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第1348話 帝国軍に立て直しは可能か?
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領主やその補佐にあたっていた偉い集団は全員拘束済み。
逃げ出そうとしていた冒険者500人程はダマの雷魔法によって死亡し、残りの冒険者は電撃の影響によりマヒ状態になっている。
電撃によるマヒ状態であれば、程度の差はあれどすぐに動けるようになるだろう。なので今は、状況を見守っている状態だ。また逃げだそうとしたら、逃走手段を奪わないといけないからな。次はどうしようかな?
敵軍中央では、優秀な指揮官が隊列を立て直し終わっている。隊列を治し始めてから20分は経っていないだろう。それなのに、もう立て直しが終わっている。
普通の人間にそんな事が可能なのだろうか? 数万人単位の隊列をそんな短い時間で、1人で立て直せる人間は普通とは呼べないと思う。
となると、優秀な司令官のような存在がいて、その部下も優秀だったという事だろうか? それでもこんなに短い間で立て直せるとは思えなかった。何か秘密があるのだろうか?
そんな事を考えながら帝国軍の動きを観察していると、中央に集まって隊列を組んでいた帝国軍が3つに分裂した。
1つは、後方支援の部隊を吸収している最も人数の多い部隊だが、帝国軍の半数以上だろうか? そいつらが後退を始めた。
残りの2つは、分かれて両翼で倒れている冒険者の下へ向かっていた。
どうやら帝国軍のトップで指示している人物は、こちらの意図をくみ取ってくれたのだろうか? 麻痺している冒険者を放置して後退するのではなく、きちんと回収してから下がる事を選択したようだ。
「無駄な殺しはしなくて済んだかな?」
無意味に大量虐殺をしたいわけでは無いので、少しほっとした気分である。
ただ、問題はこれからだ。
今の帝国軍は、仕える人間……領主やその側近等が全員こちら側に捕らえられているという事は、このまま「はい、そうですか」と言って引き下がるわけにはいかないよな。
状況の理解できている司令官のようなので、無駄に攻めてくる事はしないと思うが、こちらは外にいる帝国軍にこいつらを返すつもりは無い。インペリアルガードへ引き渡して、こちらにも帝国にも都合の悪い奴等は、反逆罪で全員処分してもらう予定だからな。
でも交渉に来ないで、死に物狂いでこちらに攻めてこられたら、それはそれで厄介だな。メグちゃんとシリウスの頑張りで、壁の外に溝を作って水を流しているし、攻城兵器も無い軍隊には簡単に攻められないはずだけど・・・
早くインペリアルガードが到着しないものか。
倒れている冒険者は何とか動けるようになって、後方へ下がっていた部隊と合流していた。電撃をくらってから20分位で回復が早い者は動き始めた。フル装備をつけている冒険者を運ぶのは難しかったようで、何とか起こす事に注視していたようにみえる。
それから20分経つ頃には、大半の冒険者が動けるようになっていた。心停止や雷魔法の威力で死んでしまった冒険者500人程も回収されていった。
余計な手間なのによく回収していったもんだな。何か理由でもあるんか? と思ってマップ先生と魔改造双眼鏡で観察していたら、嫌な事実を見てしまった。
回収された冒険者だが、身包みを全て剥がされていた。戦争の手伝いで来てみりゃ、戦争に関係ない街へ攻め込み、返り討ちにあって死んだ後は身包みを剥がされる。踏んだり蹴ったりな状況ではないだろうか?
そう言えば、冒険者なのにある程度統一された見た目だったな。もしかして、軍の体裁を守るために貸し出していた装備もあったのか? だからと言って、裸に引ん剝かれて焼き払われるのは、俺ならごめん被りたいな。
相手に利用させない・・・という意味では、死体を持ち帰り装備品を回収するのは理に適っているが、それを帝国軍の人達が見える場所・・・それ以上に、こちらから見える場所でその行為を行うのはどうかと思うぞ。
冒険者なら、死んだ同業者や仲間から装備品を回収する事はあるからまだいいが、帝国軍の特に若い連中の顔を見てみろ。不満がありますって顔をしたり、目を背けたりししてるぞ! ただでさえ劣勢なんだから、士気を削ぐような事をするなよ!
