ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1340話 得意の迷走

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 娘たちと楽しく遊んだ次の日、俺はバレルの街の近くで野営している。

 今回は、従魔を全部連れてきているので、そのまま街に入るのはよろしくないと判断して、野営をすると決めてここへきている。

 コンテナタイプの野営にしようと思っていたのだが、俺の話を聞いた妻たちがそれは難しいだろうと言ってきたのだ。

 話をよく聞いてみて、さすがに無理だと俺にも理解できた。

 コンテナタイプは設営に人がいるのだ。人造ゴーレムを連れていく予定が無かったので、人型は俺しかいない。それじゃ、1人で設営できるわけないな。

 バッハに運んでもらおうかと考えていたが、必要になる物を運ぶ事や、従魔と一緒に行く事を考えると魔導列車一択だった。

 なので、野営用に作成した馬車を持っていく事にしたのだ。俺のサポートでブラウニーも来る事になっている。ブラウニーは、コンテナより馬車タイプの方が気に入っているようなので、それも馬車タイプを選んだ理由の1つである。

「それにしても、馬車16台も使って、俺たちの活動場所を作るなんてな」

 ブラウニーが強行した野営地を見て、俺はそう声を出すしかなかった。

 16台の馬車を円状に並べて、12時の位置から1・2と番号をつけて、奇数の馬車のサイドオーニングテントを上にして緩い山なりに、偶数を下にして緩いU字にした。攻する事によって、雨が降っても野営地の中に水がほとんど入らなくなる。

 ブラウニーは魔法も使えるようになっているので、屋根にあたった雨水が流れる溝もしっかりと作っている。雨が降るとは限らないのに、細かい所まで調整している様子は匠のようにみえなくもない。

 一仕事終わったブラウニーは、ティータイムを始めた。

 いつも思うけど、娘たちより小さいブラウニーたちがお茶をしている姿を見ると、おままごとに見えるんだよね。なんかすごい和んでしまう光景だ。

 でも見た目が、子どもたちと違って大人の人間をそのまま小さくしたような姿なので、娘たちがしているおままごととは見た目が多少違うけど、和む事には変わりがない光景だ。

 俺がくつろぐスペースも、馬車16台を使って広いスペースが作られている。大きな従魔は体が小さく出来るからスペースが小さくても済むのだが、それでも数がいるからな。

 クロ・ギン・コウ・ソウ・ハク・ニコ・ダマ・シエル・グレン・バッハ・シリウス・メグちゃん、スライムが多数……100匹以上スライムを連れて来たのに、これでも半分も連れてこられていない。

 従魔とは別枠で、ワイバーンの家族も5匹連れてきている。他にも、いつ従えたのか分からない、シエルの後ろを複数の亀が、グレンの後ろに複数の鳥がいる。どういうことなんだろうか? いつの間にか、亀の王・鳥の王にでもなったのかお前ら?

 んっ!? 慌ててダマを見てみるが、何? と言わんばかりの表情をしてこっちを見ていた。相変わらず、デフォルメされた猫だか虎だかわからんが、その顔でよく表情を表現できるもんだな。

 だけど、部下というか舎弟というか分からないが、後をついてくるモノがいるシエルとグレン。1匹であくびをしているダマ。その上、先輩たちにいじられてる。この格差は何だろうね。

 一応聖獣たちの中では1番先輩なのに、基本的に俺の従魔のいじりはダマに集中しているからな。なんでなんだろうな?

 俺の野営地の大半をスライムが占めている。みんなお気に入りのソファーやベッド、クッション等で思い思いにくつろいでいる。

 それにしても自由な集団だな。そんな俺もお気に入りのソファーに座り、ブッ君で小説を読んでいる。

 朝出発して、おやつ位の時間に到着したのだが、そのまま野営地の設営に入り休憩なしで3時間頑張った事により完成した。夕食前の休憩みたいな物だろう。

 休憩が終わりブラウニーが食事の準備を始めるた。俺は、野営地に足りない物を追加で設営するために、2つの大きなテントの近くに広めの塀を建てる。

 何を作っているかといえば、お風呂だ。

 ダンマスの能力で作るお手軽拠点ではなく、自分の手で作るお風呂だ。何でこんなに手間をかけているかといえば、どうせなら露天風呂でもと考えてしまったからだ。普通なら思いついただけで実行に移す物ではないが、作れるだけの能力があるとついね。

 ただ形を整えるだけじゃ面白くないからと、凝ってしまったのが間違いだった。

 初めは形を整えるだけのつもりだったんだよ? でもさ、DPで岩を召喚できるわけで、露天だったら石・岩を重ねて作ったお風呂がいいじゃん? そう思って行動に移したわけよ。止めたり注意したりする人がいなかったため、暴走したまま露天風呂の作成が行われたのだ。

「それで、申し開きは何かありますか?」

「ありません! 調子に乗っていました! でも、後悔も反省もしてません!」

 スパーンッ!

 何処から取り出したのか、いい音のするハリセンが俺の頭を叩いていた。

「せめて、反省はしてください!」

 ブラウニーに正座をさせられて、説教を受けている。

「別に、ちょっと本格的な露天を作っただけじゃん。何で怒られてるのさ!」

 逆ギレに近い形だったが、俺は何で怒られているか理解していなかったので、反論をしてしまったのだ。

「ご主人様、時計を見てください。今何時ですか?」

 そう言われて時計をって腕時計はしない人間なので、デジタルの置時計を……マジか!

 時計は、21時を過ぎていた。

「すいませんでした!」

 土下座している状況で、更に頭を地面につけて謝る。

「分かってくださればいいのです。何度も食事だと呼んだのに、もう少しもう少しと言って食事に全然来なかったのですから……私たちも露天風呂を使わせていただくので、あまり大きなことは言いたくないのですが、さすがに奥様方に連絡をして注意するように申し付かった次第です」

 すでに妻たちが知っていて、妻たちの指示で怒っているみたいだ。これ、戦争が終わって帰っても、さらに大変な事が待っているな。
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