ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
上 下
1,254 / 2,518

第1254話 第壱陣

しおりを挟む
 俺が帰ってきてから2週間、やっと庁舎に呼ばれた。

 正確には、俺が処理しないといけない物を処理しに庁舎自体には行っているのだが、グリエルやガリアの執務室には近付かないように厳命されていた。

 俺がこの街のトップなはずなのにって思うが、よく考えたらこのままフェイドアウトすればグリエルたちが、ディストピアのトップに……

「なるわけないでしょ!」

 急に後ろから声がしたため、びっくりして体が跳ね上がってしまった。

「な、何の事かな?」

「シュウ様は、たまにボケているのか真面目なのかよく分からない時がありますよね。今回は、普通に声を出していましたよ。1階受付の娘からブツブツ言ってましたと連絡をもらったので、慌ててきたのですよ。そこで物騒な事を言っていたので、声をかけさせていただきました」

 油断も隙もありませんね! と軽く怒られてしまった。今度からは周囲をきちんと見てからだな。

「ですから、声が出てますって」

 グリエルを呆れさせてしまった。声を出したつもりは無いけど、普通に声を出していたみたいだな。

 俺の執務室に着くと、グリエルが慣れた手つきで魔導具を起動していく。

「聖国から1陣目が到着したそうです」

 グリエルはそう言いながら、表示していった。

「ここに連れてきた理由が分かったわ」

 表示されている情報を見て、来るように言われたのが1陣目のいる場所ではなく、この執務室だった理由は、、連れてこられた人間の種類といっていいのか、様々なジャンルがいたのだ。

「えっと、上に表示されているのが、聖国でも地位が高かった奴って事か?」

「そうですね。それについては教皇からメッセージが一緒にありました」

 そういって手紙を渡される。

 内容を要約すると、連絡があった時の俺の様子がボコボコにされた時より危険な雰囲気だったので、取り急ぎ同じ聖国人から見ても問題になっていた者たちを送りました! という事だ。

 ジャンルがたくさんというのは、神殿騎士団長・大司教・司教・領主・商会長・文官等々、お偉方や金持ちのオンパレードだったのだ。

「恐らくですが、聖国の問題児の処理をするのに利用された可能性がありますが、シュウ様の怒りの矛先が特に強いのは、特権階級のこういった人間だと理解して、早めに送り出してきたのではないかと思います」

「確かにこういう奴らが率先していたせいで、中にはやりたくなかった事を強要された人間もいるかもしれないからな」

 とはいえ、集団心理……群集心理を理由に非人道的な事をしていいかといえば、否である。聖国の人間からすれば、亜人は人間では無いので非人道的とは言えないのだろうが、

「こいつらは、聖国から俺に引き渡された時点で、重犯罪者……死刑が適応される犯罪者だからな。非人道的なんかを気にする必要はないのはいいな。で、この後はどうするつもりだ?」

「今回の件に関しては、シュウ様が主導して動かれているのでこちらは、サポートだけを視野に入れて行動していますが、こちらが主体となったほうがよろしいですか?」

「国というか、ミューズやディストピアを主体とした戦争の延長だから、俺がでしゃばり過ぎるのは問題じゃないのか?」

「何を言っているんですか? ミューズもディストピアも、その他戦争に参加した人も全員がシュウ様の管理下にある街から参加されているのですよ? だからシュウ様が先頭に立って何かをするのを肯定する人はいませんよ」

「グリエルやレイリーの申し出で、俺は今回積極的にかかわっていないのに、先頭に立っていい物なのか?」

「ディストピアやその他の街の管理を任されている私やガリアが問題ないと言っているのですから、これに異を唱えられる人間は、シュウ様以外にはいないのですよ」

「そういう物か……わかった! 戦争の細かい事はそっちに任せるけど、俺が聖国に引き渡しを迫った奴らに関しては、こっちで処理する形でいいかな?」

「もちろん問題ありません。元々そのつもりです。レイリーと話をして人員が必要な時は、ディストピアとゴーストタウンの軍人をサポートに出せるようにしてあります」

 レイリーの鍛えた軍人が協力してくれるのであれば、人員的な問題はないかな。

「この資料は、この中に入れてありますので家に持って帰っていただいても問題ありません。その中には、教皇からの追加情報である、こいつらが何をしたのか分かる範囲で送られて来た情報も一緒に入っています」

 なるほど、こいつらが送られて来た理由みたいな物もしっかりと送ってくれているんだな。

「あっ、報告しておきたい事が、シュウ様に任された範囲内の判断でワイバーンの家族に協力を仰いで、この者たちを連れて来てもらっています」

「ワイバーンを強制的に扱っていないなら問題ないよ。俺の従魔扱いだけど、基本的には自由にしていていいって言ってあるしな」

「もちろん協力してもらう代わりに、報酬として畜産エリアの牛の丸焼きを食べていただきました」

 食べ物で動いてもらったのな。

「それなら問題ないな。とりあえず、帰って妻たちと相談して対処を始めるわ。一応、対応が決まったら連絡入れるわ」

 そう言って執務室を後にした。

 さて、帰ったら妻たちと相談して、こいつらの処分を決めないとな。でも、娘の前では相談できないから、娘たちが寝た後かな? シルキーにケットシーもいるから、特に問題は無いよな。

 馬車に乗り込み、最近召喚できるようになった眼鏡タイプのVRゴーグルを装着して、ノートパソコンとリンクさせ預かった情報、USBメモリーを差し込み情報を引き出す。

 タッチパネルの要領で見たい情報を引き出していく。

「マジか! これを妻たちに見せるべきだろうか……」

 隣で丸まって寝ていたダマが体を起こして、

『何か問題でもあったのですかにゃ?』

「いやな、聖国から引き渡された奴らが予想以上の屑だったせいで、情報を妻たちに伝えていいのか悩んでいるんだよね」

 情報を見せようにもVRゴーグルだったので、見せる事ができなかった。なので内容を話してやる。

『それなりの時間主殿と過ごしているけど、酷いですにゃ』

 人間の常識に疎いダマでも、ディストピアで生活してきたダマが絶句しかけたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...