それから30分特に動きは見られなかった。インペリアルガードが到着するまで、約2時間半。
帝国軍の人間は、半休息のような状態で待機しているが、明らかに士気は下がっているのが見て取れる。
この士気の低さを考慮して、指揮官は命令を出す必要があるだろうな。もしくは、この下がった士気を上げる必要があるだろう。
とはいえ、冒険者は特に痛感しただろうな。俺の従魔たちの強さを。
戦争に参加するくらいだから、それなりに自分の力に自信があるはずだ。なまじ力があるために、自分と魔物……俺の従魔との力の差を痛感していると思う。
兵士が鈍感かと言えば、そうではない。
兵士が知らない魔物の強さをはかる事は難しいが、自分たちには連携……集団戦による優位があると考えているからだ。
集団戦を前提に相手が強くても数で制圧する兵士と、自分たちの強さだけで魔物を狩る少数精鋭の冒険者では、感じ方が違うのだ。同じような危機感を覚えろと言うのは難しいかもしれない。
実際にバハムートは別として、ワイバーンでも数で押せば、被害を少なく討伐する事が可能だったりする。野生の弱い奴らであれば、という条件付きだが。
兵士はその考えに引っ張られて、ワイバーン家族がどれだけ驚異か分かっていないのだ。
合算すれば数の多い冒険者と支援部隊の士気が下がっていれば、勝てると思っている兵士も士気が下がってしまうのはしょうがない事だろう。同調圧力的な何かが働いているのだろうか?
指揮官クラスの人間がどう考えているかだよな。あまり時間をかけてると、士気がドンドン低下していき冒険者に脱走者が出るかもしれないぞ? 多くの冒険者が脱走すれば、次に支援部隊の戦う力を持たない人が逃げ出すかもな。
俺としては、むやみやたらに殺すつもりは無いが、やられるつもりは無い。いざとなれば、全員殺す覚悟はある。わざわざ帝国と戦争するつもりは無いが、回避できない物なら仕方がないだろう。
これ以上街をとっても管理しきれねえんだよ! グリエルが! 俺にとられる街と言えば、大体偉い奴等は腐ってるからな。そうじゃなければ、街が取られるという状況は普通は発生しないからな。
力を持っている個人というのは、そういう連中にとっては頭の痛い存在だと思う。
ん? 何か思考が逸れてるな。帝国軍を再び見ていると、魔導無線の呼び出しが鳴った。ビビるからいきなりはやめてくれ。
逃げ出そうとしていた冒険者500人程はダマの雷魔法によって死亡し、残りの冒険者は電撃の影響によりマヒ状態になっている。
電撃によるマヒ状態であれば、程度の差はあれどすぐに動けるようになるだろう。なので今は、状況を見守っている状態だ。また逃げだそうとしたら、逃走手段を奪わないといけないからな。次はどうしようかな?
敵軍中央では、優秀な指揮官が隊列を立て直し終わっている。隊列を治し始めてから20分は経っていないだろう。それなのに、もう立て直しが終わっている。
普通の人間にそんな事が可能なのだろうか? 数万人単位の隊列をそんな短い時間で、1人で立て直せる人間は普通とは呼べないと思う。
となると、優秀な司令官のような存在がいて、その部下も優秀だったという事だろうか? それでもこんなに短い間で立て直せるとは思えなかった。何か秘密があるのだろうか?
そんな事を考えながら帝国軍の動きを観察していると、中央に集まって隊列を組んでいた帝国軍が3つに分裂した。
1つは、後方支援の部隊を吸収している最も人数の多い部隊だが、帝国軍の半数以上だろうか? そいつらが後退を始めた。
残りの2つは、分かれて両翼で倒れている冒険者の下へ向かっていた。
どうやら帝国軍のトップで指示している人物は、こちらの意図をくみ取ってくれたのだろうか? 麻痺している冒険者を放置して後退するのではなく、きちんと回収してから下がる事を選択したようだ。
「無駄な殺しはしなくて済んだかな?」
無意味に大量虐殺をしたいわけでは無いので、少しほっとした気分である。
ただ、問題はこれからだ。
今の帝国軍は、仕える人間……領主やその側近等が全員こちら側に捕らえられているという事は、このまま「はい、そうですか」と言って引き下がるわけにはいかないよな。
状況の理解できている司令官のようなので、無駄に攻めてくる事はしないと思うが、こちらは外にいる帝国軍にこいつらを返すつもりは無い。インペリアルガードへ引き渡して、こちらにも帝国にも都合の悪い奴等は、反逆罪で全員処分してもらう予定だからな。
でも交渉に来ないで、死に物狂いでこちらに攻めてこられたら、それはそれで厄介だな。メグちゃんとシリウスの頑張りで、壁の外に溝を作って水を流しているし、攻城兵器も無い軍隊には簡単に攻められないはずだけど・・・
早くインペリアルガードが到着しないものか。
倒れている冒険者は何とか動けるようになって、後方へ下がっていた部隊と合流していた。電撃をくらってから20分位で回復が早い者は動き始めた。フル装備をつけている冒険者を運ぶのは難しかったようで、何とか起こす事に注視していたようにみえる。
それから20分経つ頃には、大半の冒険者が動けるようになっていた。心停止や雷魔法の威力で死んでしまった冒険者500人程も回収されていった。
余計な手間なのによく回収していったもんだな。何か理由でもあるんか? と思ってマップ先生と魔改造双眼鏡で観察していたら、嫌な事実を見てしまった。
回収された冒険者だが、身包みを全て剥がされていた。戦争の手伝いで来てみりゃ、戦争に関係ない街へ攻め込み、返り討ちにあって死んだ後は身包みを剥がされる。踏んだり蹴ったりな状況ではないだろうか?
