ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1253話 好物?

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 今日はする事も無くなってしまったので、昼食後はのんびりと娘たちと遊ぼうかな? なんて考えながら食後のお茶を飲んでいると、

「ご主人様、かまぼこの件で聞きたい事があるのですが!」

 と、かまぼこの話をしたブラウニーに声をかけられた。

 俺も詳しい事を知らないので、DPで取り寄せた本や動画を使ってブラウニーに分かった範囲の事をお伝えする。

「初めに言うと、かまぼこに向いている魚と向いていない魚があるから、まずその見極めが大切です」

 向いている魚の代表は、シログチやスケトウダラ、関西ではハモを使ったりするらしい。

「まずは、魚から骨と皮を取り除く必要があるみたいだな。この時の魚肉は少しピンクっぽい……言うなら、ネギトロみたいな見た目だけど、この状態だとかまぼこにはならなくて、まずは【水晒し】という工程が必要みたいだね。これは魚肉に含まれる血や余分な脂を水にさらして取り除く事を言うようだね」

 そう言って、水晒しをした後の魚肉をDPで召喚して、見比べてもらう。

 そうすると先程の魚肉とは違い、ピンクっぽかった魚肉が白っぽくなっていたのだ。

「次に、この魚肉を擂潰らいかい……文字は、擂り潰すと書いて擂潰らいかいだね。この時に石臼を使うのがいいみたいだね。熱を持ちにくいからいいみたいだね」

 本と動画を使いながら、工程を説明していく。

「丹念に擂り潰して繊維を潰すみたいだね。この動画では、機械を使って30分も擂ってるね」

 機械がある現代は分かるけど、昔は人力で行ってたんだろ? かなり大変な作業だよな。

「擂り潰し滑らかになって来た魚肉に塩を加えると、塩と魚肉のたんぱく質が結合して粘りが出てくるみたいだね。この塩入れのタイミングが難しいみたいで、長い経験が必要みたいだね。しっかりと練りこんだら、砂糖・みりん・卵白等を混ぜて味付けをするんだってさ」

 地球にいた時は、よく親戚からかまぼこが送られてきて食べてたけど、そこら辺のお店で買ったかまぼことは一味違ったのを思い出すな。母親もスーパーではほとんど買ってなかったしな。

「粘りだけではなく、艶が出てきたらこの工程は終わりみたいだね」

 動画は続いており、俺が説明する語彙を持ち合わせていない成形の段階に入ると、ブラウニーは動画に釘付けになる。俺もそれを見ながら、DPでかまぼこを召喚するといくら位になるのか調べてみようと思い召喚リストを呼び出す。

 安いかまぼこなら1DPで5個召喚できる様だ。だいたい200円って所だな。

 それにしても、かまぼこってこんなに種類があるんだな。昔は、キャベツならキャベツで何種類か並んでいたのだが、今はキャベツを選んだ後に品種を選ぶ形式になっている。

 いつからこうなったか覚えていないが、便利になったと感じていたのだが、かまぼこの種類のリストを見てげんなりする。その数200種類を超えていたのだ。これでも表記されていない物もあるんじゃないかと感じている。

 その中で一番高いかまぼこを選んだら、一気に6DPになった。マジか! かまぼこ1本で5~6000円もするのかよ! 職人手作りの特注品とはいえ、それは高すぎるんじゃないか?

 静かになって動画に集中している時に「ぶっ!」っと噴き出してしまったので、何事かとみんなの視線をこちらに向けさせてしまった。

 簡単に俺が噴き出してしまった理由を説明した。そうすると、味が気になったようで動画を一時停止して食べ比べをする事になった。

 1本200円のかまぼこと1本5000円越えのかまぼこを食べ比べた。

「……こんなに味が違うんだな。一味どころか二味も三味も違うんだな」

 同じかまぼこでも、食感も味も全然違ったのだ。ブラウニーも途中から来たシルキーも、目を見開いてビックリしている。そこまで違ったのだ。

 動画を再開して成形の工程をみる。素早くやっているのに綺麗にトンネル型になっていく。人が作っているのに見た目では全く違いが分からない位には形が整っている。職人技だな。

 どうやら、何層にも何層にも薄く塗り重ねていく事によって食感が良くなるみたいだ。昔は手作りだったが、機械で大量生産が始まって多く出回るようになったようだ。

 同じ会社で作っている、機械で作った物と職人で作った物も食べ比べてみたいという話になり、召喚してみた。機械生産の物も美味かったが、職人が手作業で作った物の方がやはり美味く感じた。ただ違いが何処にあるか聞かれても分からないが、明確に職人の方が美味く感じたのだ。

 動画の後半に、同じ魚肉製品である伊達巻が紹介された。

 えっ? 伊達巻って魚肉製品だったの? おせちとかでよく食べてたけど、魚肉だとは思っていなかった。

 伊達巻もかまぼこと同じように石臼で擦りながら和三盆や上白糖などを加えて、味を調えたら卵をゆっくり加えていき、素早く擂り潰すらしい。かまぼこは空気を入れないようにゆっくり、伊達巻はふんわり作りたいので素早く、という事らしい。

 それをトレイのような物に入れ焼いた物をすだれで巻いていくようだ。

 動画が終わり、ブラウニーはやる気満々になっている。そのまま午前中にいた作業場に連行される。

 スペースが無いので、拡張する要員として俺が呼ばれたようだ。

 その後もかまぼこと伊達巻を作るための石臼を召喚してクリエイトゴーレムで魔導具化したり、水晒し用の機材も召喚した。思っていたより水晒しの機材が大きくてビビったけどな。

 石臼に関しては、合計で5台も召喚する事になった。

 その日には完成せず、ブラウニーが1週間程試行錯誤して、

「完成しました」

 自信に満ちた顔をしたブラウニーが完成したかまぼこを持って来た。

「1本200円の量産品よりは、圧倒的に美味く感じるな」

 高いかまぼこには及ばないが、安物よりは全然うまかった。1週間で良くここまで、しかも、素材に使ったのは、白身のあまり物の魚だという事を考えれば、十分すぎるほど美味い。

 それにしても、1週間でここまで作れるようになったのか?すげえな。食への執念が日本人よりすごいよな。しかも伊達巻まで作ってきていた。

 嫁たちも、かまぼこと伊達巻に興味を持ったのか試食会に参加してきた。

 みんなも美味しいと食べていたのだが、中でもキャットピープルの3人、ミリー・ライラ・ソフィーが、かまぼこを美味しい美味しいとビックリする勢いで食べたのだ。猫が魚好きってことか?

 油揚げを作った時のフォックスロープのジュリエットとレミーの食いつき方に似ていた。

 あ、伊達巻は甘かったので、ミーシャ・ブルム・スミレの食いつきがめっちゃよかった。おかし感覚なのだろう、ウマウマ言いながら食っていたな。
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