ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1212話 進軍

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 次の日、起きると野戦病院は喧騒に包まれていた。

 何かあったのかと思い、慌てて下に降りていく。

 そこで見た物は、違うな。普通ならいろんな人が行きかっているのに、今は『何慌ててるのですか?』みたいな顔をした治療院の人が俺の事を見ている。

「えっと、何か騒がしいから慌てて降りてきたんだけど、この騒がしいのって外?」

 治療院の人が納得した表情を見せ、見るなら急いだ方がいいですよ、と助言してくれたので駆け足で外に出てみる。

 そこには、兵士が並んでいた……なんで?

『準備は出来たな? これから聖国に攻め入る。予定では5つの街を攻める事になっているのは確認しているな? もちろん、注意事項は分かっているだろうな?』

 レイリーの副官がそんな事を大声で言っている。そして、兵士は一斉に返事をする。あっ! 冒険者もいるのは忘れていないよ!

 返事をした中の1人を壇上にあげ、注意事項を言わせるようだ。

 副官が、まず絶対にやってはいけない事は? と問うと、

『民間人への手出しです!』

 理由は?

『今回の戦争で民間人には罪がありません! 上の決めた事に民間人は関与できません!』

 よろしい! では次の注意事項は?

『略奪対象は、大店の商会や街の中枢の人間、後は軍事施設です!』

 理由はもちろん分かっているな?

『大店の商会は、間接的に今回の戦争で利益を得ているため、民間人とは言え戦争幇助をしています。ですが、民間人であるので傷付ける事は禁止です! 街の中枢の人間は、民間人では無いため略奪対象です! 軍事施設は、今後の脅威を一時的にでも取り除くためです!』

 80点だ! 大体正解だが、1つだけ抜けているぞ! 一番問題の領主、街の最高権力者について言及していない! 中枢の人間では不十分だ! 領主一族は全員捕える事になっていると説明しただろうが!

『すいませんでした!』

 最後にもう1つ、最大の注意事項を言ってみろ!

『死ぬな! です!』

 それは注意事項じゃない! この軍の決まりだ! 答えは、武装蜂起した集団と接触した場合は、民間人であろうと容赦をするな! だ! 列に戻れ!

 と、こんなやり取りが繰り広げられていた。このやり取りはどうなんだ?と思ったが、最終確認みたいな物だろうから、横やりは良くないよな。

 っと昨日の今日で、もう街に攻め込むのか?

「シュウ様、おはようございます。疲れていたみたいですね。起こしにうかがった時はよく寝ていらしたので、勝手に始めさせていただきました」

「軍事行動であれば、俺が関与できる部分じゃないからいいんだけど、もう街を攻めるのか?」

「もちろんです。そのために、軍で調教したウォーホースの馬車を大量に持ってきているのです。それに、勧告する部隊は既に1つ目の街に到着しています」

 既に動き出していた。

「1つだけ聞いていいか? もし民間人に手を出した奴がいたらどうするんだ?」

「もちろん処刑です。こればかりはシュウ様の陳情があっても曲げられませんよ。軍事行動で絶対に守らなければならないのは、規律です。ですが、それを徹底するのが一番難しいのです。なので、違反をすれば処刑する位の事をしないと規律が守れないのです」

 確かに一理あるな。処刑はやり過ぎじゃないか? と思うが、甘い対応も良くない事は理解できた。そしてレイリーは、俺のいう事でも曲げられないと、絶対に必要な行動なのだろう。

 何かの小説で、同じ国の人間でも戦争になれば平気で略奪とかするって話だよな。それに、徴兵で集められた職業軍人ではない人たちの報酬は、戦場での略奪行為とか言う話もあったような? 地球の歴史にも似たような事があったしな。

「わかった。でも、今回は全部割り勘みたいな感じになっているのに、民間人を襲うなんて事があるのか?」

「民間人を襲うというのが、略奪行為だけでは無いのは理解していますよね?」

 そう問われて理解した。この場合の襲うっていう言葉には、女性を凌辱するという事も含まれるし、気持ちが高ぶっている兵士が無意味に殺す、という事も含まれるんだな。

「納得したよ。それなら手を抜いていいはずがないな。兵士は大丈夫だと思うけど、冒険者の方は大丈夫なのか?」

「一応ですが、スカルズの皆さんに監視していただこうと思っています。兵士に関しては、家族にも罰が及ぶと言っていますので、間違いは起こらないと思います。もし起きてしまったら、厳粛に対処します」

 冒険者の方は心配だな。兵士は、志願して入隊している人だから、規律は守られやすいけど、冒険者に関しては、他の街から来ている奴らも参加しているからな……俺の管理下にある街に住んでいる人ならまだいいけど、出稼ぎの奴等は危なそうだよな。

 そんな事を思いながら、準備の終わった兵士を見送り……ついていくべきだろうか?

「みんなはついていくべきだと思う?」

 いつの間にか集まっていた妻たちに聞いてみる。

 ついていく、待機するが半々だった。

 さてどうしようか? 報告を待っていてもいいのだが、何か嫌な予感がするんだよな。こういう時は、直感に従った方がいいな。

 という事で、みんなに嫌な予感がすると伝えると、ついていくべきだと言う主張が増えた。

 俺の予感ってあまり当たらない気がするんだけど、みんなが支持してくれたのでついていく事にした。一緒に行動するわけでは無く、近くで様子を見ると言った感じだ。

 俺たちの出発はすぐに準備が整うので、すぐに追いつく事ができた。ちなみにダマ・シエル・グレンの3匹以外は野戦病院に置いてきている。もし何かあった時のための護衛だ。それと、シェリル・イリア・ネルの3人はリバイアサンのコントロール用に待機してくれている。

 1つ目の街は思っているより近かったため、半日ほどで到着した。まぁそれは、ウォーホースの進軍スピードによるものである。

 兵士と冒険者を合わせて4000人程の移動で、馬車は100台程準備されていた。1台に40人ずつ乗るため、あまり長時間の移動には適さないが、移動時間を短縮するためなので我慢させているようだ。馬車100台は何とでもなると思うけど、ウォーホース1台2匹で200匹って多くね?

 と思ったが、実はディストピアには騎兵隊があるようで、400匹を確保しているらしい。その内の半数を馬車馬として持ってきていたらしい。騎兵ってこの世界であまり見ないんだけど、どうなんだ?
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