そう言えば、冒険者なのにある程度統一された見た目だったな。もしかして、軍の体裁を守るために貸し出していた装備もあったのか? だからと言って、裸に引ん剝かれて焼き払われるのは、俺ならごめん被りたいな。
相手に利用させない・・・という意味では、死体を持ち帰り装備品を回収するのは理に適っているが、それを帝国軍の人達が見える場所・・・それ以上に、こちらから見える場所でその行為を行うのはどうかと思うぞ。
冒険者なら、死んだ同業者や仲間から装備品を回収する事はあるからまだいいが、帝国軍の特に若い連中の顔を見てみろ。不満がありますって顔をしたり、目を背けたりししてるぞ! ただでさえ劣勢なんだから、士気を削ぐような事をするなよ!
それから30分特に動きは見られなかった。インペリアルガードが到着するまで、約2時間半。
帝国軍の人間は、半休息のような状態で待機しているが、明らかに士気は下がっているのが見て取れる。
この士気の低さを考慮して、指揮官は命令を出す必要があるだろうな。もしくは、この下がった士気を上げる必要があるだろう。
とはいえ、冒険者は特に痛感しただろうな。俺の従魔たちの強さを。
戦争に参加するくらいだから、それなりに自分の力に自信があるはずだ。なまじ力があるために、自分と魔物……俺の従魔との力の差を痛感していると思う。
兵士が鈍感かと言えば、そうではない。
兵士が知らない魔物の強さをはかる事は難しいが、自分たちには連携……集団戦による優位があると考えているからだ。
集団戦を前提に相手が強くても数で制圧する兵士と、自分たちの強さだけで魔物を狩る少数精鋭の冒険者では、感じ方が違うのだ。同じような危機感を覚えろと言うのは難しいかもしれない。
実際にバハムートは別として、ワイバーンでも数で押せば、被害を少なく討伐する事が可能だったりする。野生の弱い奴らであれば、という条件付きだが。
兵士はその考えに引っ張られて、ワイバーン家族がどれだけ驚異か分かっていないのだ。
合算すれば数の多い冒険者と支援部隊の士気が下がっていれば、勝てると思っている兵士も士気が下がってしまうのはしょうがない事だろう。同調圧力的な何かが働いているのだろうか?
指揮官クラスの人間がどう考えているかだよな。あまり時間をかけてると、士気がドンドン低下していき冒険者に脱走者が出るかもしれないぞ? 多くの冒険者が脱走すれば、次に支援部隊の戦う力を持たない人が逃げ出すかもな。
俺としては、むやみやたらに殺すつもりは無いが、やられるつもりは無い。いざとなれば、全員殺す覚悟はある。わざわざ帝国と戦争するつもりは無いが、回避できない物なら仕方がないだろう。
これ以上街をとっても管理しきれねえんだよ! グリエルが! 俺にとられる街と言えば、大体偉い奴等は腐ってるからな。そうじゃなければ、街が取られるという状況は普通は発生しないからな。
力を持っている個人というのは、そういう連中にとっては頭の痛い存在だと思う。
ん? 何か思考が逸れてるな。帝国軍を再び見ていると、魔導無線の呼び出しが鳴った。ビビるからいきなりはやめてくれ。
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