ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1294話 多少の違いはあるが……

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 30分程、俺たちが本物かどうかの話し合いの場に付き合った頃、

「本物か偽物か等、今はどちらでも問題ないでしょう。私が知りたい事は、あの国が今どうなっているか? と言うことだけです。話を聞いていけば、本物か偽物かわかるでしょう」

 そういって、中央にいたこの中でも偉そうな獣人が声をあげた。

 そういう結論を持ってたのなら先に言えよ!

 と、心の中でもつっこんだ。

「すまないが、このまま我々の質問に答えていただく。私が知りたいのは、あのく「本当にふざけた人たちですね」……はぁっ!?」

「何をとぼけたフリをしているのですか? あなたたちは、せっかく来た私たちに、長々とくだらない話し合いに付き合わせた上に、謝罪もなしに質問に答えていただく、ですか? 寝言は寝てから言いなさい!」

 おっと、俺はくだらないなって思って違うことを考えていたが、アリスがプッツンいってしまった。どうでもいい事を考えていたせいで、アリスの爆発をとめれなかった。

「女の分際で……私たちが聞きたいことがあると言っているのだから、こちらの質問に答えていればいいのだ!」

「女の分際ですって? この国では男女差別が当たり前なのですか? そんな低俗な国に、せっかく捕らえた隣国の王族や側近、貴族、騎士を届けたのは間違いでしたね」

「そうですね。自分たちがどれだけ偉いと思っているのでしょうか? まったく度しがたい者どもの集まりのようですね。待たせているのにもかかわらず、椅子も用意しないとか、スカーレットさんに知られたら、半日説教コースですよ」

 アリスとマリーが、思ったことを遠慮無しに言っている。煽っているのではないか? と思うようなセリフだ。

 そのせいか、並んでいた半数以上の獣人が、顔を赤くしてこちらに汚い言葉で怒鳴ってくる。

 これが国の中枢にいるべき人材なのだろうか?

「しずまりなさい! あなたたちは、さすがに無礼が過ぎますね。拘束して尋問、情報を吐かないようでしたら拷問してもかまいません。兵士たちよ捕らえなさい!」

 面倒なことになった。獣人の国もまともではないということだろうか?

 皆を引き寄せ遮音結界を張る。収納の腕輪から出した物は、魔改造版フラッシュバンスタングレネードだ。

 獣人たちの目には、良く分からないが円柱形の何かをいじって、自分たちの前に投げて来ただけに見えただろう。

 そして、投げられた物を注視していた者は、漏れなく叫び声をあげていた。だが、声は爆発音にかき消されている。

 そんな音も声も、遮音結界のおかげでなにも聞こえていないけどね。本当に結界魔法は便利だな。多少の融通の利かない部分があるけど、使いやすさは抜群だと思う。

 獣人たちの様子を見ているが、地面にうずくまりながら目を押さえたり耳を押さえたりしている。

 また襲いかかられても面倒なので、とりあえず縛って口を塞いでいる。

「さて、面倒なことになったな。どうしよっか?」

「向こうから襲ってきたので、自業自得だと思います。普通に考えれば分かるはずです。私たちが本物であるなら、一国の城を襲撃して捕らえているのです。それだけの実力があるということは明らかですのに。自分たちの城の中でなら何とかなると思ったのでしょうか?」

 アリスは、縛られ床に転がされてウゴウゴしている獣人たちをみおろして、そいつらを揶揄するように俺に答えた。

「魔法で壁や扉を補強したけど、あまり時間は稼げないよな。大斧や戦鎚使いがいれば簡単に壊せるからな、どうしたものやら?」

「一番偉そうだった人に話を聞いてみませんか?」

 情報が少なくて、襲って捕らえようとした事以外判断材料がない。どうするつもりだったのか聞いてみるか?

「今から俺が質問する。質問以外の答えはいらない、分かったな? なぜ俺らを捕らえようとした? もとから捕らえる気だったのか?」

 そう言ってから、口を塞いでいた布を取る。

「今ならまだ間に合う! 我々を解放しろ!」

「減点一だ。解放しろだと? バカにしているのか? 解放したらまた捕らえるつもりだろ? そうでなくても、外の奴等は止まらないだろ? 自分が言ったことではない、とでも言うつもりか?」

 一番偉そうだった奴の口を前から鷲掴みにして口を塞ぎ、再度同じ質問をする。

「なぜ俺らを捕らえようとした? もとから捕らえる気だったのか?」

 手を離し解放する。

「君たちの実力は分かった。この国につくせば、今回の事はなかったことにしよう」

 また口を塞ぐ。

「減点二。まだ自分の立場が俺たちより上だと思っているのか? ここにいる全員を殺して逃げる事だって出来る。俺たちをなめすぎじゃないか?」

 しっかり相手の目を見て話をする。そして三度同じ質問をする。

「なぜ俺らを捕らえようとした? もとから捕らえる気だったのか?」

 手を離し解放する。

「そうだ。もし本当にお前たちが人間の国を落とした人間なら、こちらに引き込むつもりだった。だが態度が悪かったから、2つ目のプランに変更して、捕らえようとした」

 少し悩んだ上で答えてくれた。

「もともと、捕らえていいように使うつもりだったんだな。人間の国もくずだったけど、獣人の国も対して変わらんな。次の質問だ。俺が送った人間はどうした?」

「私たちは獣ではない。人間のように、惨たらしく殺したりはしない。男も女も全て首を落とした。そちらは自由にしていいと手紙に書いてあったからな」

「そっか、ただ処刑しただけなんだな。安心したよ。人間みたいな事をしていたらどうしようかと思っていたんだよ」

「当たり前だ! 我々とあんな奴等を一緒に……」

 口を塞ぐ。

「減点三、最後だぞ? 俺はいったよな、質問以外の答えはいらないってさ。勝手に話すことも許可はしていない。一緒にするなとでも言おうとしたのか? 俺たちを捕らえようとしたくせに何をバカなことを……」

 反論があるようだが、口を前から鷲掴みにしているので声を出せないでいる。

 マップ先生を監視してもらっていた報告から考えて、処刑されたと考えていたが、こいつの様子を見る限りウルの母親みたいな事はなかったようだ。奴隷におとすこともなく、全員の首をおとしたのだろう。

「とりあえず、聞きたいことは聞けたし帰るか?」

「ご主人様、わざわざ獣人の国に来る必要はあったのですか?」

「確認のためだったからな。少なくとも、人間と一緒にされたくないのは事実だしな。多分大丈夫だろう」

 そんなことを話していると、壁を壊す音が聞こえてきた。

「そろそろ壁が破られるぞ! 拘束を解くなら早めに解くことをおすすめする。今ならまだ間に合うぞ!」

「最後だって言ったよな?」

 首を鷲掴みにして持ち上げる。もう会うこともないから、こんなことをする必要は無かったが、舐められるのはよくないと誰かが言っていたので、軽い見せしめに……

「グッ、ゴガアァァァ!」

 首を鷲掴みされており、呼吸もままならない状態だったのに、右手首を握り潰され悲鳴をあげた。そのまま床へおろし、

「注意を聞かなかったお前への罰だ。これ以上の干渉するつもりはない。自由にやってくれ。後、変な干渉をしてくるなよ?」

 一応警告をしておく。探したところで発見できないだろうけどな!

「お、お前たちは獣人なのに、ど、どうして人間に配慮するんだ?」

 手を握り潰されたのに根性あるな。

「言った所で理解できないが、お前の根性に敬意を評して教えてやる。俺たちは、違う大陸からやって来た」

 それから、この大陸に来た状況を簡単に説明したが、理解されることはなかった。
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