ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1231話 収束に向かって

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 おぉ、レイリーが文字通り地面の上を引きずりながら、隣街の領主を街の外へ連れ出してきた。

『住人の皆様! この街の領主は、引き渡し要求に対して、いないと言っていました。ですが、私たちは領主の館で、引き渡しを要求していた人物を発見いたしました。聖国の皆様には申し訳ございませんが、少し前にあった戦争で私たちが勝っており、勝者の権利を行使して引き渡し要求をしていたのです』

 レイリーのまたも一方的に住人に対して拡声の魔導具で話をしている。

『嘘を付かれた上に自分の屋敷にいたにもかかわらず、自分たちで改めて探すと言っていたのです。さすがに私たちが舐められている……馬鹿にされている事は、住人の皆様にもお分かりですよね? 本来であれば、この街は私たちのターゲットでは無かったのです』

 一方的とはいえ、事実だけを言っているんだよね。それを証明する方法は無いんだけど、今までの流れを見れば信じてくれる人の方が多いかな?

『嘘をつき、匿っていたこの街の領主は残念ながら、私たちの敵ですので排除させていただきます。それと、協力をしていた人たちも排除対象とさせていただきます。住人の皆様は、私たちの邪魔をしないのであれば手を出しませんので、くれぐれも邪魔はしないでください』

 伝える事をすべて伝え終えたレイリーは、わざと見せびらかすように隣街の領主の後ろ襟をつかんだまま、街を引きずっている。

 その後ろには、隣街の領主と一緒に避難してきた者たちを連れている。後ろ手にワイヤーで縛られており、1人に1人の兵士が付いているので逃げられないだろう。

 1人だけ扱いが雑なのには、何か理由があるのかな?

 そんな様子を見ていたら、何処からともなく爆発音が聞こえて来た。

「ふぁっ!? 何があった!」

 何人かの妻たちもドローンを飛ばして様子を見ていたので、聞いてみたのだ。

「どうやら、商会に向かった兵士が、商会を護衛していた者の抵抗を受けている様です。商会側の護衛に魔法使いがいて、そいつが兵士に向かって爆発系の魔法を使ったようにみえました。兵士に被害はありませんが、近隣に大きな被害が出ている様です」

 そう教えてくれたのは、ケイティだった。ドローンは操縦していないが、色々なドローンの画面をみて即座に俺のほしい情報を伝えてくれたみたいだ。

 護衛対象さえ護れればそれでいいって感じだな。

「手の空いてる腕の立つ人材って近くにいるか?」

「兵士の能力までは、把握できていません。レベルだけで言えば近くに精鋭部隊はいますが、その部隊でも被害を防げるかと言えば、難しいと思われます」

 魔法相手に被害を最小限にって、いくら強くても普通の兵士には無理だよな。魔法使いに対抗できる手段でもなければ、

「あっ! 商会の方は、何とかなりそうです」

 ん? 急に話の流れが変わった。被害を押さえるのが難しいから、何とかなりそうだと?

「ライガ君が爆発の直後に行動を開始したようで、家の上を飛ぶように走って現場に向かっています。それを追いかけてスカルズのメンバーも向かっているので、おそらく何とかなると思われます」

 なるほど、土下座をさせられていたライガが、爆発を見て移動をしたのだろう。急な状況の変化だったため、スカルズの不意を突いた形になったのかな?

