ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1330話 呼び出し

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 娘たちと砂場で遊んでから3日後。

 俺は、グリエルの執務室を訪れていた。呼び出されたので来ている。

「呼び出されたのは良いけど、何の件か全く分からないのだが、説明は?」

「もう少しお待ちください。そろそろ、ゼニスも来ると思いますので……君、お茶を準備してもらっていいかな? シュウ様には冷たいミルクティーでよろしく頼む」

 さすがグリエル! 歩いてきて少し汗をかいているので、冷たい飲み物が欲しかったところだ! ジュースでもよかったのだが、ミルクティーを準備してくれるならそれでよろしく!

 シルキーには及ばないが、しっかりと香りもたっているし味も悪くない。結構なお手前で……と、心の中で思ってみたものの、俺がそこまで違いに分かるほど味に細かくない。せいぜい、素人が入れたのとそうでないのが分かるだけだ。

 俺も最初は驚いたのだが、同じ葉・同じ水・同じ道具を使っても、熟練した人とそうでない人が紅茶をいれると、全然味も香りも違うんだよね。俺でなくてもわかるわ! って感じの事しかわからん。

 心の中でこんな事を思っているシュウだが、実際には結構通な人間になっているため、細かな違いまで判ったりするのだが、比べる相手がシルキーやブラウニーなので、勝てるはずもないのだ。それにより、自分の味覚が過小評価傾向にある事に気付いていない。

 ゼニスが来たので話が始まる。

「お待たせしました。売買エリアについての報告をします」

 ん? わざわざ集まって報告する必要があるのかな?

「実験的に始まったエリアですが、好評のようです。特に、規模の小さい商人の方が喜んでいますね。今まで街の人相手に売っていた物を、街の外の人に簡単に見てもらえるというのが大きいようです」

 ゼニスが紙を配り始めた。その内容は、大店であればこのエリアに出しても、自分の店でも相手が来てくれるのであまり問題にはなっていないが、小さい店からすると売りやすくなっている、という報告書だ。

 街に根付いたお守り、装飾品、その他雑貨でも価値がある物が見出されて来たみたいだ。

 今まで街の外の商人が目をつけていなかった物も多く、大きな取引も成立している。

 他にも、売買エリアは商人に向けた店だけではないので、一般人の購入者も多いのだとか。街を大きく回らなくても、色々なお店を見て回れるというメリットがあるようだ。

 そこまで違う物かと思ったが、地球でもショッピングモールとか、なんとか通りといって店が並んでいるエリアは多い。そう考えると今回の売買エリアは便利に使える、という所がミソなのかもしれない。

 あまり深く考えたわけでは無いが、店が集まっているっていうあれは、意味がきちんとあったのだと思った。

 俺はインドア派の中でも特殊な方だと思うが、あまり人がごみごみしている所には行きたくないと思ってたんだよね。だから、ショッピングモールみたいに人がたくさん集まる所って、行く気すらなかったもんな。

 上級者になると、服や靴もネットで注文するらしいのだが、俺にはその勇気は無かったな。

 っと、思考が逸れている間に話が進んでいた。

「……ですので、もう少し様子を見ますが、他の街でも売買エリアを検討していく方がよろしいかもしれません」

 ん? 話についていけないが、他の街にも作ってはどうかって話のようだ。

「意外な効果がありましたね。まだ短期間ですのであれですが、花街の近くにエリアを作って正解だったかもしれませんね」

 どういうこと?

 俺がポカーンとした顔をしていたら、話を聞いてなかったと理解してくれたようで、もう1度説明をしてくれたのだ。

 簡単に言うと、ゴーストタウンで問題を起こす80パーセント以上が、街の外から来た人間なのだ。商人は信用が命なので悪さをするつもりで来ている商人以外は問題を起こさないが、商人についてきた護衛の冒険者が羽目を外して問題を起こすのだ。

 特に多いのが、飲食店……酒の出る店でのトラブルだ。だけど、今回売買エリアを作った場所の近くで酒を飲めると言えば、花街しかなかったのだ。大衆食堂みたいな所でお酒が飲める場所は、ゴーストタウンを拠点にしている冒険者が多いエリアに店が多いからだ。

 他にも、工房が多いエリアの近くにも食堂は多くある。冒険者も工房で働いている男共は、基本的に生活スキルは低いし料理作るのも面倒だから、そういった所に食べに行くのが普通なのだ。

 まぁ、花街に行っても暴れるやつは暴れるのだが、あのエリアは特殊で問題が起こる事を前提に設計されているので、トラブルがあれば衛兵がすぐに駆け付けるし、自前の用心棒を雇っているお店も多い。サキュバスもいるし安全はかなり高い。

 食堂でやられると被害が大きくなるのだが、このエリアの建物はかなり頑丈に作られているので、被害も少なく手慣れている人も多い。特に、ここに来る冒険者は治安が悪くなるととばっちりを受けるし、女性にいい所を見せようと取り押さえるので、終結までの時間も早い。

 街の冒険者と外の冒険者のトラブルも減っていると数値が出ている。

 思わぬ副産物があったという事だな。

「そうなんだ。だけどさ、他の街にあるそういう接待をする場所って、まとまってないよね? そう考えると、ゴーストタウンみたいにはいかないんじゃないの?」

「「「えっ!?」」」

「ん?なんかおかしい事言った?」

「ゴホンッ! どうやら各街の細かい報告は読んでいないようですね」

「え? 読んでるよ? 問題やその解決の経緯とか、改善してほしい事とか、インフラ関係の報告書とかしっかり読んでるぞ?」

「もしかして、各街の変化の報告書は読まれてませんか?」

「……なにそれ?」

 どうやら、俺とグリエルたちの理解に差があるようだ。

 話を聞いてみると、しっかりと俺に報告書が上がっていたのだが、俺が読んでいなかった理由は各街の人口推移や収支、予算等をまとめた報告書に付属している資料として、送られてきていたため見ていなかったのだ。

 だってさ、各街の収支決算とか見ても分からないジャン? そこら辺は任せているし、たまに抜き打ちで資料を見に行くから問題ないと思って見てなかったんだよ! ごめんって! そんなに怒らんでよ! 今度から添付資料の方は見るからさ!

 トラブルに関しては、報告書が上がってくるから問題ないと思ってたんだよ。だけどさ、トラブルの大小で報告書のある場所が違うって言うのは、勘弁してくれ。

 おっと、グリエルのこめかみが少しピクピクしているぞ!

「わかりました。今度から、報告書は1つ1つ全てを送っておきます。トラブルだけでなく、街の開発計画その他いろいろありますが、収支決算に付けていた細かい街の報告書も個別に送る事にします」

「ご迷惑をおかけします。できれば、タイトルで街の名前と内容が分かるようにしてほしいです」

 ちょっとビビって軽くですます口調になってしまった。

「了解です。各街毎に別けて送ります。特に見てほしいモノついては、印でもつけておきますのでしっかりと確認をお願いします」

「わかりました! で、花街の件については、読んだらいい報告書だったって事だよね?」

「そうですね。街の治安に関係してくるので、結構しっかりと報告書があげられてきています」

 グリエルが話している間にガリアが報告書を漁っていたのか、空間投影型スクリーンに報告書が映し出される。
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