた口がふさがらなかったよ。さすがに全員と面接するのは、グリエルにもガリアにもゼニスにも時間が足りない。

 各街で筆記テストを行い、グリエルたちの直属の部下たちである、領主代行に面接をさせて500人程に絞るそうだ。ゴーストタウンを除いた、すべての領主代行からも応募できるか? という問い合わせがあったそうだが、領主代行は違う契約で縛られているので、参加できずに悔しがるという裏話があった。

 残りの500人は3回面接を受け、各担当をしているグリエル・ガリア・ゼニスで話し合い条件に合った者を全員採用した。

 最終採用者数は85人。5人1組で17チーム。十分な人員が確保できたようだ。この人たちの給料は俺のポケットマネーから……と言いたかったのだが、商会と各街からの税金で賄われることになった。

 そしてこの部署の最大の仕事は、街の住人へ、税金がいくら入り、何にいくら使われており、これから何に使うか細かく公表することだった。元々領主代行がやっていた公表をもっと細かくした物を、監査部と名付けたこの人たちがやることになった。監査とはなんぞや……気にしたら負けだな!
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