 ライガとスカルズのメンバーなら、問題なく対処してくれるだろうな。それにしても、商会の護衛は人数的には不利なはずなのによく持ちこたえてるな。そこまでレベルの高い奴はいなかったと思うんだけどな。

 マップ先生で確認しても、囲んでいる兵士と同じ位のレベルだ。100前後の護衛が6人程いる。それに対してこちらは、30人近くいるのに……何故だ? 籠城している敵を倒すために3倍戦力が適応されるような状況では無いのに、こうやられっぱなしはおかしい。

「敵の護衛は6人しかいないのに、やられっぱなしなのか?」

「被害を出さないように戦っているとはいえ、不自然ですね。他の角度からも戦闘風景を見せてもらえますか?」

 複数のドローンで戦闘風景を映している。

「1、2、3……7? ご主人様! 6人ではなく護衛が7人います! 1人は魔法使いですが、ほとんどの兵士が、この1人に押さえ込まれているような状況ですね」

 マップ先生と視認した数に齟齬が出ている。これはもしかして、そういう事なのか? くそ、その場にいれば鑑定で調べられるのに!

 マップ先生に表示されていないという情報を聞いてすぐに、フレデリクで戦った奴隷兵の事を思い出した。その魔法使いも、あいつ等みたいな装備を身に着けているという事か?

 最悪死体を回収すれば、身に着けている装備の鑑定もできるし問題ないか?

「ライガ君が到着しました。あ~、制圧終わりましたね」

 はぁ? ライガが到着とほぼ同時に制圧が完了したらしい。話を聞くと、ライガが屋根の上を走りそのまま魔法使いの頭上から奇襲をかけて、気絶させたようだ。

 魔法使いの力で膠着状態になっていたので、要の魔法使いを倒されたため制圧されてしまったという事のようだ。

 そして追いついたスカルズのメンバーに首根っこを掴まれて、借りてきた猫のようにおとなしくなっている。商会で抵抗していたのは、雇われていた冒険者だったらしい。商会の幹部と一緒に捕らわれの身となり、こちらの陣地に連れてこられるようだ。

 ちょっとしたトラブルもあったが、街の人々は俺たちの邪魔をする事なく大人しくしてくれていたので、比較的簡単に物事が解決したと思う。

 戻ってきたレイリーは、捕らえた者たちにツィード君特性の奴隷の首輪を着けて牢屋に放り込んだ。

 商会の護衛の抵抗で被害にあった近隣の家は、商会に責任があるので回収した金品や物資から補償をしている。

 悪徳商会で買いこまれた食料品と、俺たちが街の外で回収した食料品を住人に向けて、普段より安い値段で放出した。食料品を買って出た赤字は、悪徳商会と領主の息のかかった行商人から回収した分で賄っている。

 全体的な収支は、大幅な黒字なので苦労した甲斐はあったと思われる。

 隣街の領主と側近等から回収できた金品が思ったより少なかったので、残りは何処にあるのか聞いた所、この街の領主に匿ってもらうために、半分程差し出したのだとか。

 オーク領主は、匿う見返りとして金品を受け取っていたようだな。簡単に引き渡せないとはいえ、引き渡さなかったため、全財産を没収され処刑される事になった。哀れだとは思うが、自分の行いのせいだから仕方がないよな。

 領主の財産は街のお金なので、すべてを持ち出すと街が正常に機能しなくなるのは目に見えているので、オーク領主から賄賂を受け取らず、閑職にされていた人や解雇されていた人を集めて、必要最低限の見積もりを出させた。

 ほぼ全員が同じような金額を提示していたので、これがデッドラインなのだろう。グリエルに精査してもらうと、この金額ではかなり厳しい状況だと判明した。

 オーク領主はかなり貯め込んでいたので、多少増やした所でこちらの懐は痛まない。グリエルの考えに従って、提示された金額の3倍ほどを街に置いていく事になった。それでもオーク領主が貯えた金額の3割程だった。

 贅沢していたわりには、貯えられていた金額がやたらと多かったのは、色々法律に触れている事で荒稼ぎをしていたらしい。

 個人資産で街が3年以上運営できるだけ貯め込んでいたオーク領主。その影響でどれだけの人間が不幸になったのやら。聖国の領主って、宗教的に結構偉い人間だったよな? 俺の国じゃないから問題ないと言えばないのだが、さすがに目に余るな。

 すべてが終わったら、行くところが増えてしまったな。
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